「ePlugOne」的ワード解説(2)「カスタマージャーニー」
デジタル化やDXを適切に進めるための前提となる「ITサービスマネジメント(ITSM)」。その本質をよりよく理解するために、毎回1つのワードを取り上げ、「ePlugOne」的視点で解説する記事です。今回のテーマは「カスタマージャーニー」。
※そもそも「ePlugOne」って何? という方はこちらから
ITSMにおける最新のナレッジをまとめたガイド(手引き)の最新版「ITIL® 4」において、「サービス」とは「顧客が特定のコストやリスクを管理せず、望む成果を得られるようにすることで、価値の共創を可能にする手段」であることは、以下の記事でも紹介いたしました。
では、確実かつ効率的に「価値を共創する」には、何に注意すべきなのでしょうか?
この疑問に対する答えの1つを挙げましょう。「顧客のニーズを理解してサービスに反映させ、サービス提供開始後は利用者からのフィードバックや測定データに基づき、改善を続ける」ことです。それを実現するベースとなる概念が、「カスタマージャーニー」という考え方です。
意識すべき「7つのステージ」とは何か
「ITIL® 4」では、「カスタマージャーニー」を次のように定義しています。
そして、「カスタマージャーニー」は、顧客が体験する順に、以下7つのステージから構成されるとしています。
1つずつ見ていきましょう。「探求」は、顧客が自分にとってベストなサービスやプロバイダを探すステージのこと。サービスを提供する側は、市場と顧客のニーズを理解し、ターゲットを決めることが求められるステージです。
「エンゲージ」は、顧客がサービスプロバイダと知り合い、良好な関係を築くステージを指しています。
「提案」は、顧客が求めるサービスに対してサービスプロバイダが提案を行うステージです。
「合意」は、顧客が先の「提案」のステージで受けた提案を元に、サービスプロバイダと合意するステージです。
「オンボード」は顧客が、サービスの利用を開始(オンボーディング)、あるいは終了(オフボーディング)できるように準備するステージです。
「共創」は、顧客やユーザーとサービスプロバイダがともにサービスの価値を生み出すステージです。顧客やユーザーはサービスプロバイダとの様々なやり取りを体験し、さらにサービスプロバイダにフィードバックを提供する。サービスプロバイダはその内容を受けてサービスを改善していく。この共同作業です。
最後の「実現」では、サービスの価値の追跡と妥当性確認を行います。顧客はサービス利用における投資対効果を分析し、サービスプロバイダはここまでの提供過程において発生したコストや問題点などを分析するステージです。
「サービスをつくり、提供すればOK」ではありません。消費者のニーズをできる限り理解して、ニーズの変化に素早く反応することが求められます。だからこそ、カスタマージャーニーの各ステージを意識しながら、顧客との関係を継続的に管理することが必要なのです。
「カスタマージャーニー」の視点を得ることは、顧客の要求に表面的な対応を行うだけでは競争優位に立つことが困難なITサービスの領域では、特に重要だといえるでしょう。