【835回】ネムルバカ
石黒正数「ネムルバカ」
女子寮に住む、2人の大学生が主人公。先輩の鯨井と後輩の入巣のコンビ。残飯で天丼を作ったり、寝言を歌にしたり、笑えるなあと読み進めたら、真面目な展開が待っていた。学生時代から先の生き方を問いかけてきた。
「どこまで通用して どこで限界が来るかとか 目標に達するまでのカベの厚さも カベを掘りきれるかどうかも なんとなく自分で分かってて 努力するの シンドイじゃないですか」
と入巣の友達の友達が語るところに、鯨井がグーパンチで叫ぶ。
「このボケーッ」
「私ァ 何もしないでゴタク並べるヤツが一番ムカつくんだッ」
これ、脳内で自分を否定する自分に、ぶちかましたい。実に爽快なシーンだ。
自分の中では、「このボケーッ」とかまして、ハッパをかけてよい。
失敗は自分の糧になる。成長につながる。そうはいっても、だ。
自分が関わってきた生徒を思い出す。失敗したくない。失敗が自分の価値を決めるかのように落ち込む生徒もいる。むしろ、成功を恐れている生徒もいたのかもしれない。失敗をする自分の成長を恐れるかのように。いや、まわりと比べて成長してしまう自分が、どのように見られるのかを恐れているのかもしれない。
どうしたものか、と思う。
「ネムルバカ」でも読んでみろよと勧めてみるかね。
こういう人たちもいるよって。