マガジンのカバー画像

私が好きな詩

26
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

詩人の希望

詩人の希望

悲歌(エレジー)

濠端の柳にはや緑さしぐみ

雨靄につつまれて頰笑む空の下

 水ははつきりと たたずまひ

私のなかに悲歌をもとめる

すべての別離がさりげなく とりかはされ

すべての悲痛がさりげなく ぬぐはれ

祝福がまだ ほのぼのと向に見えてゐるやうに

私は歩み去らう 今こそ消え去つて行きたいのだ

透明のなかに 永遠のかなたに

原民喜は詩人としては原爆小景の数編が残っている。
水ヲ

もっとみる
実朝さん

実朝さん

世の中はつねにもがもななぎさこぐあまの小舟の綱手かなしも

師匠の藤原定家が百人一首に取った歌です。
この歌は小舟が流されて遠くいくの悲しむ漕ぎ手を描いているのですけど、世の中は平穏に動くことが少なくて、むなしいことを歌っていると思っています。世の中のありさまを歌う、こういう感覚が当時でもめずらしい。ものすごい虚無感も感じます。

ものいはぬ四方のけだものすらだにもあはれなるかなや親の子をおもふ

もっとみる