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エッセンシャル思考と研究開発

また久しぶりの投稿となってしまったが、本題のテーマとは違う話しを少ししたい。

最近「選択と集中」という言葉をよく目にする。
そこで「エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする」という本を読んでみた。

この本を一言で要約するなら、「99%の些末なことを削り、1%の本質に集中すべし」ということである。

社会人として生活していると、誰もが1日の中で大小問わず色んなことを決断している。この本はその決断の基準を見直す良い機会を与えてくれるようだ。

どんな仕事でも誘いでも簡単に引き受けるべきではない。何かに時間を費やすということは常にトレードオフが発生していること意識して、判断していく必要があるということであった。

トレードオフを常に念頭に入れた生活は思考停止を防ぐ意味合いもあるように感じる。「皆んながやっているか自分もやろう。」「断りづらいからこの仕事を引き受けよう。」など、実は惰性で決断していることが沢山あることに気付かせ、本当に自分にとってすべきこと(したいこと)を見つめ直すことに繋がるだろう。

一方、この考えを研究開発に適用するとどうなるだろうか?
酵素道の見解としては、ミスリードする可能性が高いと考える。(というか既に日本のアカデミアでは誤った方向に進んでいると思う。)

企業の研究開発目線で考えてみよう。
営利組織である以上、利益を生み出す製品をアウトプットしていく必要があり、短期間で結果が出るテーマに絞るという考えに偏重する傾向がある。ただし、ここに落とし穴がある。

目先の利益が出そうなテーマを選択し追求する結果、競合他社の追随品ばかり産まれ、結果として研究開発のリターンは少ないものとなることが多い。もちろん、短期的な目線での製品開発も重要だが、この先がどんどん読めなくなっている時代においては、短期では結果が出ないけど、面白そうな切り口の研究テーマも設定すべきなのである。(当然だけど)

ここで重要な点が2つあると考える。
①「面白い」研究テーマと考えるか否かの判断基準
② 研究テーマ全体のバランス

①については、正解の分からない中で、いかに"考えのモノサシ"を作るかということ。最終的には研究所のお偉いさんのモノサシで決まるが、テーマを提案する研究員に依るところが大きいと感じる。妄想チックで良いから、自分なりのロジックを魅力的に構築できるか次第で、お偉いさんのモノサシを新たなものに変えてしまい、GOサインを得ることができるのだからね。

②については、限られたリソース(マンパワー)を短期的テーマ、中期的テーマ、長期的テーマにどう配分していくか?ということ。この配分は企業体力と企業カラー(企業理念)に依存している気がする。とあるオーナー企業では、「研究開発には目的がいらない」とさえ言っており、他社がやらない独自のテーマに取り組んでいるそうだ。

以上の2点を意識しながら、すぐ利益にはならないけど、面白そうな研究テーマを組み込んでいくことが企業の研究開発には必要なのだ。

だらだら書いたが、結論としては、企業の研究開発に選択と集中という方法論をそのまま適用しようとすることは危険だということだ。(特に以前民主党がやっていたような事業仕分けは最悪)

なお、企業研究員の端くれである酵素道は、新しい酵素探索・開発に勤しんでいる。たまに何に役に立つ分からないが学術的に興味深いものが見つかるわけで、そういう発見を大事にしていきたいと思っている。

今年度は酵素に関する特許だけでなく、論文化を目指す。
(最近Twitter上で他の企業研究員から刺激を受けているわけだ。笑、私も呟いているのでTwitterマークから飛んで見ていただけると幸いだ。) 

以上駄文に付き合っていただき、感謝です。




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