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2020/11/24 - 車校帰り



昨日、
いつも通り電車で帰宅途中ふと少し上を見たら、

触れたらすぐに崩れ落ちそうな、
古い蜘蛛の巣があった

でも蜘蛛はいなかった


理由はわからないが、私はそれを人間と重ねた


誰かがいなくなった場所は
時が経てばどんどん古びて、
いずれは崩れ落ちてしまうんだろうと

なんだか感傷的になった


今日、
昨日と同じように電車に乗った

当然ながら、
昨日の蜘蛛の巣の事はもう忘れてしまっていた

私の意識の中に微塵も残っていなかった

にも関わらず、
私はまたふと少し上を見上げた


驚いた


蜘蛛の巣だった


それは昨日見た、古びた茶色の廃墟ではなく、

新しく、立派な蜘蛛の巣だった


そしてまだそこに住人がいた

私は昨日見た蜘蛛の巣を思い出して、
目の前の正反対の光景に少し鳥肌が立った


しかしそれだけではなかった


その蜘蛛の巣にはもう1匹いた


中心に堂々と張り付いていた

それが蜘蛛の餌であると気付くに
少し時間がかかるほど、
何故か、堂々としていた気がした


私がその餌の存在に気づいた途端、

さっきまで身動きしなかった蜘蛛が動き出した


中心へ中心へ
どんどん迫っていく

そして蜘蛛は遂にその餌の上に覆い被さった

私はその様子から目が離せなかった


そして思い出した


昨日私はあの蜘蛛の巣の様子を何に重ねたか

なんと残酷な事だろう
そしてなんと明白で分かり易い模写だろう


次第に蜘蛛はそのまま動かなくなった


ゆっくり時間をかけて食べるんだろうか
あの餌を全て綺麗に食らえるんだろうか

あの蜘蛛は私が電車に乗る前からずっと、
餌を得ていたはず

それなのにどうして、
私が電車に乗って間もなく
あんな行動を起こしたのだろうか

私が電車に乗る前に
事を済ませておいてくれさえすれば
私がこんな気持ちにならずにすんだのに


結局、
どこにいても意味もなく残酷なことばかりだ


明日、
あの蜘蛛の巣はまだあそこにあるんだろうか


奇しくも、私は明日、
電車には乗らない予定だ。

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