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大学への物理(力学0) | ユークリッド空間とデカルト座標

『大学への物理』は高校物理を解説して参ります。
初回も初回、今回は第0弾として
物理学の前提となる
ユークリッド空間とデカルト座標
について説明していきたいと思います。


小中学校で習ってきた幾何学

義務教育で習ってきた直観的な図形はユークリッド幾何学に位置付けられます。いわゆる三角形の面積や円の面積、三角形の合同・相似等を扱う基礎的な幾何学ですね。
簡単に言えば、
「歪みのなく、三角形の内角の和が180°になるような空間での幾何学」
といった感じです。
なんてことはなく高校までで習う直観的な空間認識を扱うものです。

逆に、ガウスによって発展した非ユークリッド幾何学では歪んだ空間(三角形の内角の和が180°より小さくなるような空間)を扱い、これは相対性理論等、現代物理学の基礎になっています。相対性理論が直観的でないとされる要因の一つと言えるでしょう。

高校で学ぶのは直観的な空間(歪みのない空間)を舞台に繰り広げられます。
いわゆる3次元ユークリッド空間を対象にした物理学です。ニュートンはこれを絶対空間と呼んでいます。

具体的には、
・1600年代後半にニュートンによって定式化された古典力学
・1800年代を通して応用された電気回路、および1800年代後半にマクスウェルによって定式化された電磁気学

他にも熱学・力学的な波動、前期量子論といった細かい分野はありますが、比較的体系的に学び、かつ大学入試でもメインに聞かれるのは上記3分野と言えるでしょう。
特に力学の範囲は大学1年で学ぶ範囲となんら変わりありません。

座標の導入 (デカルトの直線直交座標)

そんなユークリッド幾何学に、ニュートンの運動法則、果てはアインシュタインの一般相対性理論にまで発展する考え方を導入した人物がいます。それがデカルト(1596-1650)です。

デカルトはユークリッド空間に座標という考え方を導入しました。この座標はみなさんご存知の通りの中学校で$${y=ax}$$のグラフとともに習い、以降高校の二次関数をはじめとする様々な分野で不可欠となる概念です。

では座標導入がなぜ革命的だったのでしょうか。
例えば、放物線を表現する方法を考えてみます。
まずは幾何学的な定義は
『直線とその上にない点が与えられた時、点からの距離と直線からの距離が等しい点の軌跡を放物線という』
となります。何やら複雑ですね。

これを座標系を用いて表現すると
$${y=ax^2+bx+c}$$を満たす点$${(x,y)}$$の集合
(ただし$${a≠0,b,c}$$は定数)と表すことができます。

かなり簡略化されました。これはいわゆる関数と呼ばれる形ですが、$$(x)$$が決まればそれに対応する$${y}$$もわかります(逆も同様)。
これこそが座標を導入するメリットの一つなのです。

ここで距離をx軸、高さをy軸として原点の位置から大砲を打つことを考えます。仮に大砲を打ってからt秒後の位置を

$${x=at (a≠0)}$$
$${y=bt^2+ct+d}$$

とt(時間)の関数として表せるとすれば、tに好きな値を代入することで好きなタイミングでの弾の位置を特定できることになりますね。
この式は適当ですが、パラメータtを消去して$${y=\frac{b}{a^2}x^2+\frac{c}{a}x+d}$$の放物線の形になります。

高校で学ぶ古典力学ではこのように、
現実世界の空間を座標系に当てはめ、ある時刻における物体の位置を時間の関数として表す
ことを目ざします。それに座標系が不可欠なのです。

まとめ

今回は高校で学ぶ力学の舞台となるユークリッド空間とデカルト座標についてまとめてみました。
学び始めの時点ではここまで意識する必要があるのか疑問に思うかもしれませんが、深く学んでいくうちに座標系の重要性に気づく時が来るはずです。
今は「へー」くらいで構いません。学ぶうちにその重要性に気づいていただければと思います。

次回↓

参考文献

ユークリッドの窓
16世紀以降から20世紀の相対性理論の完成まで、物理学と数学がどのように発展してきたかについて、非常によくまとまっています。

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