2015年6月の記事一覧
愛の半分は秋にうしなう
行き止まりの朝から戻ってきて
坂の下で静止するボールのなかから夜空を仰ぐものがある
行き止まりの部屋の扉に貼ってある地図に迷いながら
散歩に出たきり帰らない犬をさがすときの夜だけがひろがる
離れればなくなる愛がかなしいという女のためにボールがころがる
舞い上がると夜空に捕獲されてしまう女のためにボールがころがる
歩いているうちに渡ってしまった川を見失っている
仮眠しかない丘から舞い上がる
飲み忘れた薬をもったひととなって商店街を縦断し
永遠に落下するもの、という言葉にくりかえしとらえられる仮眠しかない
冷えきった海水を汲んだ水筒をさかさにして
理由のない海を背にすると理由のない潮が背後から満ちてくる
仮眠しかない丘から舞い上がる土埃のように移動する午後しかない
途中で折れる文章では伝えられないものを追うために砂浜しかない
あいまいな川が流れ込んでいる
なにも言えない夜が過ぎ去っ
あてがないときは終点しかない
点にしか見えない星を追った最終バスの窓によりかかってみると
どこも見えなくなった風景にすぎない
ありふれたかなしみの夜空になってしまった過去がどれほど危険だろうと
拒否さえしなければ
見えない風景にすぎない夜がひろがっている
船と岸のあいだに置かれたテーブルにコップがふたつ並べられているような恋人たちが揺れながらもたれあっている
じぶんの影におびえる停留所をいくつも通過して
バスは、あてがないと