眠りにつく地平線
方位と呼べるものがぼくの季節だった冬を指し
川と呼べるものが
きみの書いた詩の次の一行をいまもながれる
回り道のなかで過去を訪ね
だれとも無関係に広がる曇天の下
きみとの年月を地図としてあるいた
羊歯のかげには
去年なくしたテニスボールが落ちていて
「風は窓を通り抜けたいだけで
カーテンを揺らしたいわけではなかった」
地下を吹き抜ける風に吹かれ
次の一行を探しにいこうとおもって眠りに落ちた
なくしたテニスボールのように忘れ去られた過去に
きみとともに歩いた道のりを書き加えながら
いつまでも熱を通わせ
何年も待った告白の中に横たわる恋人をきみに重ねた
それから川と呼べるものに橋を架けた
立ち去る時間を去るにまかせた
眠りにつく地平線を苦痛のように何枚もはおり
カーテンを揺らす風に吹かれて乾いた
乾きながら眠った
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