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自己流ゲーム分析方法(後半)


こんにちは! 

今回もご覧頂きありがとうございます。

前回からゲーム分析に関して、自己流ですが、自分のこれまでの経験を踏まえて書いてます。

前半はサッカーのゲームを流れの中でどのように分割して理解しようとしているか、そして各フェーズの定義について書いていきました。 

後半は、前半で分割していった枠組みに対して、それぞれのフェーズでどのように分析をしているか、そして、その分析をどのように選手やスタッフに伝えているかを分析資料作成方法として紹介していこうと思います。

なので、前半の内容は自チームの分析の際も同じですが、今回の内容はどちらかと言えば対戦相手の分析に焦点を当ててます。


1. サッカーのゲーム分析において共通する視点


各フェーズにおいて分析する項目を後ほど書いていきますが、その前に、全てに共通して、試合を分析する際に観ている視点があります。 

これは、カタルーニャの指導者学校では、いろんな戦術項目のコーチングポイントとして習ったのですが、自分はそれを分析に応用してます。

それは、3つありまして、

1. Cómo estructuran(どのように組織しているか)

2. Cómo actúan (どのようにアクションするか)

3. Cómo compensan (どのように補助するか)

の3つです。 


コーチングスクールでは、例えばサイドチェンジ、という戦術項目に対して、どのように選手を配置して、どのようなアクションを起こして、そしてそれをどのように補助するのか、という枠組みでコーチングポイントを作りましょう、という様に授業で習いました。


自分は逆に、自分が練習を作るときももちろん使いますが、相手がこの試合に向けて作ったポイントは何なのか、相手の意図を予想するのに、この枠組みを使ってます。


この枠組みを使って、さらに各フェーズ毎にみるところを書いていきます。

前半の様にすべてのフェーズで区切らず、どのように分析資料を作るかという視点で、ある程度まとめて書いていこうと思います。


2. 組織攻撃の分析

それではまず、組織攻撃の分析に関して書いていきます。

組織攻撃に関して選手やスタッフ間で共有するときは、なるべくわかりやすく、大きく2つに分けて、ビルドアップ〜前進のフェーズと、フィニッシュメイク〜フィニッシュのフェーズに分けます。 

2-1.

 ビルドアップ〜前進のフェーズの分析


相手のビルドアップを分析する際の大きな違いとして、ダイレクトプレーの意図が強いか、パスを繋いでプレッシャーラインを越えていこうとする意図が強いか、で大きく分かれます。

そして、まずはダイレクトプレーであれ、ショートパス主体のプレーであれ【相手がどのように組織するか】 を押さえます。

単純に、システムとして433なのか、343なのか、442なのか、などです。

これはキックオフの時が一番分かります。また、攻撃時はポジションチェンジが起こりやすいので、守備時のポジションから判断することが多いです。

そして、そのシステムから相手がどう動いて、どのゾーンを埋めることを意図しているか、までが相手の組織の分析になります。 


相手の誰がどのゾーンを埋める傾向があるかを分析した後は【どうアクションするか】の分析ですが、その際はボールの動かし方に着目します。

結局は相手がボールを前に運ぶ手段を見つけたいからです。ただ、誰がどこでボールを受けるかによってラインを越えるかどうか変わってくるので、前述の【どう組織しているか】と照らし合わせて行います。

例えば、下の動画はシステム的には442対442の試合ですが、

赤チームのビルドアップ~前進のフェーズでどう組織するかを分析する際、この赤チームの最終ラインは左SBと両CBの3枚にビルドアップの時変わるのですが、これをビルドアップの時に見つけようとすると、3バックのチームかと考えてしまうので、誰が移動して3バックになっているのかを見るために、守備時やキックオフの時を基準にします。

なので、赤チームのビルドアップ~前進時の組織の仕方の分析は、

『右SBと左SHがマックス幅をとり、左SBと両CBで3枚の最終ラインを作る。

2ボランチは相手2トップの脇、かつ2トップを越えられるポジションをとる。

2トップと中に入った右SHがライン間の深さとマックス深さをとる。』

といった感じになります。ここから【どうアクションするか】について、

『キーパーも含め4枚で横に動かしながら相手2トップのラインを外から越えようとする。

マックス幅をとった選手に相手のSBを引きつける狙い。そしてそのSBの裏のスペースを使う狙いのアクション』

と分析できます。

ほんの一例ですが、例えばこのような動きが2回以上見受けられた場合、これをチームの意図として分析します。1回だけたまたまそのような動きだったら動画で切り取らないこともあります。

ここに、さらにいろんなオプションが付け加えられていくイメージです。


前進のフェーズの定義でも書きましたが、ゾーン6に入るか、結果的にフィニッシュにいくプレーまでは前進のフェーズになるので、上の動画で、この赤チームの10番に渡ってもゾーン6に入るまでは、まだ前進のフェーズとの認識で、そこからはどのようにフィニッシュメイクに移行していくか、に着目していきます。

ここがグラデーションのちょうど重なる部分なので、10番からドリブル、クロスにいく傾向が強いのであれば、そのプレーはフィニッシュメイクとして分析します。

最後に【どう補助しているか】ですが、この理解の仕方は難しくて、Compensarという単語の理解の仕方次第のようなイメージなのですが、ただ学校でだいたいその例として出てくるのは、リスクマネージメントです。

自分は勝手にもう少し理解を広くして、意図したプレーがうまくいかなかったときの補助、セカンドオプションのイメージも持ってます。なのでビルドアップ~前進に関しては、オプションとして、うまくいかないときどういう変化があり得るかを考えてます。


以上のようなことを踏まえ、実際にエスパニョールとの試合に向けて作ったビルドアップ〜前進の分析動画を載せます。


このビデオはリーグ戦のエスパニョールとの第2戦に向けて作ったものです。1個目のビデオは1戦目の自分たちの試合の映像を分析したもので、2個目のビデオは自分たちが対戦する2試合前のエスパニョールの試合の分析です。

1個目のビデオに書いてあるのは、

- ビルドアップ時、両CBが開いてSBがマックス幅をとるやり方

- 真ん中は2ボランチが受けに落ちてくる。

- 4枚のビルドアップと、左SB+2CBでの3枚のビルドアップパターン

- 前進するために狙っているスペース。相手のSBとCBの間、SHとボランチの間のスペース。

- 2トップ、絞ったSHが狙うスペースはSBとCBの間のスペース。

- 2ボランチのポジショニング。異なる高さ。


2個目のビデオに書いてあるのは、

- 2個目のビデオのグラウンドは小さいのですが、そういった場合、SBがマックス幅をとってSHが絞ること。

- サイドから前進し、少なくとも一人は必ず裏に抜けだす。

- ピッチが狭い時、ボランチは普段より落ち気味で相手のボランチを引き付け、2トップが裏に抜けることで相手のライン間を広げ、絞ったSHがそのライン間を使う意図。

- 攻撃的SB。SHが受けてSBがDFライン裏に抜ける動き。


今回は2つ載せましたが、実際にはあと2試合分のビデオを使ってできる限りのパターンを想定しました。


上の動画例では後ろからつないでいくチームの動画を載せましたが、ビルドアップ~前進に関しては、相手の意図が何なのかをみて、ダイレクトプレーであっても、練習でその意図を防げるように、何パターンかは準備できるように分析します。

次は前進の後、どうフィニッシュメイクに持っていくかの分析について書いていきます。


2-2. フィニッシュメイク〜フィニッシュの
フェーズの分析


前述のように、基本の枠組みは同じで【どう組織するかどうアクションするかどう補助するかを見ていきます。

フィニッシュメイク時の組織の仕方は前進の時と違うこともありますし、これは補助にも入るのですが、リスクマネージメントも含めて全体がどのようにポジショニングするかを見ます。

そしてその組織の仕方から、どのようなアクションが多いかを見ます。

日本でよく聞くイメージのある、『フィニッシュに関してはあとは自由にやらせてます。』という感覚。これはそれぞれの考え方なので、そんなのおかしいいと否定する気はないですし、もちろん各選手がその場で選んでプレーしているとは思いますが、自分の経験上、スペインの1部クラブでもそこをあとは選手に任せてるなんてことはないと考えてます。

チームとしての方向性の中で個人戦術、セクター戦術を選択しているイメージです。

カオスになりやすいシチュエーションですが、そこにもチームとしての意図があって、自チームはしっかり準備しておかないといけない場面です。


ビルドアップ~前進の一つ目のボード上の動画例の続きから見てみると、まず組織の仕方として、左右非対称にしようとする意図を見てとれます。

赤チームの右サイドではSBとSHがボールサイドの外のレーンに位置し、クロスに対して2トップ、逆SH、1枚のボランチが中のレーンにポジションをとり、1枚のボランチはセカンドボールに対する準備ができるポジション、残り3枚(2CBと左SB)がリスクマネージメントのポジションをとる。

もちろんフィニッシュメイクの場面に限ったことではないですが、個人の選手の特徴や意図も考慮に入れます。それは【どうアクションするか】の分析に特に表れます。

例の赤チームで見ると、例えばですが、動画のような意図のプレーが2,3回見られた場合、

- 右SBは右利きで外から上がることの方が多く、抜き切る前にどんどんクロスを上げてくる。

- 1枚のボランチ8番はとても攻撃的で相手の最終ラインにまで上がる。

- 中に入る4枚の異なる高さ、レーンを使った入り方。

- クロスは相手の間を頭上から狙う。

などなど、細かく一個一個上げだしたらきりがないほど出てくると思います。

なのでやはり数試合観て、より傾向が強いもの、練習してるんだろうな、というものを分析としては使います。

【どのようにアクションするか】の分析はこのような感じです。


フィニッシュメイク~フィニッシュの場面の最後【どう補助するか】ですが、このフェーズにおける補助は前進の時のようなセカンドオプションと、基本的にリスクマネージメントなので、例の赤チームで見ると、1人のボランチ、3枚のDFラインの選手に焦点を当てることになります。

ただ、リスクマネージメントして、実際失った後どういうアクションをするかはネガティブトランジションの分析のほうで組織守備への移行と合わせて詳しくやります。


フィニッシュメイク~フィニッシュの場面の実際の分析動画例は、バルサとのリーグ戦第2戦に向けて作った動画です。

ここで指摘していることは、

- SBがサイドのレーンの内側、WGがマックス幅をとるときと、その逆の時

- クロスに対しては少なくとも2トップ下、1トップと逆WGはエリアに入る。

- フィニッシュメイクの仕方の一つ。Crear esacio y Aprovechar espacio。(1人が動き出して作ったスペースを使う)。SBが抜けてできたスペースをWGが使う。

- ペナ内でのDFラインの背中をとる動き。

- アーリークロスに対してもDFラインの背中をとりに来る斜めの動き。

- フィニッシュメイクの一つのパターンとして、特に左WG11番のレガテ(抜くドリブル)。

- セカンドボールのためのペナルティアークのゾーンは1ボランチか逆SBが埋める。

- トップ下、トップが斜めの動きを入れてDFラインを引き付け、逆WGをフリーにさせ、そこを使う狙いのサイド攻撃。

- 相手逆SBの背後へのクロス。


この動画は自分たちとの第1戦を分析したものです。

バルサとの試合は分析できても止められないほど相手の個人の優位性が大きいことも多いのですが、こちらもこういった準備をしていってなんとか勝てた試合でした。


ここまで組織攻撃のフェーズに関して、こういった形で分析していくという流れをざっと書いてきました。

相手の組織攻撃の分析ポイントは、先ほども書きましたが、細かく上げればいいというものでもなく、結局そのアクションの意図はなんなのか、細かいオプションより、その意図に付随する大枠をとらえ、選手は瞬間で対処する練習をしないといけないため、そのための準備をしやすくする分析でないといけないというところです。


続いて、カウンター / 組織攻撃への移行のフェーズに関する分析に関して書いていきます。


3.カウンター / 組織攻撃への移行のフェーズの分析


ポジティブトランジションのフェーズにおける分析の優先事項はカウンターを分析し、まずはそこでやられないようにすることです。


同じように、【どう組織するか】と【どうアクションするか】をまず見ていきます。

そして、自分の認識としては、このフェーズにおいて【どう補助するか】というのは、カウンターができないときに組織攻撃に行くというプレーと、カウンター時のリスクマネージメントを補助と考えてます。

ポイントとして【どう組織するか】は【どう組織守備しているか】とつながっていて、いい例が1つあったので見てもらいます。

これはバルサのカウンターを分析した動画で、このときのバルサの守備の特徴として、両WGが守備に戻らないことが多かったので、逆にカウンター時、そのWGがいる外のレーンを使う傾向がある。という分析内容です。

この時、バルサのカウンター時の組織の仕方に焦点を当てると、

3トップで外のレーンと中のレーンを埋める。

が中心となると思います。

そこから、どのように実際にフィニッシュまでいこうとするかを詳しく見ていきます。

ただ、このフェーズを組織攻撃と分けていることからも分かるように、このフェーズは組織されていない、カオスであり、不確定なことも多くあります。

それでも、カウンターの練習をしていないチームはないはずなので、その練習でやってる意図を読み取る努力をします。そして実際、カオスの中でも一定の狙いは試合のなかで見えてきます。


そして実際分析した動画が、次の動画です。これもエスパニョール戦に向けた分析動画です。

当時うちのチームと、バルサと、エスパニョールで上位3つを争っていて、自慢するつもりではないですが、このエスパニョールのカウンターを分析していたうちのチームは3-0で勝ち、その後このエスパニョールと試合をしたバルサは見事にエスパニョールのカウンターから3失点したというエピソードもあるほど、キーになった場面です!


この動画内では、

- 逆サイドのWGは守備時下がらない。そのWGと2トップのうち一人がサイドに落ちてカウンター時の幅をとる。

- 真ん中のレーンは2トップのうち一人落ち気味で埋める。

- 奪った瞬間、落ちたトップも使いながら、外のレーンからフィニッシュに向かう意図。


ざっとポイントはこのような感じで、この動画の試合とさらに数試合から情報を集めて、パターンを見つけ、エスパニョールのカウンターに関しては、奪ってからまずこの前の3人の足元へのパスが多かったので、そのリスクマネージメントの練習をしっかりしたのを覚えてます。

組織攻撃への移行に関しては、注意するというよりどれくらいのリスクをかけてカウンターを選ぶか、を参考にする感じで、分析のパワーポイントにまとめていました。


カウンターも含めた攻撃のフェーズに関する分析の内容はここまでで、次の項目から守備について書いていこうと思います。


4.組織守備の分析


つぎは相手の組織守備の分析についてです。

前述のように、組織守備の分析においても、

1. Cómo estructuran(どのように組織しているか)

2. Cómo actúan (どのようにアクションするか)

3. Cómo compensan (どのように補助するか)

の3つの視点から見ていきます。

そして、守備のフェーズすべてにおいて分析しないといけないことは、マークの種類です。

マークの種類に関する話までをここに詳しく書いてしまうとさらに5000文字増えてしまうのでざっくり分けると、

- マンマーク(相手選手を基準にポジションをとる。)

- ゾ-ンマ-ク(ボールを基準に守るゾーンを決め、ポジションをとる。)

- ミックスマーク(自分の理解の仕方は、マンマークがマークする相手を決めるのに対して、ミックスマークは相手選手を基準としながら、マークの受け渡しをすることで自分のゾーンから離れすぎないやり方。)

- コンビネーションマーク(場所やポジションによって複数の種類のマークを組み合わせて守るやり方。)

- ラインマーク(マンマークのように相手選手を基準ではなく、パスラインを基準として守るポジションを決める。)


これら5種類のマークから判断しています。これは各フェーズで違う場合もあるので、各フェーズでマークの種類は必ず分析項目に入れています。

以上を踏まえ、まずはビルドアップ~前進の守備について書いていきます。


4-1. ビルドアップ~前進の守備のフェーズ
における分析


まず相手のシステムを見て、どう組織しているかを見ます。攻撃の時よりもわりとわかりやすいことが多いと思います。

そこから、ビルドアップ~前進の守備に関しては、ファーストプレッシャーの高さと、先ほどのマークの種類を見ていきます。

プレッシャー開始ラインの高さは、大きく3つに分けていて、

- ハイプレッシャー(こちらの最終ラインに合わせたプレッシャー)


- ピッチの3/4の高さ


- Bloque bajo(低いブロック)


の3段階で見ます。

どの高さからプレッシャーをかけてくるのかを見るのと同時にこのフェーズのマークの種類を判断します。

ここで気を付けていることは、得点差や、試合の背景、攻撃側のシステム変更によって変わる可能性があるということです。なので1試合だけでは判断できないですし、情報はできる限り集める必要があります。

そして、マークの種類も含め【どうアクションするか】を見ていきます。


次の動画もエスパニョールの分析動画ですが、この試合の中でこちらがビルドアップを変えたので、それに対する守備パターンの変更も含んでるいい例です。

ここでは以下のようなことを書いています。

- ゴールキック時のこちらの2CBとボランチ1枚に対しては相手の2トップがハイプレッシャー

- プレッシャーパターン1。2トップでこちらの2CBとボランチにプレッシャーをかけ、SBがこちらのSH,SHがこちらのSBにマンマークでプレッシャーをかける。

- 相手のSBがこちらのSHに引きついた時、その後ろにスペースができる。

- ボールサイドでは相手CBはこちらの2トップにつくまでマンマークでプレッシャー。

- SBの裏のスペースを消すためのプレッシャーパターン2。こちらの絞ったSHのマークを相手ボランチがスライドしてつく。

- こちらがビルドアップを3枚に変えた時のプレッシャーラインはハイプレスではなく3/4ピッチに変更。

- その際のマークはゾーン気味になる。

- 2トップを越えられたら中盤からボールに出ていく。中から越えたらボランチが出てきて、外から越えられたらSHが出てくる。その際、相手SHを引き付けられたらこちらのSBが空く。ハイプレッシャーの時と違い、この場合相手SHを越えても相手のSBは出てこない。


このように、この時は前回の自分たちとの試合の中で数パターン見えましたが、この時もさらに3試合分析し、様々なシステムに対してどう対応するのかを分析しました。

この試合の分析の際、ビルドアップと前進で動画を分けたので以下は前進の分析動画例です。


前進の守備分析のためのこの動画では、ビルドアップの守備分析で書いた所と被ってるところもありますが、

- こちらのSHが絞ったところ、相手ボランチの脇のスペースが空く。そこに対して、相手のSBが出る時、ボランチがスライドするとき、誰も来ず越えられた中盤の選手が戻るときの3パターン。

- ボランチがスライドしてそのスペースを守るとき、反対のボランチのスライドが遅い傾向がある。

- 相手のSBがこちらのSHに出てくるのを防ぐため、こちらの2トップは相手のCBとSBの間にポジションとる方がいい。

- CBはボランチの背後にそんなに出てこない。

- 2トップが越えられた後、相手ボランチがこちらのボランチに出てこれないときは2トップでそこをカバー。

- こちらが433に変えた時、中盤の数的優位を作れる。

といったことを書いています。


このフェーズの補助の仕方の分析は、ビルドアップの守備後、一度越えられたらだれがどのように補助し、相手にバックパスさせるか、を見るようにしてます。

このエスパニョールの場合は、「ボランチがライン間を守らないといけないときは2トップが補助する。」といった意図を見ます。


このように相手の守備に関してもビルドアップと前進で完全に分けるよりも、できるだけわかりやすく流れで分析できるように考えています。

この分析から準備できたのは、こちらの絞ったSHの使い方と、相手のそこの守り方のパターンによってこちらも前進の仕方を変えるところです。

漠然と前進の練習をやるのではなく、分析で相手の守備を3パターンには絞れたので、選手も選択肢がはっきりし、実際の試合でのプレーの選択の精度が上がります。


次はフィニッシュメイク~フィニッシュの守備の分析に関して書いていきます。


4‐2. フィニッシュメイク~フィニッシュの守備のフェーズにおける分析


相手のフィニッシュメイク~フィニッシュの守備に関しても、組織の仕方とアクションの仕方、そして補助の仕方の枠組みを通して、マークの種類から分析していきます。

フィニッシュメイクの守備に関しては1つポイントとしていつも必ず着目しているのが、外のレーンのカバーに誰が来るのか、という点です。

誰が来るのか、と言っても、4バックの場合、CBが来るのか、ボランチが来るのかの大体2択ですが、そこには必ず着目します。

そこで補助の概念が関わって来るのですが、中盤より前の選手がどの程度後ろの補助をするかと、カウンターの分析の項目でも書いたように、誰が前に残るのか、も補助に入れてます。

また、マークの種類をこのフェーズでは他と変えてるチームもありますので、その点も注目します。

このフェーズでゾーンマーク寄りを使ってるチームと、マンマーク寄りを使ってるチームの分析動画の例がありますので、2つ載せます。


1つ目はゾーンマーク寄りでペナルティエリア内を守ってると分析したエスパニョールの動画です。

この相手に対して切り取った点は、以下です。

- SBが外のレーンに出たときのCBとSBの間のスペースをボランチが補助する。

- CBが外に出てくることはほとんどなく、外はボランチが流れるため、ボランチのスペースが空く。

- 2CBと逆SBでエリア内をゾーンマークで守る傾向があるため、そのそれぞれの相手の背後をとるべき。

- そしてこちらの2トップがその3枚を引き付けてる時、こちらの逆SHは空いてくる。ファーサイドへのクロスも有効。

- もう一つの狙い目。エリアの中のライン間。


2つ目はマンマーク寄りでエリア内を守ってると分析したサンアンドレウというチームの分析動画です。

この相手に対しては、

- SBとCBの間のスペースはボランチが落ちて埋める。

- フィニッシュメイクに対して2ラインでミックスマーク。エリア内ではマンマーク寄りで守る。エリア内でのマークの受け渡しはしない傾向。

- ボランチが間に合わないとき、SBの裏にCBが出て、SBがペルムータ(カバーしてくれた選手のスペースを越えられた選手が埋める)

- その際も外に出たCBのカバーはボランチが行う。外のレーンではミックスマーク、マークの受け渡しも行う。

- ボランチが外に流れたスペースをトップ下の選手が落ちて補助する。前線にはワントップのみ残る。

といったことを書いています。


このように、マークの種類や、中盤より前の選手のカバーのやり方を中心に、フィニッシュメイク〜フィニッシュの守備の分析は行います。

このフェーズの守備はそこまでパターンや変化が分かれにくいと思います。

なので、分析を活かして週中の練習で相手の弱点を突くポイントを伝えるのは比較的シンプルで、相手が空けやすいゾーンを狙うクロスや入り方の練習、相手のマークの弱点をつくなどを数パターン練習します。


ここまでの組織守備のフェーズの分析から週中の練習を作るポイントは「自チームの攻撃をどうするか」なので、チームの技術レベル等に応じて、複雑性を調整し、整理された状態で試合に挑めるように準備する点です。

チームのレベルや状況に応じて、どのパターンまで攻略の準備をするかは変わって来ると思います。情報の量はスタッフ側が知っておいたうえで、いかに選手が理解しやすくなるか、を重視しています。


では、ここからはカウンターの守備/組織守備への移行のフェーズの分析に移ります。


5. カウンターの守備 / 組織守備への移行の
フェーズの分析


各フェーズの分析に関する最後は、カウンターの守備、そして組織守備への移行のフェーズの分析です。

このフェーズでの【どう組織するか】は、相手の組織攻撃時の補助と関わりが深くなります。リスクマネージメントのポジションから、どうアクションするのか、その際のマークの種類はどうなのか、という視点から分析していきます。

分析の目的としては、前線のプレッシャーと、後ろはどれくらい前がかりか、どれくらい下がりやすいか、の傾向を見たうえで、こちらのカウンター時の狙いをはっきりできるようにするというところです。


このフェーズに関しても実際の分析動画の例を載せます。この二つの動画は、バルサとエスパニョールの分析でなかなか対照的な内容だったので、まず2つ並べて動画を載せます。



1つ目のバルサの分析ビデオの方では、

- 相手のダイレクトプレーに対するバルサの守備時3枚の中盤がだいぶボールサイドにスライドする。その際にボールを失うと逆はだいぶ空いている。

- 両WGはほとんど戻らない。特に右サイドのWGは前に残る。

- WGは戻らない分、前で失った時のプレッシャーではWGとSB、3枚の中盤の選手もボールサイドにスライド、マンマークでプレッシャーを強くかける。

- 前でプレッシャーをかけてる時のDFラインは高くキープ。

- リトリートよりも前を優先。CBすらボールに出てくる。


といったことを動画では書いています。このようにバルサのこのフェーズでの優先意図はボールを奪い返すこと、失ったゾーンからボールを出さないことを重視している感じです。


2個目のエスパニョールの分析の動画では、

- SBの裏のスペースにCBが出てきたらSBはボールではなくペルムータを行う。

- 中盤の選手はDFラインにまでは入らない。そのため、SBが戻るまではCBが出ていったスペースは空く。

- 前のプレッシャーは2トップと2ボランチが前に出ていく。2ボランチがボールサイドにスライドするため、その逆のライン間は空く。

- エリア内では、組織守備と同じく、ゾーンマークで守るため、選手間にポジションをとるべき。

このようなことがこの試合に関しては書いてあります。


バルサとエスパニョールの大きな違いはSBのポジショニング、マークの種類でした。そのそれぞれに対して必ず弱点があるので、こちらもその相手のやり方によってカウンターの狙いを変えていかないといけない、ということになります。

自チームのカウンターの練習としては、このそれぞれの相手に対して、組織守備に戻られる前にフィニッシュまで行けるようにすることが目的になります。

そして、自分の場合は前回の記事で書いたように、その組織守備への移行の基準を相手選手にしているので、例えばこのエスパニョール相手であれば、両SBと2ボランチが戻って4‐2のラインを作られたら組織守備と判断し、こちらとしては、それより前にフィニッシュに行こうという狙いになります。


以上ここまで各フェーズの分析に関して書いてきました。ここまででも1万文字越えて長くなってしまいましたが、最後に、これらの分析をどのようにまとめていたかだけ書いて締めようと思います。


6.自己流分析資料の作り方


自分の場合、ここまで例に出した動画のような各フェーズの分析動画をそのまま使うのではなく、ひとつのパワーポイント資料として作っていました。

その中で直近の数試合のメンバーや、前回対戦時のメンバー、予想フォーメーション、予想スタメン、各選手の分析、セットプレーの分析もまとめ、これを開けば動画も見れるという状態にしていました。

結局分析の目的としては、相手を知り、こちらがどのように準備するかを決めるための材料なので、この資料の中では、動画に書いていることだけじゃなく、自分なりに全体をまとめ、解決策まで書いたものを作っておき、そうして初めて意味があると思っています。

自分が監督としてであればそれを使って練習を組み立てる段階に入ればいいですし、もし自分が分析官であれば、その資料から、情報を取捨選択するのは監督に任せる、という形にもなるかと思います。


その資料はスペイン語なのであまり参考にはならないかもしれないですが、このような形で完成としてる例だけ載せます。



7.最後に

今回自分の現段階での経験を通して、自己流の分析のやり方を書いてきましたが、もちろんこれが完成形だとも思っていませんし、これからさらにブラッシュアップしていかないといけないと感じています。

トップオブトップはここにデータ分析も入れて情報量はさらに何倍にもなるでしょう。

ただ、この分析資料でも、1試合に勝つための準備に対してとても有用だったのは間違いなく、そしてこれを作るのはとてもとても時間がかかります。数試合の動画分析も含めると1日ではできないです。

日本でもどこでも、育成年代の指導者は学校の先生をやりながらなど、ほかにも仕事がある方が多いと思います。監督がここまでの分析に時間をとることはなかなか難しいのではないでしょうか。

でも、当然勝ちたい。勝つ可能性が上がることはできることをできる限りやるべきである。

もしそういった考えがありつつ、時間がない等で分析は任せたいという方がこの記事を読んでいただいた中でいらっしゃれば、ご連絡いただければ、今シーズンから各リーグ1チームまで、自分が一緒に仕事できればと思っていますので、Twitter等のDMを送っていただければと思います。


最後の最後になりますが、今回初めて12700文字にもなる記事を書きました。最後まで読んでいただいた方ありがとうございます。

次回以降、こういった分析を活かすためも含め、様々な戦術項目に対する練習メニュー紹介等書いていこうと思っています。

また、評価いただけたらシェアしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。










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