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理想の会社【就職・転職・キャリア】

前回、普通の会社とエンタメ業界の会社との差について少し書いたんです。

昔はブラックっぽい働き方で猛烈に働くことで成長してきたわけですが、昨今の働き方改革や、現在のコロナ禍を受けて、徐々に勢いが無くなってきているなぁと感じます。

そこでこれからの音楽業界の目指すべき方向性を想像した上で、どんな会社ならそれを目指せるのか、を考えてみたいと思います。

音楽業界が目指す方向性


まず、音楽業界が目指す方向性について、今業界全体が迷っているように感じませんか?

今さら「どうやったらパッケージが売れるか?」を考えても、その先に未来はないことは誰にでもわかるはずです。
サブスクで音楽を聴くことの方が圧倒的にコスパが良いわけですから、この流れに逆らうのは難しいですよね。

「メジャーデビューしたい」も無意味になりました。
ジャーのパワーは、流通とプロモーションのパワーであり、それらはネットで配信が出来なかった時代に、「店頭で棚を確保する能力」「大量生産のプレス工場から店舗へ配送する能力」であり「テレビ出演やラジオにオンエアするコネ」であり「多額の宣伝費を投下すること」が、メジャーデビューすることの価値だったわけです。

それがYouTubeなどを使えば個人でも発信できる時代になりましたし、マスメディアの効果が20~30年前と比べて圧倒的に下がってしまったからです。下がったとはいえ今でもマスメディアには「公的な承認という印象付けが出来る効果」はまだあるので、全く意味が無いかと言えばそうではありませんが、それでもドラマのタイアップや、CMソングを書きさえすれば、必ずヒットした時代に比べれば、メジャーデビューの価値はガタ落ちです。

唯一の救いであったライブは、このコロナ禍で市場は壊滅しました。
とはいえこれは、体験価値が低下したことが原因なわけでありませんから、ワクチンが普及し、感染予防対策が徹底され、新しい生活様式が定着すれば、元に戻る可能性はあります。
しかし、体験価値をそれほど感じていなかった人たちにとっては、感染リスクを超えるほどのメリットを感じられないかもしれず、以前のように元には戻らない、という見方もわからなくはありません。
いずれにせよ、復活するのに時間がかかるのは間違いありません。

それでは、どうすればよいのか?

答えは、これから作るしかない、です。

解決すべき課題

答えは、これから作るしかありません。

何故なら「どうすればいいかわからない」からです。
当たり前ですが、この先どうなるかなんて誰にも分りません。
本質的には、そもそも未来のことなんてわかるはずがないのは当然なのですが、今までこの業界ではある程度の「セオリー」が通用した時代ありました。
例えば、「ラジオ局のプッシュ枠を取れれば売れる」「テレビの音楽番組に出演出来れば売れる」といった、プロモーション方法がマスメディア中心の時代であれば、ある程度先は読めたのです。

なんとなくどうすればよいのか、わかった気になっていたのです。

しかし、インターネットやSNSの普及に伴って、ヒットの法則は変わっていきました。
YouTube発のアーティストや、TikTok出身といった若手が出てくるなど、これまでには想像もしなかった方法で、どんどん表現していくアーティストが出てきたのです。
それもすごく短いスパンで、すごいスピードで。

コロナの前からそうでしたが、業界全体が伸びていたので、これらのアーティストが出てきた時にも、権利はアーティスト本人が持ちながら、マネージメント業務をレコード会社に委託したり、大きなコンサート会場を使う場合にはコンサートプロモーターと一緒にツアーをする等、既存のビジネスモデルの中に組み込むことが出来ていたのです。

ですから、既存のプレイヤーたちは「新たなアーティストはSNSから見つけてこよう」とか「売れるアーティストさえ捕まえられれば、大規模なコンサートは出来る」と考えて、特別新たな動きをしようと思っていませんでした。

かねてから「この状態は長く続かない」と思っていました。
確かに、全てをアーティスト一人でコントロールすることは難しいので、既存のビジネスも残ってはいくのでしょうが、確実に今ほどの規模を維持することはできなくなるだろうな、と思っていました。

元々、既存のビジネスは完全に制度疲労を起こしていたと思います。
みんな気づいていて気づかないフリをしていたのか、それとも本当に気づいていなかったのかもしれませんが、コロナになってから、そのリスクが顕在化したと思います。

ライブが無くなったら収益が無くなる。
インターネットを使わなければビジネスを伸ばすことは出来ない。

これがハッキリした2020年だったと思います。

どうやればクリアできるか?

答えは先ほども書きましたが、これから作るしかありません。

これまではビジネスがよかったので、新たなことをやろうとすれば「余計なリスク」と思われていましたが、これからはただじっとしていても何も生み出すことが出来ません。

答えはこれから作る、これしかありません。

「言うだけなら簡単だよね」ということかもしれませんが、私はサラリーマンです。
この立場で出来ることにはどうしても限りがあります。
仕事の中でも努力は続けますが、やはり一人の力では限界がありますし、考えを理解してもらえても、具体的に何をすればいいのか?は、その現場ごとに異なるため、なかなか同じベクトルで進めていくことが出来ません。

だからこそ、このnoteを書き始めたのです。

少しでも、この業界で共感してくれる人が、それぞれの持ち場から少しづつ変えていければ、必ず業界は変わっていくはずです。
そうした想いから、自分なりの考えを発信していくつもりです。

同じように業界でサラリーマンをしている人ならわかると思いますが、大きな組織に所属している場合はその組織から変わっていかなければ、変革は難しいと思います。
この業界には、フリーランスにこそ超優秀な方が極めて多いですが、個人が持てる影響力には限界もあります。

やはり、エンタメ業界ではたらくサラリーマンだからこそ、少しづつその所属組織から変えていきたい、そう思っています。
では、どんな会社なら、この問題が解決するのか?
会社がどんな状態になっていれば、問題を解決する方向に動き出すのか?

色々な本をヒントにこうなればいいな、ということをあくまでサラリーマン目線で書いていきます。

① 失敗しても立場が脅かされない

前回の記事に書いた「慎重な人」が多い業界なので、どうしても新しい事や不確定なことに対して、フルに振り切ることが難しいと思います。

しかし、新しいことをやるには失敗がつきものです。
特に、これからの時代のことに40~50代がわかるはずもありません。
20~30代が、一番勢いのある会社がやはり伸びていくのではないでしょうか。
同業の皆さんの会社は、若手から中堅が、伸び伸びと働ける会社になっているでしょうか?

この業界が好きで入ってきて、夢を持って入ってきた若手たちが、自分たちがやりたいことにチャレンジできているでしょうか?

失敗しないように守り過ぎていませんか?
失敗したら怒ったり、仕事を取り上げたり、機会を奪ったりしていませんか?
既存の仕事の手伝いばかりをさせて、新たな仕事の開発の場に立ち会う機会を提供出来ていない、そんなことはありませんか?

業界によってコアとなる業務があるでしょうから、ある程度は経験を積ませる必要はありますが、これさえやっていれば良い、というは良くないと思います。
そして、「やりたいことがあるか?」と聞く機会を設けていますか?
そして、やりたいことをやった結果が失敗だとしても、やりきりさえすれば次のチャンスを与えて、チャレンジさせるべきだと思います。

これは、若手に限った話ではありません。ベテランこそリスクを取らなければならないと思います。

既存の事業にはある程度、精通しているでしょうし、自分なりの勝ちパターンは持っていると思います。
しかし、それらは過去の失敗から多くのことを学んだからではないでしょうか?

そして、失敗が許されない状況を潜り抜けてきたからこそ、失敗を許さなくなっているのではないでしょうか。

これまでは、失敗するとしてはある程度は失敗の方向性が見えていたと思います。
もし失敗したら「取引先を失う」「損失がいくら」と、ある程度予測できる失敗も多かったように思います。

そして分かりやすい失敗の結果からは、わかりやすく学べたのではないでしょうか。
「次は、取引先を失わない」「次は、前回の損失を取り返す」といった目標も立てやすいかもしれません。

しかし、これから先の答えが自分たちで作る、のですから、これから何をしたらいいのかわからない私たちにとっては、リスクがどのような方向で発生するのかわからないのです。
しかし、黙って座っていても何も生み出すことが出来ません。

こんな状況下では、とにかく動いてリスクをあぶりだす作業をしなければなりません。
全くのリスクゼロを行なうのは難しいでしょう。

知らない土地にいけば、道にも迷うでしょうし、見知らぬ人にも会いますが、それは行ったからこそわかることです。
であれば、とにかく行くしかありません。
それが例え失敗に終わったとしても、です。

だったら失敗には寛容である方がメリットは大きいのかもしれません。

② 期限と撤退ラインを決める

「どんどん行け!」と言っておきながら、いきなりブレーキをかけるわけですが(笑)、これは当然ですね。知らない土地が極寒だった場合、のんびりしていたら凍死してしまいます。

いつまでに、どのような状態になっていなければ、撤退するのか。

これを先に決めて、その上で失敗させなければ、学んだとしても死んでしまっては意味がありません。
致命傷を避けながら、メリットを取りに行く方法を学ぶ必要があります。
これは、経営者が覚悟を決める必要があります。
サラリーマンでは、会社の内部留保を把握していない場合がほとんどだと思いますので、是非幹部クラスの方々が努力して頂きたいと思います。

ここは、サイバーエージェントの「CAJJプログラム」が非常に参考になりました。


業界が良いから業績が伸びているだけではないと思います。
インターネット業界で、いくつも企業が生まれては潰れてきた中で生き残ってきたタフな知恵だと思います。
音楽業界も移り変わりが激しい業界ですので、共通点を感じながら読みました。
是非、おススメしたい書籍です。

③ やりたいことをオープンにして、実際に行動する

意外と「やりたいことをオープンにする」ということはないのではないでしょうか。
聞き出すこともあまりしていないような印象です。
「こんなことをしたいのだけど、言い出すのが恥ずかしい」とか、「言ってもどうせ、理解してもらえない」という若手も多くいる一方、経営者やベテラン社員は「今の仕事を一生懸命やれば、その内やりたいことが出来る」と言ったり、本音では「余計なことはしないで、本業に集中してほしい」と思っています。

エンタメ業界に限った話ではないですが、やはり「やりたいこと」を優先するのは、会社の中では非常に難しいのです。

当たり前ですが、その社員の給料を会社は払っているわけで「新しいことか何か知らないが、それでいくら儲かるの?」というのが経営者の正直な気持ちです。
「夢で食える程、甘くないよ」というわけですね。

これは社会活動としては当たり前ですし、その人自身がやりたいことだとしても、社会に受け入れられなければ、継続することは難しいのです。

しかし、目指すものが「今は夢物語でも、もしも達成されたら多くの人が幸せになること」なのだとしたら、例え周囲に反対されようが実際にやってみるべきなのです。
そして、反対されるかどうかは口にしなければわかりませんし、続けていく中で徐々に状況が変わってくる場合もありますし、周囲の努力が伝われば協力者も出てくるものです。

だからまずは、やりたいことをオープンにして、実際にやってみることが必要なのです。

これは会社側が①②を整えれば、自ずと③に繋がってくるはずです。
参考になるのは、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチや、所属する組織の心理的安全性についての書籍です。


心理的安全性については、Googleが自社の中で成果の上がるチームとそうでないチームのどこに差があるのか?を突き止めた「プロジェクト アリストテレス」の研究結果です。
ここは別の機会にもう少し掘り下げたいと思います。

④ 組織としてサポートする責任を持つ

これは①とも共通しますが、個人に責任を取らせる、とか立場を脅かさないだけでなく、うまくいくためにどうするか、を会社として考えるということです。

やってみた結果、もしくはやっている最中で、経験者から見れば失敗することが目に見えている、もしくは気づいてしまうパターンもあると思います。
最終的なリスクは会社が取るわけですから、この失敗から学ぶべきものは学ばなければ、ただの損失で終わってしまいます。

その時に、やりたい本人をただ失敗させて終わるのではなく、経験者がアドバイスをすることも必要です。時には、手助けすることも。ましてや、足を引っ張ることがあってはいけません。

「あいつがやってることだから、あいつだけがやればいいんだ」というスタンスは当事者意識に欠けています。
勿論、その人に対してアドバイスできるほどの能力がないのであれば、黙って見ていればよいのですが、初めてチャレンジするような想定外の場合であっても、経験者の方が色んなノウハウを持っているものです。

ベテランの経験者は、その経験から「なんとなくヤバイ」「直観的にうまく行く気がする」といった、修羅場を潜り抜けてきたからこその危機管理能力があります。

これが経験不足だと働かないのです。
今回のテーマでは未体験の領域に足を踏み入れるわけですから、本来的にはベテランは直観的に「うまくいかない」はずのことをやり出しているはずです。だって「うまくいく」と思っていたらとっくに自分がやっていたはずですし、若手の発想でなくても思いついた可能性があるからです。

しかし、今回めでたく、失敗する可能性の高い、突拍子もないことの実現に向けて走り出したのですから、例え失敗したとしても全力で、取り組んで学ぶべきものを学びきって失敗しなければなりません。

そして、組織としてその学びを次に生かす責任があります。
かつてフィリップ・モリスのCEOジョゼフ・カルマンは、セブンアップを買収したが、8年後に売却して損失を計上した。その時には「これもカルマンの計画がうまく行かなった例のひとつだ」と自身の著書で書いています。それにとどまらず買収を決定する前に反対意見をもってよく聞いていれば、悲惨な失敗を避けられた可能性があったと示唆しています。
そして「この間違った決定の責任は自分にあるが、高い授業料を払って得た教訓を最大限に引き出す責任は全員にある」と語ったと言います。

トップはあくまで自分の責任で判断を下しますが「失敗したことから最大限の教訓を得るんだ」と強い決意を持っておく必要があります。

組織としてサポートする責任を持つ、というのは言い出しっぺだけだけが責任を持つのではなく、決まった以上みんなで達成に向けて努力する、ということです。


⑤ 常に勉強する

たくさん書いてきましたが、組織として新しいことに挑戦するって、ただ「やるだけ」のことにこんなに労力を使うんですね(笑)
なかなか変われないからこそ、会社は安定しているわけですが、その時の事業環境に応じて変化し続ける必要はあると思います。

この記事でも数冊の書籍を紹介していますが、日々の経験や人との対話が一番勉強になるのは言うまでもありません。

しかし、経験や会話というのは、大抵の場合今の自分の延長線上にあるものです。

時に、人との出会いはそれを超える体験になる場合もありますが、意外と自分と話す相手は自分のレベルに合わせた会話をするものです。

それは、自分を振り返ってみればよくわかるはずです。
子どもと話すときは、子どものがわかるように話しますよね?
新入社員と話すときは新入社員のレベルに合わせて話しますよね?

自分よりレベルの高い人は、自分のレベルに合わせて話してくれるのです。
自分が相手のレベルに合わせるためには勉強するしかありません。

エンタメ業界は、あまりビジネス然とした部分を前面に押し出しにくかったり、金の話だけすると夢が損なわれる感じがするからか、ビジネスについて勉強する場が少ないように感じます。

しかし、どんな業界のどんな知識でも、自分たちの業界との共通点や接点を探ることは出来ます。

コロナで傷んだこの業界は、もっと他のビジネスから学ぶことが多いと思います。
「勉強なんてどうしていいかわからないよ」とか、「税金とか調べたくない…」とか、それこそ「読書が一体何の役に立つんだ?」とか言う意見をよく聞きます。

しかし、今のレベルで「何の役に立つのか?」と思っていると、何のヒントも見つけることは出来ないと思うんですね。

むしろ「どうすればこの知識が今の業務に役立てることが出来るか?」と考えることが、新しいビジネスの発想に結び付くのではないでしょうか。

そして、「何の役に立つのか?」という発想は根底では「いくら儲かるの?」という近視眼的な発想と同じだと思います。

先ほども紹介したスティーブ・ジョブズは、「人生に何が役に立つかなんてわからない。ただ、後から振り返って、点と点とつなぐことができるだけだ」と言っています。

今のように、不確実性の高い世界では、何が正解かわかりません。
だからこそ、常に勉強して、異なる考え方に触れて、自分たちの課題に取り込んでいく必要があると思います。

そして、会社はそれを促すような仕組みを作っていくべきでしょう。

まとめ

今回「理想の会社」というタイトルにしました。
エンタメ業界ではたらくサラリーマンの中には、強いモチベーションを持った人が本当に山ほどいます。超・優秀な人たち、スーパープロデューサーの方々、みんな仕事が大好きで一生懸命働いています。

しかし、全く報われていないのが実情です。

エンタメ業界の会社たちは今、非常に苦しい立場に置かれています。
ライブエンタテインメントの約7,000億の市場がいきなり吹っ飛んでしまったのですから、楽なわけはありません。
力のある人たちがその力を発揮できていないのです。

今、稼ぐためには、ビジネスそのものが変わる必要があります。
だって、ここで生き残れば、元に戻った暁にはすごく強い組織になるはずだからです。

「新しいビジネスをやっているから強い」のではなく、「どんな状況になっても稼ぐ方法を見つけられる組織だから強い」ということになっていると思います。

そんな想いから「理想の会社」をタイトルにしました。

どうか、みんなで生き残って、また楽しい仕事をいっぱいやりたいですね!
業界の中でも、領域を超えて、色んな人たちと、新しいビジネスを生み出して行ければと思います!
是非、コメント欄に感想書いていってください!

読んでくださって、ありがとうございました!

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