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ひらがなの力/おとうさん

               
 旅先であった、ちょっとしたことを
短い文章にして娘に読んでもらったら、

「いいね、ほっこりする。ただ、この中身だったら、 文章の題の
『小さなこと』は、『ちいさなこと』
 とひらがなに直した方がいいよ」
と言った。
 
ハッとした。
そこまで考えてなかった。

中身のことばかり考えて、
「小さな」ことを漢字で書くことについては
何も考えてなかった。
 
実は、文章の中身の方に不安があったのだ。
娘は精一杯生きている。
妻もそれを全身で支えている。


そういう毎日を生きている家族に対して、

こんな小さなことを伝えていいんだろうか、
気楽でいいね、でも、そんなことは決して口にはしないだろうけど、

と思いつつ。
 

そうしたら、娘から、いいね、
と言われたのである。


そして娘は、スマホの画面をだして、
見てごらんと言った。

画面には「小さなこと」と「ちいさなこと」の2行が並んでいる。

並べてみると、
確かに「ちいさなこと」の方がやわらかい。

やわらかい、その文字には、
雪国のかまくらのような、
包み込むやさしい力があった。
 
やわらかい気持ちだからこそ、
相手に伝わるものがある。

娘は漢字になることもあるが、
今日の娘は、ひらがなである。

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