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《フィンランディア》と名付けられるべきです

シベリウスの若き日の名作、フィンランディア。

祖国フィンランドの独立への熱い思いが込められた、愛国心溢れるこの作品が生まれるにあたって、とある匿名の手紙が大きな役割を果たしたといいます。一体、誰が何を思って書いたのか?今日はフィンランディア誕生までのお話です。


帝政ロシアによる圧政

シベリウス(1865-1957)が生きた時代、フィンランドはロシアの支配下におかれていました。

時のロシア皇帝はロマノフ朝最後の皇帝であるニコライ2世(在位1894-1917)。皇太子時代に日本を訪問した際に、大津事件(※)にあい襲撃された人物です。祖父のアレクサンドル2世を反政府の爆弾テロで亡くしたこともあり、国内の反体制派の締め上げはもちろん、近隣の国々に対しても強硬な姿勢で臨みました。

※大津事件:当時は皇太子であったニコライ2世が日本を訪問中に、警察官の津田三蔵がサーベルで襲撃した事件。ロシアとの関係悪化を恐れた明治政府は大逆罪によって死刑とするよう主張します。しかし、時の大審院長の児島惟謙は、刑法に海外の皇室(王族)に対する犯罪は規定されておらず、一般人と同じ扱いであるとして明治政府の訴えを退け、謀殺未遂罪の中で最も重い無期徒刑としました。司法の独立を守った判決として知られてます。


西の隣国フィンランドへは、熱烈なロシアの愛国主義者であったボブリコフを1898年にフィンランド総督として任じ、フィンランド国民に皇帝への忠誠を厳しく欲求します。手始めに反体制派のメディアを弾圧。さらには2月詔書をもとにフィンランドの自治権を廃止し、ロシアの法律がフィンランドの法律に優先する状態を作りました。1900年からはフィンランドの公文書をすべてロシア語とし、学校教育でもロシア語を強制し、フィンランドの募兵をロシア全土へ派遣出来るよう法を改正。つまり、ロシアと交戦中の国の前線に、フィンランドの兵士を送れるようにしたのです。


同じ時期に東の隣国である日本に対してはドイツ、フランスと組み、三国干渉を実施。日清戦争の結果として日本に割譲された遼東半島を清に返還させたところに、軍隊を送り占領。要衝である旅順を要塞化しました。ここを足掛かりとして、アジアへの進出を目論んだわけです。1904年に勃発した日露戦争ではこの旅順を巡り、日露両軍が激しい攻防を繰り広げたのは周知の事実です。

フィンランドは目覚める

ロシアからの圧政に対し、フィンランドの人々は黙ってはいませんでした。

圧政への抗議の意を示すため、青年フィンランド党が、党の新聞のために「新聞の日の祝賀会」を1899年11月に開催。一連の会のイベントで目玉とされたのが、シベリウスが伴奏音楽を作曲した歴史劇でした。

フィンランドはスウェーデン、ロシアという大国に挟まれた立地であることから、長きにわたって他国からの支配を受けるという、苦しい歴史を歩んだ国です。その苦難の歴史を振り返る劇の最後で演奏されるのが「フィンランドは目覚める」という、フィンランディアの元となった作品でした。

大国からの圧力から脱し、自由と独立を勝ち取るという流れのこの作品は、当時のフィンランドの人々を熱狂させました。当然、愛国心をわき起こすとしてこの作品は演奏禁止処分をくらうわけですが、タイトルを変えながらフィンランド各地で演奏されるようになります。

ある日届いた匿名の手紙「それは”フィンランディア”と名付けられるべきです」

新聞の日の歴史劇の翌年、フィンランドのヘルシンキフィルハーモニー管弦楽団がパリ万博に派遣されることになります。完全な独立国ではないフィンランドが万博でパビリオンを出すことは、フィンランドが独立した国、地域であることを内外に示す画期的なことでした。「フィンランド館」の主要なイベントとしてヘルシンキフィルの演奏会は企画され、当時からフィンランドの代表的な作曲家とされたシベリウスの作品を取り上げることになります。

演奏会で取り上げる作品を準備、思案するシベリウスの元に、ある日匿名の手紙が届きます。手紙には以下のような内容が書かれていました。

貴殿は、ヘルシンキ・フィルのパリ万博遠征公演を飾る序曲 のような作品を作られたらどうでしょう。すべてを突き抜 けたその曲は、そう、《フィンランディア》と名付けられるべきです。

作曲家◎人と作品シリーズ シベリウス 神部 智より

手紙を読んだシベリウスは、当局から目を付けられることは承知の上で一念発起し”フィンランドは目覚める”を演奏会の序曲として編曲し、手紙の内容に従いこの作品を「フィンランディア」と名付けたのです。

後になって、手紙の主はアクセル・カルペラン男爵という人物であることが分かりました。彼は「フィンランドは目覚める」を聴き感銘を受け手紙を書いたそうで、のちにシベリウスに金銭的援助を行い、交響曲第2番の誕生のきっかけを作りました。

シベリウスの出世作

ヘルシンキフィルの万博公演では、このフィンランディアを序曲とし、メインにシベリウス自身の交響曲第1番を演奏したそうです。演奏会は大成功。パリだけでなく、ベルリン、ハンブルグ、コペンハーゲン、ストックホルムなどでも演奏され好評を博し、シベリウスは一躍国際的な名声を得ます。

11/19のアンサンブルSAKURAの演奏会では、そんなシベリウスの出世作を取り上げます。フィンランディア、交響曲第1番に込められた想いを汲んだ演奏が出来るよう頑張りますので、ぜひお運びください。


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アンサンブルSAKURA第40回定期演奏会
日時:2023/11/19(日)12:30開場13:00開演

⚠️開演時間が1時間前倒しとなってます⚠️
会場:浅草公会堂
指揮:高石治
入場料:1,000円(当日券あります)
曲目:
グリーグ/ペールギュント 抜粋
シベリウス/フィンランディア
シベリウス/交響曲第1番

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