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「山上の魔王の宮殿」の住民「トロル」のお話

ペールギュントで「朝(朝の気分)」に次いでよく知られているのが「山上の魔王の宮殿」です

山上の魔王の怒りに触れたペールが、魔王の手下達にジリジリ詰め寄られ、しまいには追いかけ回され、間一髪のところで逃げ切る、そんな場面の音楽です。


「トロル」と言うらしい

ちなみに、この山上の魔王とその手下は「トロル」という、ノルウェーとその周辺の北欧諸国に伝わる空想上の生き物とされています。

邪悪なのか、それとも…?

トロルについては、北欧の各地に様々な伝承があります。例えば…

・「人喰い巨人」として人を食べたり、畑の作物を荒らす
・クリスマスに町におりてきて、いい子にはプレゼントを、悪い子は捉えて食べてしまう
・嵐、吹雪の日に人を湖に引きずり込む
・誘拐、窃盗を常習する。気まぐれで、気に入った人間には財産を渡すこともある。
・薬草の知識が豊富。怪我人を治療することもある。

邪悪なものなのか、それとも良心を持った存在なのか、ちょっと分かりかねます。

日本で言うところの…?

例えば、上記の冬の寒い日に湖に引きずり込まれる、というところに注目してみましょう。北欧のノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3国を地図で眺めていると、湖沼が多い地域(特にフィンランド)であることがなんとなく分かります。

必然的に地盤が緩いところが多いでしょうから、嵐で視界も足元も悪い中、むやみに出歩くな、そんなメッセージを昔の人はトロルを使って説明したかったのかもしれません。

日本各地に残る河童の伝承も、水辺に近寄るなといったメッセージを感じます。水辺に近づいた人を引きずり込んで溺死させたり、尻子玉を抜いて殺すという話は、溺れたらいけないから、むやみに水辺に近寄らないようにしろ、というメッセージです。
※河童にも、河童を助けた人に魚を贈った、土木工事を手伝った、薬の製法を教えた、といういいお話もあります。

自然に対する畏敬の念

ほかのヨーロッパ諸国に比べて、特に冬場は厳しい自然環境の中暮らす必要があるのが北欧の国々です。厳しい冬の寒さと嵐の前に、人は無力であると感じる場面も多いでしょう。他のヨーロッパ諸国とは違い、自然に対する畏れ(畏敬の念)を持っているように思います。

作曲家の発言を借りるなら、実際にナイアガラの滝を目にしたマーラー(オーストリア出身)は「完成した芸術作品は常に単なる自然美よりも美しい」と言い、シベリウス(フィンランド出身)は「私がかつて経験した中でも、ナイアガラは最も宗教的なものとして体験された。実際音楽よりももっと」と言ったそうです。

地震、台風といった自然災害が多く、今日に至っても災害による死者が相当数にのぼる我が国と、共通する感覚があるように思います。圧倒的な自然の力を前に人間は小さな存在だ、そんな思想が北欧の人々の中にはあるようです。自然に対する畏敬の念、それを形にしたもののひとつが、トロルなのではないかと思います。

朝(朝の気分)が爽やかな春~秋にかけての風景とするなら、この山上の魔王の宮殿は厳しい冬の嵐。北欧の自然の触れ幅の大きさ、力強さを想像頂ければ幸いです。

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アンサンブルSAKURA第40回定期演奏会
日時:2023/11/19(日)12:30開場13:00開演

⚠️開演時間が1時間前倒しとなってます⚠️
会場:浅草公会堂
指揮:高石治

入場料:1,000円(当日券あります)

曲目:
グリーグ/ペールギュント 抜粋
シベリウス/フィンランディア
シベリウス/交響曲第1番
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