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数学の証明問題のように美しい映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」が嫉妬するほど面白かった。

「オーシャンズ11」のダニー・オーシャン、「シャーロック・ホームズ」のジェームズ・モリアーティ、「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターなど、犯罪映画には天才と呼ばれる主人公や悪役が存在する。そのセンスとスキルを善行に使っていればと思ったりもするが、悪の天才というところが逆に彼らの魅力を引き立てている。

そして、今年また1人、新たな天才が誕生した。

天才の名は、リン。タイの高校に通う10代の女子高生。
彼女はタイの名門高校に成績優秀者として奨学金をもらう頭脳の持ち主だ。

そんな彼女が犯した罪、それは”カンニング”だ。

カンニングなんて、モリアーティ教授やレクター博士に比べれば、可愛いものだし、そもそも天才である彼女がカンニングなんてする必要があるの?と思ったかもしれない。

実は彼女がカンニングをするのではなく、彼女の回答をいかに他の生徒達に伝えて”うまくカンニングさせるのか”が彼女の仕事。つまり、リンはカンニング請負人なのである。

この映画のタイトルは「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」。タイで歴代No.1の大ヒットを記録している作品だ。にもかかわらず、都内だと新宿の武蔵野館でしか現在上映しておらず、非常にもったいない。。。!と思い、少しでも多くの人に見てほしくて、この記事を書いています。

まず、この映画何が良いって、テンポが良い。ジャズのセッションを永遠と見ているかのように、シーンとシーンの切り替わりがなめらかで、観客を全く飽きさせない。「あー、ちょっと間延びするかも」っていうタイミングの一歩手前で「え、そういう展開!?」とこっちが、再びスクリーンに釘付けになる”キメ”を入れてくる。料理に例えると、コース料理のように、「そろそろ次食べたいなぁ」と思ったところで、さらりと次の食事がでてくる感じ。だから、映画全体がキュッと引き締まっている。

それを成り立たせている役者、音響、カメラワークなどなど、全てが絶妙に混ざり合っているからこそだなと思う。あまりに綺麗に完成された映画がゆえ、コンテンツとして見惚れてしまう。むしろ、作り手として嫉妬する。

さて、この映画の見どころは、なんといっても「エスカレートしていくカンニング手法」。次はどうやってカンニングを成功させるんだろう、、と観客の気持ちを煽ってくる。

さながらワンピースでルフィがどんどん強い海賊達と戦っていくように、カンニングを成功させるための難易度が上がっていく。最初は「教室かつ後ろの席で、対象は1人」だったのが、対象が複数になったり、教室の広さが変わったり、果てはカンニングをさせる相手が同じ空間に居ない中でカンニングを成立させなければならくなったりと、一種のバトルマンガの様相を呈している。ルフィのギアが物語が進むごとに上がるように、カンニングの手法もどんどん派手になっていく。

しかも、その手法がちゃんと現実味を帯びているかつ、「まさに天才。。。」とうなってしまうほど美しいのだ。例えば「オーシャンズ・シリーズ」だと「ちょっと、流石にそれは映画の世界だけやろ〜」と思ってしまったりもする。(逆にその日現実的な派手さが「オーシャンズ・シリーズ」の魅力でもあるのだけど。。。!)

でも、「バッド・ジーニアス」の手法は、本気出せば再現できるんじゃないか、と思わせてくれる。映画でも小説でも、その物語の大枠覆う「大きな嘘」は許されるけど、細かいところの「小さな嘘」は許されない。この映画は、その「小さな嘘」を極力排除して、観客を決してしらけさせない。

前評判を聞きつけた映画好きの方々が集ったのか、新宿の武蔵野館はほぼ満席。僕はこれは「カメラを止めるな」を超えてくるんじゃないかなぁと思っている。多分、近い内に上映館が増えるんじゃないだろうか。それくらいスキのない、数学の証明問題の様な映画だった。

少なくとも、ミステリーやサスペンスが好きな人は絶対に見て損は無い映画だと思うので、ぜひ今すぐ新宿、武蔵野館へ。

あ、言い忘れていたけど、リンがカンニングをすることになった元凶である友人役の女の子がめちゃ可愛かったです笑

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