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ロジカル・プレゼンテーションから学ぶ、伝わる文章を書くための基盤の作り方

「良い文章とは何か」

人によって答えは様々だろう。だが、人が文章を書く目的は自分の主張を誰かに通すためである。自分だけが読む日記は含まれないかもしれないが、Twitterのつぶやきから会社で提案する企画書、世の中で売れているベストセラーまで、全ての文章の目的は書き手の主張を読み手に伝えることだ。

文章を書くことは、他者を動かさんとする”力の行使”なのである。

これは、プロのライター古賀史健さんの著書「20歳の自分に受けさせたい文章講義」中の一節だ。

世の中には沢山のライティングの本がある。僕も文章がうまくなりたい一心で、コピーライティングの本や文章術の本、小説のアウトラインの書き方など様々な本を読み漁った。そこに書かれていることは、文章を書くうえで意識すべきことばかりだったが、毎日文章を書く中で、そもそも技術を上手く行使するための土台が整っていないことに気づいた。

体幹が弱いと、いくらフォームを鍛えてもボクシングが強くならないように、上手く技を繰り出し、素晴らしい文章を生み出すためには、考え方の土壌を鍛えなくちゃならない。

自分の文章を人に通すための考え方をどう学べば良いのか。そんな悩みを抱えているときにオススメしてもらったのが、コンサル会社を経営する高田貴久さんの「ロジカル・プレゼンテーション」という本だ。

本書は論理的な提案力の基礎のキが詰まっている。プレゼンテーションと聞くと、何十人もの人を相手に、大きな会議室などで発表するための資料をイメージするが、高田さんは、プレゼン力とは提案力であり、ビジネスの場で人と話す限り、それは全てプレゼンである、と述べている。

プレゼン資料を作ることも、文章を書くことも、誰かに自分の提案を伝えて、納得してもらう点では全く同じだ。言葉で補えない分、文章を書くほうが難しいかもしれない。

良いプレゼンをつくり上げるための4つの基礎力「論理的思考力」「仮説検証力」「会議設計力」「資料作成能力」が本書には詳しく説明されている。「会議設計能力」と「資料作成能力」は編集者が社内の会議を進めやすくしたり、クライアントに対して企画を通したりする上では欠かせないスキルだと思うが、今回趣旨とずれるので一旦脇に置いておく。

今回は、考えるための2つステップとして取り上げられている「論理的思考力」と「仮説検証力」を書くことに当てはめるとどうなるのかを考えてみたい。

「論理的思考力」は「本当にそうなの」と「本当にそれだけ」に答えられる力

「論理的思考力」とは、言い換えれば「話が繋がっていること」だ。文章の構造は自分が伝えたい目的と目的を裏付けるための経験や資料、ストーリーに別れる。コラム、ニュース記事、小説、どんな文章でもそれは変わらない。ミステリー小説で、犯人の動機やトリックの辻褄があっていなければ、読者は萎えてしまうだろう。

話をちゃんと繋げるには「縦の論理」と「横の論理」を網羅する必要がある。

「縦の論理」は、「本当にそうなの?」という質問に答えられること。

この記事の主題は「伝わる文章を書くためには、プレゼンで求められる提案力を身につける必要がある」だ。これに対して、読者が「本当にそうなの?」と読みながら疑問が湧き上がった時、漏れなく答えられていれば、「縦の論理」が通っていることになる。

「縦の理論」が通らない理由は3つあると本書では述べられている。

1つ目は「前提条件の違い」

伝えたい相手と頭の中で同じ目線で立たないと、相手は置いてけぼりになるか、そんな簡単な事言うなよ、となってしまう。実際のプレゼンでは発表する相手が決まっているのでやりやすいが、文章を書く場合は誰に届けるかから考える必要がある。

この文章は「ライティング関連の本は何冊が読んだが、どうも伝わる文章がうまく書けない」と悩む人を想定してい書いている。だから、プロのライターやこれから文章を書く練習をします!と考えている人には、物足りないかもしれない。

前提として読む相手は、主題に対してどれくらいの知識があるのかを意識しなければならない。

2つ目は「異質なものの同質化」

「プレゼンスキルが大事ですよ」と伝えただけでは、人によってプレゼンスキルが指し示すものが異なるため不十分だ。もしかしたら人前に立って話す力と思う人もいるかもしれない。だから、「ロジカル・プレゼンテーション」内で書かれている4つの力が、この記事においては「プレゼンスキル」と定義する必要がある。

3つ目は「偶然の必然性」

自分が必然と捉えていることが、相手にとっても本当に必然なのか。それは必ず起こりえることなのか。これは、目的の主語と述語を入れ替えてみるとわかりやすいかもしれない。

「プレゼンスキルを正しく身につければ、伝える文章が書きやすくなる」

逆方向の論理も通っていれば、その文章は一本の軸が通った文章に近づくはずだ。

続いて「横の論理」だ。「横の論理」は、「本当にそれだけ?」という質問に答えられること。

「プレゼンスキルを身につけるだけで、本当に伝わる文章が書けるの? 他にもタイトルのつけ方や句読点の位置、表現方法の種類などいろいろあるんじゃないの?」と突っ込まれた時に答えられるか。「横の論理」を満たすためには、「縦の論理」で説明した前提条件の共有が一つの鍵だ。自分が読んでほしいターゲットによって漏れがなければひとまず問題無いと考えていいだろう。

また、自分の体験をもとにしたエッセイなどは、多分「本当にその体験だけなの?」と突っ込まれることは、ビジネス系の文章よりも少ないはずだから、厳しく意識する必要はないかもしれない。「この体験が一番伝えたいことに適しているかな」と思えれば十分だと思う。

「仮説検証力」は相手に納得してもらうための技術

「論理的思考力」が身について、自分では論理的に正しい文章が書けたと思っていても、相手が納得するとは限らない。書いた文章のゴールは、「行動を起こしてもらう」か「新しい考え方を理解してもらう」の2つに大別される。前者は広告やマーケティング系、ノウハウ系の文章に多く、後者はエッセイやコラムなどに多いのではないか。

どんな文章にせよ、ゴールまでたどり着くには「仮説検証力」が欠かせない。

「仮説検証力」は「目的→論点→仮説→検証→示唆」の5つのステップに分かれている。

「目的」は言葉の通り、文章で伝えたいことや、文章を通じて起こしてほしい行動だ。

「論点」は本書によると、「相手の意思判断に影響を及ぼす判断項目」と定義されている。つまり、この文章で言えば、プレゼンスキルに則って文章を書こうと思うかの判断項目だ。最終的に、いくつかの項目をクリアして、読んだ方が「よし、この本を買うに値する知識を得られた!」とか「プレゼンスキルは確かに役立ちそうだな」と判断してもらえたら、この文章は読み手の疑問を解消して納得してもらえたことになる。

「論点」を納得してもらうのに必要なのが「仮説」と「検証」だ。

「仮説」は乱暴な言い方をすると、「ヤマカン」にあたる。「プレゼンスキルが使えるかどうか」の論点に対し、「ロジカル・プレゼンテーション」の「論理的思考力」と「仮説検証力」を提示すれば、きっと納得してもらえるだろうと見立てを立てる行為を指す。

「検証」は実際に相手に当ててみて、相手が「なるほど」と思ったら成功だ。Amazonのリンクを貼ってクリック率と購入率を見るとか、リツイートの数とか、判断指標はいろいろあると思うが、相手の判断を先に進めることができれば「検証」はうまくいったと言える。

最後の「示唆」とは、「論点を絞り込むために役に立つ情報」だ。この記事であれば、「プレゼンスキルは、伝わる文章に役にたつのか」という論点に対して、100%完璧ではないが、「まぁ、確かに役立つかもしれないな」と思ってもらうための情報になる。

つまりこの記事における示唆は、「論理的思考力」と「仮説検証力」が備わっていれば、細かい点を除けば、一定「伝わる文章」を書けると考えらえるので、すぐに実践したほうがいいのでは? といった具合になる。

少し、冗長になってしまったかもしれないが、「論理的思考力」と「仮説検証力」を文章を書く土台として意識してみると、少なくとも筋の通った文章にはなると思うので、ぜひ試してみてください。

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