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思いがけずスパルタになってしまった夜のこと【はじめてのシチュー編】


先日
長女がシチューをつくりました。

きっかけは手洗い。
手を洗って、と言ったら
あまりにも平然と、自然に
「もう洗ったよ」
と言うことに驚いてしまって。

洗うときに
使う椅子がないから

うそということが
わかったけれど

最近たびたび
「洗ったよ」と
うそをつくことが多かったので

もう「注意」ではだめだな
と思い


「うそをつく人は信用できないし
信用できない人の料理なんか作りたくない。
自分で作ってください」



と告げました。

長女は大泣きして
つくってほしい、
ひとりでジュージュー(炒め物)
できないから

ごめんなさい
ごめんなさい

と言っていたけど

ごはん抜き
とは言ってないし

炊飯器にはごはん
冷蔵庫にはミニトマト
のりも、ふりかけも、
レトルトカレーもある。

この棚にあるものと
冷蔵庫にあるものは
使っていいから

どうぞ自分で
用意してください
と言って

私は次女と末っ子の
ごはんをつくりました。

長女はしばらく
茫然と台所のすみに
へたりこんでいたけれど

ふらりと立ち上がって
いつもと違うお茶碗に
ごはんをよそって
テーブルに行こうとしたので

「ちゃんと棚見たの?
冷蔵庫は?
食べれる食材自分で探しなさい」
と伝えました。

野菜室を見たので
このときにミニトマトは見えたはず。

冷蔵庫を見たので
このときにのりは見えたはず。

白い棚を見て
缶詰も
ミートソースのレトルトも
プリキュアのカレーもあったはず。

なのに
彼女が取り出したのは
シチュールウの箱でした。

「シチューつくることにした。
つくりかたかいてあるから。」


!Σ( ̄□ ̄;)


なんでなんや…
なんでそんな
ややこしいところから
はじめるん…
ちゃうやん、
もっと簡単に
食べれる方法あったやん…

ツッコミたい気持ちを
抑えて
ふーん、やれば?
と言って
様子を見ることにしました。

私は私で末っ子の口元に
ごはんを運びながら
目の端で
ちらちらと台所の様子を盗み見します。

ニンジンを取り出して
皮をむかずに包丁を刺したかと思うと
お尻の方から輪切りをはじめ
切り終えました。

今まではできないって
言ってたのに
初めて最後まで切れました。

レシピは箱に
書いてあっても

漢字が読めない娘は
絵で読むしかありません。

炒める過程をすっとばして
お水を鍋に張って、
ニンジンをぽちゃり。

そのまま豆乳を投入。
ルウも入れて
蓋をして火を入れます。

「おいしくできるかなぁ?」

不安そうな長女。
蓋から豆乳があふれだす。

さすがの私も手を出す。


長女の判断で完成して、
器にもる。
その盛り方も、ぎこちない。
そしてこのときになって

「あ、にんじんしか入れてなかった」と。
にんじん一本切るのに
よほど力を使ったらしい様子が
伝わる一言でした。


食べてみたら

おいしくできた、とのこと。
おかあさんもたべていいよ、
みんなもたべる?

と言い、
ここまでできたならいいかな、と思い

「もう少しおかず足す?」
と聞いて
「うん!」と笑顔で答えたので

私達のおかずで作っていた
キャベツと豚肉の蒸し煮を
シチューにいれて混ぜ
一緒に食べました。


長女のがんばる姿をみて
思わず涙が出そうになりました。
ぎゅーっと抱きしめたくなりました。


レトルトカレーを選んで
めそめそ食べるだろうという
私の予想を軽く越え

思わぬ長女の努力を
目にした夜でした。



うそはよくない、とか
うそをつかれると傷つく、とか
話すこともあるけれど

もう、それじゃあだめだな、と
思ったんです。

このままこのうそを
ごめんなさい、の一言で
許して
私はこの子の料理を作るのか?

我が子とか
家族とかじゃなくて

信用できない人に
料理を作りたいと思うか。
いつか
大切な誰かを守るために
堂々とうそをつく日だってくる。

「うそ」そのものを否定するつもりはない。
大事なのは
信用してもらいたい相手に対して
どんな行動をとるべきなのかを
学んでほしい、と強く思いました。

私の心に
正直に従った結果
この顛末となりました。

この日以来自信のついた娘は
ホットケーキ焼いたり
ハンバーグひっくり返したり
お弁当詰めたり

「台所は私の居場所」と
感じることができた様子。

もう次
同じことがあっても
すぐに前を向けるのではないかと
思います。

自分の胃袋を
自分の力で満たす。

5歳の、大きな挑戦でした。

子供がいちから作ったホットケーキ。

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