04.その域を超えて

スラムダンクの映画を観た。

すごいものを見たと思った。
井上雄彦の絵が動いていた。

アニメ版とか映画版ではなくて、
あいつらが漫画からそのまま出てきた。

で、山王工業が出てきた。
動く山王工業かっこよすぎる。震えた。

何の前触れもなく、全国大会2回戦が始まった。

アニメの映像ではなく、
バスケの試合の映像だった。
バスケ的な動きではなく、バスケの動きだった。

アニメでは、
ディフェンスのシーンでは、
ディフェンスの象徴的な動きをさせて、
それを表現する。

ただこの映画ではそれが許されていなくて、
手の出し方や、ステップの踏み方まで、
実際の試合の動きにしか見えなかった。

山王戦は大好きなので、
前日まで読み込んで映画に挑んだ。

驚いた。

映像の随所に漫画のコマと全く同じ画がある。
漫画原作なので当たり前だけど、
そういう次元ではなかった。

同じシーンがあるのはわかる。
でも、その域を超えて、全く同じ画だった。

映画として、
原作の再現性が高いということもできる。

でも、もっとすごいのは、
映像として動かしても違和感がない絵を、
漫画の時点で描いていることではないだろうか。

静止画で記号的に分かりやすく描けば、
漫画としては完成していても、
映像にしたら矛盾が出るものではないだろうか。

それがないのって、やばいのではないだろうか。

さらにいうと、
「あ、同じだ」って思えるほどに、
その1コマが印象に残っていることもすごい。

絵が上手いし、漫画が上手いんだなあ、
ってあらためて思った。

宮城の過去を掘り下げたストーリーだった。
昨日の記事に書いたことと、重なる内容だった。

そういう思考のモードだったので刺さった。
そうだよなあ。理由なく不良にはならないよな。
理由なく短気でいるわけじゃないよな。

母に手紙を書くシーン。
書き出してすぐに消した一文で泣いてしまった。

映画の最後で、
家族が兄の死を乗り越えた描写があった。
写真を飾るという行為で表現されていて、
それもよかった。

こういう背景が、どのキャラクターにも、
存在する可能性があることを忘れないでいたい。

書いてないことは起こっていない、
という考えはよくないと思っていたけど、
あらためて実感した。

とてもよい映画体験ができた。
読んでくださったあなたの側にも、
最高の漫画と、最高の映画がありますように。

2022/12/04
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