ビジョン・ミッション・バリューがわからなくなったので仏教にすがった話
小学生の頃、どうしても算数の公式が理解できなかった。
先生も親も「公式を覚えて使えばいい」と言う。
でも、なぜこの公式で解けるのか、理由がわからないのに使えない。
今仕事で、その時と同じ状況に陥っている。
変わりゆくなかで、残ってきたもの
ビジョン・ミッション・バリューを新しくするタイミングで入社した。
私の役割は、経営陣や創業メンバーがいままで考えて行動したこと、つくってきたもの、変えてきたこと、諦めたこと、諦めなかったことを全部汲み取って、理解して、形にして、世の中に伝えていくこと。
でも、いざ形にしようとすると戸惑う。
全部を構造的に理解しようと、集めた情報を目の前に並べてみる。
創業からいままでの7年間。
変化の波のなかで抽出された、たくさんの大事な言葉たち。
それらが私のなかでは、まだばらばらと宙に浮いている。
会社が大事にするキーワードが10個あるとしたら、ぜんぶが繋がっていないといけないのだろうか? 似たような表現があるとしたら、それらの意味はほんとうに同じなんだろうか? 結局なにがいちばん大事なんだろうか?
なぜビジョンを再定義するのか
驚くほど糸が絡まってきたので、そもそもビジョンとミッションとバリューってなんなの? というところに遡ってみた。
ビジョンは、私たちの理想像。
ミッションは、理想像に達するまでの旅路。
バリューは、理想像に達するために持っておくべき価値観と判断基準。
つまり、ミッションもバリューも、ビジョンを達成するためにあるものだ。
いままでの会社の歩みのなかで、進む方向を間違えたり、目的地を間違えていたりしたこともあったのだと思う。
だからこそまず、10年後を見据えて設定した「あるべき姿」をよくイメージすることが大事だ、ということでビジョンの再定義に踏み切ったと聞いた。
ビジョンは、社内のみんなが同じイメージを想起できるものじゃないといけない。さらには、これから一緒に進んでくれる未来の仲間や、会社の外にいる人たちにも同じイメージを伝えられるくらい明確にあるべきものだ。
仏教のビジョン・ミッション・バリューとは
いきなりだけど、仏教の話をする。
私が仏教を好きな理由は、「人生は苦しいもの」「人間はくだらない生き物」を前提にしているからだ。
人生は苦。苦をともなう生と死を永遠に繰り返さなければいけない。
仏教はこの輪廻転生という永遠の苦しみループから抜け出すことを目指す。
この、あきらめているくせに、あきらめず努力せよと勧めてくるのがおもしろい。
ビジョン・ミッション・バリューを仏教にあてはめて考えてみる。
仏教が最終的に目指すビジョンは、人々がいまの苦しみから抜け出すこと。
そのためのミッションが瞑想や読経。
行動指針となるバリューが、因果論や諸行無常の考え方、八正道という8つの正しい行いなど。
うん、納得。
じゃあ、誰に向けて言っているのか?
ビジョン・ミッション・バリューの役割が理解できた。
じゃあ私が何に悩んでいるのかというと、会社のビジョンが誰を対象としているのか理解できていないことだ。
いまでこそ仏教はすべての人を対象とする大衆的なものになっているけれど、ブッダがいた頃は教えの複雑さゆえにインテリ向けの宗教だった。
だけど、教えが簡単なヒンドゥー教や踊るだけでOKの楽しそうなバクティ教に信者を奪われていく。仏教も真似して、教義を簡単にした大乗仏教をつくってみた。
でも、後発はなかなかうまくいかない。だから逆に、対象をインテリに絞ってさらに難易度を上げてみた。それでも勝てない。だから今度は密教にして特別感を出し、会員制のバーのような超高級志向で売っていった。
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つまり、向いている対象が変わるとぜんぶが変わってしまうよ、という話だ。
ビジョン=理想像というからにはすべての人を対象にするものだと思いこんでいたけど、ほんとうにそれで会社としての認識と合っているのかな? もしかして、マーケティングに関わる人やものづくりをする人など、ビジョン達成の対象となる世界が決まってるんじゃないか? などと考えていた。
簡単に見えるものもほんとうは難しいけど
よくない。非常によくない。
無駄なことを考えすぎるダメなところが出ている。
算数の公式を使えなくて赤点を取りまくっていた私になっている。
このままだと仕事でも赤点だ。
1日なんにもつくることができずに日付が変わって、もう3時間も経ってしまった。
仏教について考えていただけじゃないか……
幸いなことにとても信頼できる上司がいるので、混乱していることを正直に日報で伝えた。
自分で解決できなかったことを押し付けているようでちょっと申し訳ないけれど、沼から引きずり出してほしい気持ちもある。
結局めんどくさいことを押し付けているな。
与えられたことをこなすのはできるけどそれじゃだめで、複雑なことや抽象的なことを整理できるのがほんとうの実力だし、自分の役割を達成するために必要なこと。
その言葉の背景も語り手も知らない相手に、ちゃんと伝わるように形にしなきゃいけない。そのためには、ちゃんと理解しないといけない。
採用をはじめビジネスがうまくいっているいろんな会社のミッションやビジョン、その流れを汲んだ記事を読むと明確にその会社のイメージができる。
なかにいる人を想像できる。
自分に合うか合わないかの判断までできる。
それを自分の会社でもやればいいだけだと思ってたけど、難しいなあ。
でも、「人が生きたり死んだりすることから抜け出せる世界」を目指した仏教がいまやビジネスや生き方文脈でも活用されているように、対象がどうとか考えすぎずに、自分たちの目指す世界をはっきりさせるのがいまいちばん大事なことなんだろうな。
今日もがんばります。
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