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私は父のことを何も知らない。


私は父親のことを何も知らない。

久しぶに年末に帰省したときに話をした時のことです。

私の父は現在64歳、60歳の時に定年退職を迎え今は運搬の仕事を始めています。
父が30代の時に家族のために買った家のローンを返すために、あと10年は働かないといけないらしいのです。

今運搬の仕事を始めて1年位経過したところで、これから少しずつ大きくしていくところと父は言っていました。

「仕事自体は若い人にはかなわないよ。笑」と言いながらも、周りの人に恵まれているみたいで苦ではないみたいでした。ああ良かった。

* * *

少し私の家族の話をさせてください。

39歳の時に1番上の娘(私)を持ち私の下には3個下の妹がいます。
父はIT系の会社で働く普通のサラリーマンでした。
ただ、少しだけ不器用なところがあったんですね。

普段はすごく優しいのですが、話が少し長かったり、亭主関白みたいな父親像を理想としていたり、まぁまさに昔のお父さん、と言う感じの人でした。愛情を持って家族に接してくれていました。

そして私が小学校1年生に入学するときに千葉県のとある田舎に一軒家を購入。もちろん現金では買えないので、ローンを組むことになりました。

またその住宅街は比較的同年代のお役が住む街で、少しだけ周りに見栄を張ってお腹の割には若干高い家を建てたのでその分ローンも高くつきました。

家を購入した時は、一応計算上は問題はなかったんです。

新しい家で2段ベットを買ってもらって無邪気にはしゃぐ私と妹と、家族4人で普通の生活を送っていました。



ただ、想定していた通りにはいかないものですよね。

私が小学校4年生に上がった頃父親が会社のストレスで精神的に病になり、1年間近く休職することになりました。

日系企業だったので、もちろん一度休職をしてブランクが開くと給与が下がってしまいます。

もともと予定していた通りの収入を得られなくなったので、ローンの返済が難しくなりました。母も仕事を始めました。週2・3日のコンビニパートと、家で書道の先生として4日ほど働くようになったのです。

週7日働いていたのです。最初は楽しそうにやっていたものの、長い間続くと母親も体力的にも精神的にも疲弊してきます。

疲弊しきった母は、次第に家庭内に当たるようになりました。

父親の話し方や食事をする音、服装、髪型、喋り方、全てに文句をつけるようになりました。

私に対しても、妹に対しても、誹謗中傷の言葉が毎日甲高い悲鳴で浴びさせてきました。精神的に家族みんな疲弊しきっていました。


* * *

私の思っていた父親は少し不器用だし、要領も良くないけれど、家族を大事に思う人。

頻度は多くなかったけれど、外に遊びに行ったり、教育にも熱心な方で子供の頃からモノポリーを購入して一緒に遊んでくれたり、自分の仕事を説明してきたりと話すことが好きな人でした。


なのにその亀裂が入ってから、父親は180度人間が変わったようになり家庭内の誰とも会話をしなくなりました。

私が大学1年生になるまで家庭内の険悪なムードはずっと続いていました。

私も自分を保つのに精一杯で、親に対して気を使うことができなくなり 多分ひどい言葉もたくさんかけてきました。

期待もたくさん裏切ってしまいました。それを引け目に感じてちゃんと話す時間も取らないまま逃げるように田舎の一人暮らしの家に暮らすことになりました。

学生の頃は自由気ままに遊んで生活させてもらいました。


そして社会人になった今、年に2・3回実家に帰ることがありますがその時に思うのです。「お父さん、歳をとったなぁ」と。


* * *


母親の更年期も落ち着き、今は比較的普通の家族らしい会話ができるようになっているみたいです。

そして普段実家に顔を出さない娘に帰ってきたらすごく嬉しそうな顔をするんです。帰った時におかえりとニコニコしながら言ってくれる父親。

…ただ、それ以上の会話が続かない。

自分から何を話しかけていいのかがわからない。

私たち家族が、父の感情を殺してしまったのではないかと怖くなりました。



私が実家から東京に帰るときに、最寄り駅送ってくれる車の中で少しだけ父親と2人きりになる時間がありました。

その時に仕事の話をしてくれたんです。冒頭の会話がその一部です。元気そうでよかったと、”一瞬”思った自分がいました。


そして今度は残りの人生で何をしたいのと言う問いをかけました。

父の答えは”自由の時間が欲しい”でした。
「旅行に行って、心が気持ち良いと感じる土地を見つけそこに住む人達と交流を持ちたい、何処かにそんな場所もあると思う」と。


私たちのために必死に働き続け、私たちが巣立った後も定年後も働き続け、残ローン10年分抱えている父の唯一の願いを

私はどうやったら叶えてあげられるのでしょうか。

どうしたら 逃げたことを許されるのでしょうか。

今の私にはまだ分かりません。

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