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【志免教室講師・東村静子】自己肯定感で子どもは変わる


イルカとの触れ合いから見えた、新たな可能性の伸ばし方

受験を一つの通過点と捉え、合格のさらにその先を見据えたアプローチにこだわる全教研。体験型のカリキュラム「エコアドベンチャー(=エコアド)」もその一環だ。企画・実行のリーダーを担う東村先生に、全教研ならではの子どもたちとの関わり方や、自身の思いについて聞いた。

エコアドベンチャーとは…
課外活動を通して子どもたちの向上心や知的好奇心を育てる通年カリキュラム。大自然の中でのキャンプ、動物との触れ合い、専門機関と連携した体験教室など、五感をフル活用できる多彩なプログラムを用意している。

一歩踏み出すきっかけを与える

−現在、東村さんがリーダーとなってエコアドを運営されていますが、もともとは体験型の内容ではなかったそうですね。

エコアドは今年で13年目になるカリキュラムですが、最初はディズニーランドに連れて行くようなお楽しみ企画的なものでした。もちろんそれでもいいのですが、親と行った方が色々買ってもらえて断然楽しいですよね(笑)。もっと私たちにしかできないやり方はないのかなと考えていた時、北海道で野生のシャチを見てすごく感動したんです。特に理由があるわけではなく、無性に心を動かされました。この感動を子どもたちにも伝えなきゃという使命感に駆られて、エコアドの企画として提案したのが始まりでした。

−東村さんがきっかけだったんですね。体験型になって、子どもたちに変化はありましたか?

かなり変わりましたね。例えば、年間を通して熊本の山奥に行く企画をやった時、最初はすごく喧嘩したんですよ。それぞれやりたいことがぶつかって、協力なんてできないんです。でも徐々に、自分の得意な分野が見えてきたり、みんなで分担しないとミッションを達成できないことがわかってくるんですよね。それまで自己主張しかできなかった子たちがリーダーシップをとり始めて、仲間の大切さや普段の生活の便利さなど、エコアドを通してさまざまなことに気づけたようです。家や学校での様子も変わり、「今まで親に感謝なんてしたことなかったのに、一体何があったんですか!?」と親御さんもびっくりされていました(笑)。あと、イルカと一緒に泳ぐ企画をやった時には…

−イルカと一緒に!それもなかなか普段できない経験ですね。

イルカが好きな私の独断から立ち上がった企画でもあるのですが(笑)。イルカって、可愛いイメージがありますよね?でも実際に間近で見ると、3メートルくらいあって、歯も上下合わせて約100本生えていて、すごく怖いんですよ。泳ぐスピードも想像以上に速くて、そんなイルカの背びれにつかまって泳ぐなんて、かなりの勇気がいるわけです。その企画に参加した一人は小学2年生で、別の塾から全教研に来た子でした。詰め込み式の学習がその子には合わずに成績が伸び悩み、やりたいことを聞いてもなかなか答えられないこともありました。せっかく素質があるのに、もったいない。何か一歩踏み出すきっかけを与えてあげなきゃとイルカに乗せました。

−反応はどうでしたか?

「やってよかった」と本人も言ってくれて、イルカについて詳しく調べたり、自分から何かを始めることが自然とできるようになりました。子どもって、一歩踏み出すことさえできれば、あとは自分でどんどん進んでいっちゃうんですよね。別の企画で屋久島に行った時には、自分が感動した場所に家族も連れて行きたいと、しおりや地図を作っていました。「おばあちゃんは足が悪いけど、どうしよう?」と相談してくれて、私もルートを一緒に考えたり。その子は5年間全教研で学び、成績も大幅に向上して、この春、志望校に合格することができました。将来の夢は弁護士だそうです。

−東村さんの好きなイルカから弁護士の夢が生まれるとは(笑)。一般的に塾は勉強をコンサルティングするイメージがありますが、東村さんがやられていることは学びや感動をシェアすることですよね。だからこそ、より響くのではないでしょうか。

そうですね。子どもたちに何か伝えられることはないか、常に考えています。私は虫があまり得意ではないのですが、ネタになるかもと蚕蛾を育ててみたり、冷蔵庫にクリオネがいたこともあります(笑)。一人一人興味を持つものが違うので、何がフックになるかわからないんですよね。すごく非効率ですが、それもある意味やりがいになっています。

親御さんとの作戦会議

−普段子どもたちと接する中で、東村さんが心がけていることは何ですか?

「個」を大切にすることです。何が重要で、それがいつ重要か、一人一人違うポイントを見逃してはいけないと思います。そのために、どんなに小さなことでも、変化を感じたら必ず声をかけるようにしています。最近はオンライン授業も多いですが、そのスタンスは絶対に変えません。なぜできるようになったのか、どう思ったのかを聞き、本人にも考えさせることが、次の一手を見つけることにつながると思っています。

−自分のことを見てくれていると子どもたちも実感できますよね。それが居場所にもつながるのではないでしょうか?

そうですね。ただ、毎年遊びに来てくれる卒業生もいますが、「嬉しい時は来なくていいよ」と言っているんです。うまくいっている時って、私じゃなくても誰かが褒めてくれるじゃないですか。苦しい時や選択に迷った時にこそ、ふと思い出して立ち寄ってくれたら嬉しいなと思うんです。親御さんにも、何かできたら褒めてあげるようにいつもお願いしています。お母さんの褒めには勝てませんので。その分、怒る時は私が怒りますとお伝えしています(笑)。

−損な役回りですね(笑)。

楽しいですよ。その子に何をしてあげられるか親御さんと一緒に考えるので、作戦会議をしているような気分になります。イルカに乗った生徒のお母さんからは、子どもの変化を細かくまとめたレポートをいただきました。過去には、全教研での経験を巻紙に書いて卒業時に私にくれた生徒もいましたね。今でも初心に戻るため、受験前にはそれらを見るようにしています。

ゼロから「答え」をつくり出す力

−「非効率なことがやりがい」と言われましたが、そうした一人一人へのアプローチもかなり時間のかかる作業ですよね。

超非効率だと思います(笑)。極論、イルカに乗せるのではなく、大人があれをやりなさい、これをやりなさいと言ってさせた方が、成績が伸びるのも早いかもしれません。でも私は、非効率なことをした方が本当の意味で力がつくと信じています。普段できない経験で得られる感動が、今の子どもたちにとって一番必要なことだと思うんです。

−それは受験にとって?それとも将来にとって?

どちらにとってもですが、将来の方がより大きいですね。今の子は自己肯定感が低く、「やってみたい」よりも「どうせできないからやりたくない」と思いがちです。だからこそ、エコアドで得られるような達成感や成功体験によって、自己肯定感を高めることが重要なんです。今の時代、「答え」は探すものではなく自分でつくり出すもの。人生うまくいくことなんてなかなかないじゃないですか。むしろ自己肯定感を高めることが合格への近道だと私は思っていますし、それが結果にも現れています。私たちの仕事は合格させて終わりではありません。社会に出ても一人で歩いていける力をつけさせることが、全教研として、一講師としての役目だと思っています。