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ビールのCMで、出会いと対話のデザインを考える その7(最終回)

 さあ、いよいよ最終回です。このCMの最後の部分(3:31~)を見ていきます。

⑧ 「選択肢」が示される
⑨ 「対話」を始める

 動画
 https://www.youtube.com/watch?v=tdsFCgiVOdo

 一緒に作業をして仲良くなりかけていた相手が、自分とまったく正反対の主張の持ち主であることを知り、気まずい雰囲気になった状態で、アナウンスが流れます。

「選択肢があります。退室するか、残ってビールを飲みながら話し合うか」

 二人はそれぞれ一瞬考えた後、そこに残って相手と話し合う方を選びます。

 自分とは正反対の主義主張を唱える相手。普通なら、不愉快に思うだけかもしれません。
 しかし今は、相手と自分にいくつかの「共通点」があることも知っています。力を合わせて大きなバー・カウンターを完成させた「仲間」でもあります。

 そして、カウンターの上には冷えたビール。立ち話や無機質な会議室などではなく、リラックスして話のできる舞台が整っています。

 ここまでの仕掛けがあれば、「話してみよう」と思うのは、ごく自然なことでしょう。

 そう。ワークショップを「デザインする」って、こういうことなんです。
 参加者に何かを「教える」のではなく、参加者の「学び」が自然に生まれるような「環境」や「流れ」をつくること。そうすれば、きっと何か変化が起きると、参加者を信じること。
 どんな「変化」が起きるかは、参加者次第です。でも、参加者が自分で考え、自分で選んだ結果であれば、すくなくとも本人は、他人から与えられた「答え」よりも納得することができるはずです。

 ちなみに、ワークショップで「選択肢」を提示するというのは、ぼくもよくやります。
 「AかBか、どちらを選びますか?」という問いは、一見すると、思考の幅を狭めてしまうんじゃないかと思われるかもしれませんが、実は、たんに「どうしますか?」と問うよりも、議論が深まることが多いのです。
 それは、具体的な選択肢があることで、各選択肢をいろいろな角度から検討し、さらに、他の人が同じ選択肢を別の角度から見ていることに気づいて視野が広がるからです。場合によっては、与えられた選択肢だけでは不十分だということに気がついて、それ以外の可能性に考えが及ぶこともあります。

 たとえば、『チョコレートを食べたことがないカカオ農園の子どもにきみはチョコレートをあげるか?』(タイトルが長くてすみません (-_-;))で紹介した、「チョコレートをあげるかどうか」という二者択一や、「バングラデシュの衣料品工場の労働者を救う9つの方法」のランキングの9つの選択肢などがその例です。

https://www.junposha.com/book/b644006.html

 そのうち、このCMを参考にしながら「ワークショップのデザインとファシリテーション」についても考えてみたいと思います。乞うご期待 (*^^)v

ハイネケンのCM「価値観の違う他人と仲良くなれるか?」の流れ
① 何をするのか、相手が誰なのか、まったく知らずに会う
② 指示に従って何かを組み立てる
③ 自分のことを「5つの形容詞」で表す
④ 相手と自分の「3つの共通点」を見つける
⑤ 組み立てが終わって、それが「カウンター」だと分かる
⑥ カウンターにビールを置く
⑦ それぞれの主張を記録した短い動画を見る
⑧ 「選択肢」が示される
⑨ 「対話」を始める

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