父へのプレゼント

えんじろうはプログラムを組んだり何かを開発したりといったことはできませんし、それを今から勉強する気力もありません。でも自分が思った「こうしてほしいな」を機会に伝えることができたら、とても素敵だろうなあという気持ちは結構強いと感じています。
今回はそんなえんじろうが、全盲の父へのプレゼントのためにスマホを利用して考えついた視覚障害者用音声支援ツール「目代わりボイス」をご紹介(というか自慢)させてください。スマホはこんなことも可能にできるというお話です。

僕って結構自分勝手でわがままな人間だと思います。実際そう思われても仕方ない振る舞いをしていると思っています。
母の日だから何かあげようとか、父の日だからと言った行事には一切参加していません。他人の誕生日もさほど気にしていませんが、ちゃっかり自分の誕生日は祝ってもらえたりすることもあります。願ったわけではないとはいえ、自分はやらないのに受け入れるのだから「図太いやつ」と言われても仕方ないですよね。

その代わりという訳じゃありませんが、何かの日だからという行動はしなくても、突然何かをプレゼントしたいからという理由でプレゼントするという行動を執ることはあります。
今回はそんな父へのプレゼントのお話です。


治療院院長の父

僕の父親は、川根本町の千頭駅近くで「遠藤鍼灸マッサージ治療院」という治療院の院長をしています。まあ院長謙従業員(つまりひとりで経営)しているのですが、ひとりで浜松に出ていってしまうようなどうしようもない息子とは違い、全盲の身でありながら地域の方々の健康維持のために仕事をしています。

父の楽しみ

そんな父の楽しみの1つに「ラジオ」があります。
ところが山間部の川根本町では、AMはかろうじて入るものの、夜にはノイズも多く、FMに関してはステレオ受信は厳しいという環境です。
そんな父がNHKで「らじるらじる」というスマホアプリの紹介を耳にしたらしく、興味をいだいていました。

とは言っても全盲で新たな操作を覚えるのは面倒くさいという父に、タッチパネルのスマホを渡しても役に立ちません。でもスマホでなければラジオを再生できるアプリはありません。

電気屋さんになりたかった

えんじろうの子供の頃の夢の一つに「電気屋さんになって機械の使い方が判らず困っている人を助けてあげる」というのがあったのです。そんなえんじろうが持っている能力や知識は以下です。

  • スマートフォンを扱える

  • アプリを探し学ぶ意欲がある

    • ラジオ再生アプリの存在

    • Android操作を自動化するアプリの存在

    • Googleの高度な画像認識アプリの存在

    • 音声を喋る機能の存在

    • 音声を認識する機能の存在

  • スマホ本体の優れた能力

    • タッチ以外に物理ボタンがある

    • 高精細なカメラもある

    • 光センサーがある

  • 契約すれば通信ができる

ごちゃ混ぜにして煮込む

先ほどのスキルを全部つぎ込んだら思いついちゃったんです。全盲でも自力で操作して、ラジオが聞けるスマートフォンを。
それどころか他にもたくさんの能力を利用できるスマホになってしまいました。

できちゃった!

完成したプレゼントスマホの写真

スマホ本体はえんじろうが初めて電話用に購入した結構前の機種。非常に性能が良かったので、未だに電池もものすごく持ち、動作もキビキビです。
そんなスマホに誤タッチを防ぐためにパネル全面を覆える手帳型ケースを用意しました。
見えない人にとって天敵とも言えるタッチパネルは、こちらで調整するとき以外は封印!

プレゼントスマホを開いた写真

結構格好良く仕上がったのですが、機能上個のケースの手前右上の部分をハサミで切って、前面カメラが剥き出しにできるようにしました。ちょっと格好悪くなっちゃったけど、それで実現する機能がありますからどうしても。

出来上がった機能

頭をフル回転させると、なんとかなるものなのだなあと思いました。なんとかなるまでやめないしつこさの賜だともいえますが(笑)
このスマホでできることを列挙すると。

  • 日付と時刻と電池残量の読み上げ

    • 充電状態の案内

  • 10局以上のラジオ放送の再生

  • Googleアシスタントの起動(1問1答)

  • カメラで読み取った文字を読み上げる

  • カメラに映る色をお知らせする

  • 部屋の明るさを教えてくれる

  • 遠隔受信機能

    • 指示を受け位置情報を提供

    • 指示を受けカメラ映像を提供

    • Skypeの自動受話

    • 外出と帰宅の自動報告

    • 保守用遠隔操作アプリの常駐

最後の方は安否確認機能というか、ある意味監視機能でもありますから、もちろん父には渡した際に同意してもらっていますよ。特に太字にした機能は、実際かなり重宝しています。
文字ばっかり続くのも何なので、完成直後のプレゼントしたスマホの動作を動画でご覧下さい。

双方幸せなプレゼント

旅行組んだりするのも得意じゃないし、なにか高価なものをプレゼントする財産もない。そしてやるなら父も自分も共に楽しくなるようなものでなければ、プレゼントの意味は無いような気がしていました。
そうして行き着いたのが自分の得意な分野で、相手が喜べるようなことを実現させること。もちろん自分も楽しいこと。

ラジオは今までチューナーで入っていなかった遠い地域のものも含めて10局以上選局できるようにしました。これはかなり好評でした。
以外だったのはGoogleアシスタントを面白がって使ってくれたところ。最近はお天気以外にもいろいろ試してくれるようになりました。
ラジオチューナー化が目的でしたが、カメラの存在から思いついた文字と色の認識機能は、実現させるのに様々なアプリを混ぜ合わせているので苦戦しました。でも届いた封書の確認や靴下の左右の色合わせなど、視覚障害者のバリアの多くをある程度開放してくれています。

そして管理するえんじろう側としては、父の外出や帰宅を自動で知らせてくれる機能が安心感を覚えます。
Skypeビデオ通話で離れているところから父の「目の代わり」をすることもできるのもポイント。見えていればビデオ通話のボタン1つで切り替えられることでも、それを自動化するのはちょっと大変なのです。でもこの「ちょっと見てくれ」に対応できることは本当に文明の利器です。

多少おかしくなっても、遠隔操作アプリでスマホ自体を操作することもできるようにしています。この遠隔操作アプリがおかしくなったらお手上げなのですけどね(笑)

笑顔が嬉しい

作り上げたスマホには視覚障害者用音声支援ツール「目代わりボイス」と名付けました。こういうの結構好きです。

更にできることを増やしたり、思うように動作しなかったり、関連するアプリのアップデートの影響で、動作が変になるたびにメンテナンスをして、バージョンも上がっています。もちろん自称で好き勝手に名乗っているバージョンですけどね(笑)
改良するのも楽しい、それを使う父の笑顔も嬉しい。自分らしい「親孝行っぽいこと」が見つけられて良かったなあと、ほっとするのでした。

まとめ

最後に今回の体験で得たことをまとめてみます。
粘り強くしつこく挑み続けてでも叶えたい思いがあれば、例え断片的な知識の組み合わせでもそれっぽいことを現実化することは可能。そしてスマホには様々なことを実現できるだけのポテンシャルが秘められている。
無理そうに見えることが実現できたときの喜びは、相当大きい。そしてその結果が他人の役に立つことだと、完成後のモチベーションや達成感の継続時間も伸びることを学びました。

利用したアプリは、また改めてアプリ紹介記事を作ろうかなと思いますが、中核をなしたアプリは「MacroDroid」というアプリになります。

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