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シード期の資金調達のしおり

ANOBAKAというベンチャーキャピタルでアソシエイトをしていると申します。

以前、ピッチ資料に入れた方がいいことのツイートにかなり反響があったのでシード期の資金調達までに準備すべきことについてまとめました!

起業準備中の方やシードVCやエンジェルにこれから初めて回り始める方を記事の対象と考えています!
そんなことわかってるよ!という方も多いと思いますが温かい目でみていただけると幸いです。
※この記事の内容はあくまで個人的な見解になります。

最低限準備すること

-ピッチ資料
-面談するVCについてリサーチ
-エンジニアを見つける(またはプログラミングを身に付ける)
-共同創業者がいる場合、創業者間契約を結ぶ
-法人登記&法人口座を開設する
-ファイナンスの知識を付ける

この5つは基本的に押さえておいたほうが良いかと思います。
それぞれ深掘りして解説していきます。

ピッチ資料

ピッチ資料に関しては先ほどのツイートに挙げた項目+αを詰めてきてください!

-チームと代表紹介
-ビジョン
-解決する課題
-ソリューションの紹介
-ビジネスモデル&マネタイズ
-マーケティング戦略
-市場&競合分析
-直近と中長期のスケジュール
-数値計画(あれば)
-希望するバリュエーションと調達金額
-調達したキャッシュの使い道

意外と自己紹介がスライドにない方が多いので過去の経歴やスキルなどに関して記入することを勧めます。

また調達したキャッシュの使い道も書いた方が良いと思います。単純にに直近の計画をみたいという意味もありますし、シード期のバリュエーションは調達金額の10倍前後になることが多いので資金の使い方が明確であれば希望するバリュエーションにロジックを持たせることが可能です。

ピッチ資料には入れなくていいですがファイナンスする際に資本政策表を求められるので作っておきましょう。


では、なぜ上記の内容が必要かを具体的に説明します。


-チームと代表紹介
 -チームと代表が提供するサービスおよび事業領域をやり切れるポテンシャルがあるかを見ています。原体験があるかないかは必須ではなく、その事業領域に深い知見があるか?またはやり切れるメンバー構成になっているかを見ています。

-ビジョン
-解決する課題
-ソリューションの紹介

 -ビジョンからのブレイクダウンで解決する課題とソリューションが正しいかを見ています。課題とソリューションがあっていてもビジョンと違う場合や、解決する課題とビジョンがあっていてもソリューションが違う場合があり、上記の3点の整合性やストーリー性などを確認しています。

-ビジネスモデル&マネタイズ
-マーケティング戦略
-市場&競合分析

 -ここでは実際にスケールした場合成立するのか?や、ターゲットとなるユーザーの獲得が本当にできるのか?なぜ今この市場で挑戦するのか?競合との優位性をどう築いていくのかを気にして見ています。特に大手などが参入した時にどう競合優勢を築くのか?や本当にビジネスとして成立するのかを見ています。価格面での優位性はダンピングしやすく、あまり強い競合優位ではないので、技術面や機能面、ユーザーの囲い込みやネットワーク効果などで競合優位を築くことが大切です。

競合優位性に関してはDCMベンチャーズの原さんの記事が非常に参考にな流のでぜひ読んでみてください。


-直近と中長期のスケジュール
-数値計画(あれば)

 -中長期のスケジュールでは戦略と実際のスケジュール内容の整合性を見ています。戦略と実行内容の乖離があれば問題ですが、ここは一緒に考えていくところなので、しっかりとしたスケジュールがあればそんなに大きな問題ではないです。ただ、今後投資する上で戦略が非常に大事になっており、そこが投資家と違うと投資が見送られたりするケースがあるので、どこまでが許容できて、できないか?を明確にしていると良いと思います。

数値計画に関してはPMF前のシード期であれば不確実性が高いのでマストではないとは思いますが、堅い領域のビジネスであれば作ると良いかと思います。見ているポイントとしてはエコノミクスが成立するか、CPAは合っているのか、ペイバックピリオドはどれぐらいか、どのタイミングで黒転するのかなどです。


-希望するバリュエーションと調達金額
-調達したキャッシュの使い道

 -ここでは投資したお金の使い道の整合性を確認しています。人件費にお金がかかるのか?またはマーケティング費用にお金がかかるのか?などできるだけ細かく使用用途が明確になっていると良いです。

またシード期の資金調達は入り口であって、次回ファイナンス時の目標KPIや調達額も想定できていると中長期の戦略をしっかり持てている印象があります。

シード期であれば、プロダクトがないことがあるので、その際はユーザーインタビューなどの定量的なデータがあるとさらに良いと思います
仮説ベースでの提案も良いですが、仮説が間違っていた場合ピポットなどになる可能性が高く、できるだけ仮説をユーザーインタビューなどで裏付けした状態であると好ましいです。

面談するVCについてリサーチ

VCに関しては最低限下記の2点調べましょう。

1.投資領域&投資ラウンド
2.ポートフォリオ

VCによっては得意とする投資領域と投資ラウンドがあります。

例えばANOBAKAだとほぼ全ての領域に投資しており、投資のラウンドはシード期を中心にプレシード、アーリーステージのスタートアップにも投資しています。

面談にきても投資領域や希望するバリュエーションが全く合わないというケースがまれにあるので、VCに連絡する前に確認しましょう。

またVCの過去の投資先(ポートフォリオ)に関しても事前にチェックしましょう。

VCは基本的に過去に投資したスタートアップと競合するスタートアップには投資しません。そうなると面談にきても検討することが難しいので、気をつけてください!


エンジニアをチームに入れる

まれに受託開発を依頼しようとしている方もいますが特にシード期はプロダクトチームは内製化すべきだと考えています。理由は挙げればきりがないですが、

スタートアップはどれだけ改善サイクルを早められるかが重要なので受託で開発するとプロダクトの改善サイクルが相当遅くなります。またシード期はキャッシュが少ないので受託開発を依頼するのは現実的にかなり厳しいと思われます。

実際にいくつかのアクセラレーションプログラムやVCは投資の条件にチームにエンジニアがいることを挙げています。

例:Code Republic

また、経営者はある程度、開発の知識があった方が良いと思っています。

サービス開発に問題が発生した時にどうすれば解決できるかが不透明だとなかなかサービス開発が進まないので最低限の開発知識が必要です。
CTOと良好な関係が築けている場合は良いですが、やはり良識のある範囲で開発知識やUI・UXデザインを勉強するのが良いと思います。


創業者間契約を結ぶ

共同創業者がいる場合は創業者間契約を結びましょう。
これをしないと共同創業者が辞めた際に株を時価で買い取るリスクが発生し揉める可能性があります。

創業者が二人で、辞める際は取得時の株価で残った創業者が買い取る創業者関契約を結びたい場合AZXさんの雛形が公開されているので使ってもいいかもしれません。

こちらの雛形を使う際の注意点はこちらにまとまっています。

リバース・べスティング条項(退職者の株を他の共同創業者が買い取れる権利があるが、勤務年数に応じてやめる時に保持したままにして良い株式比率が上がる条項)をいれた方が良いと言う意見もありますが、

個人的にはスタートアップの創業者で数百万円を個人単位で払える人は多くない、かつ共同創業者もそれなりのリスクを考えて初めているはずなので未上場株はイグジットしない限り価値はないと割り切り、やめる際は取得時の株価で片方が買い取る契約にした方が良いと思います。

共同創業は成功する確率が高いというデータもありますが、株式の比率で揉めたり、サービスの方向で揉める可能性も高くなります。

そうならないように創業者間株主契約も大切ですが、お互いの担当領域や意見が分かれた場合どうするか?どちらが最終的な決定権を持つか?などしっかり話し合って認識をすり合わせることが大切です。

常識的に考えてこう!みたいな考え方はやめて経営に関する重要事項であれば徹底的に話し合って、基準を決めることをオススメします。


法人登記&法人口座を開設する

法人登記と法人口座を開設しましょう。こちらは出資が決まってからでも構いませんが、両方で最低でも1ヶ月弱かかるのでなるべく早く動き始めることをオススメします。口座は基本的には審査が通りやすいネットバンキングで問題ないと思います。こちらは当たり前なので割愛します。

ファイナンスの知識を付ける

ファイナンスの知識が最低限ないとVCとバリュエーションや調達金額の交渉ができずに後々後悔する可能性があります。

定番ですがこの二冊は必読です。

またファイナンスではないですがこちらも必読です。

ここら辺を読んで基礎を身につけたらあとはnoteに色々有益な記事があるので読み込みましょう。


Appendix-VCとの繋がり方

繋がり方は大体三つあります。

1.知り合いに紹介してもらう
2.SNSでDMを送る
3.ホームページからお問い合わせを送る

個人的な印象だと1と2が会える確率が高いと思います。
ちなみに同じVCでもキャピタリストによって興味領域があったりするのでSNSの投稿の傾向などもチェックもすると良いかも。

DMやお問い合わせをするときは最低限自己紹介と事業のスライドを同封することをオススメします。情報流出を気にする方がたまにいらっしゃいますが、VCは信用第一なので他のスタートアップに情報を漏らされるということは基本的に心配する必要はないかと思います。


VCの選び方や繋がり方の詳細についてはSTRIVEの古城さんのnoteが参考になります。

Appendix-具体的なVCとの面談

面談の流れは
起業家によるピッチ資料を使ったプレゼン→担当との質疑応答
になることが多いです。

意外とあるのが1時間の面談で50分間ピッチしてしまい、ディスカッションできずお互いに消化不良...みたいなことになると勿体無いので1時間の面談であれば半分以下の時間を目安にピッチ資料を作ってくると良いかと思います。

また面談では以下のことがよく聞かれるのでしっかりと考えて回答できるようにしておくと良いと思います。

・事業戦略の理由と競合優位性について
・なぜ自分たち(経営者含めたチーム)が該当領域で勝てるのか?

これをなぜ聞くかというと、特殊なサービスではない限り類似のサービスはたくさんあると思っています。その中で成功するには起業家xサービスの2軸の掛け算が大切でその2つに納得感があることが重要です。
どちらか一方が欠けている場合は投資を見送る場合が多く、この2軸をしっかりと意識してプレゼンすることが大切です。

最後に宣伝失礼します。

KVPではシード気の起業家を対象としたアクセラレーションプログラム

KVP DASHの第1期参加企業を募集しています!(締め切りは今週金曜日4/17まで)

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などのメリットがあるのでぜひ参加希望の方は申し込みください。

応募フォーム ↓
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またKVPでは毎週水曜日の10時〜13時に壁打ちアワーを開催しています
こちらは企業準備中やアイデア段階の方でも壁打ち可能ですのでお待ちしております。

質問等ございましたら僕のtwitterにDMいただけるとお答えできます。
ご覧いただきありがとうございました!

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