2年前のあのシーンをできるだけ多く経験できる人生を送りたいんだ
2年前の初夏、おぼつかない足取りの息子の手を引いて、近所の大きなお寺までお散歩に出かけた。
育休中だった私は、心地よい半径500mの世界で生きていた。歩き始めたばかりの息子と散歩に出かけるのが毎日の楽しみだった。お昼過ぎの太陽がちょうど真上に来る時間帯、初夏とはいえ日差しは強い。お寺の境内の中心には樹齢ウン百年の大きな木が、まるで寺の主役は自分かのように堂々と立っている。私たちは日差しから逃れるようにその木陰へ入った。
木の周りを囲むように石が並べられていて、息子は石の隙間にアリの巣を見つけてそれに夢中だ。
石に腰掛けふと上を見上げると、大きな木の、その豊かな葉の隙間からまばゆい光が差し込んでいた。あれだけ強かった日差しが緑の屋根のおかげで優しい光に変わる。
目の前にはアリに夢中の息子、広々とした境内には初夏の心地よい風が吹いていた。
あまりに心地よくて、気持ちよくて、幸せじゃない要素がひとつもなくて、ちょっと泣きそうになってしまった。今でも鮮明に、あの風を、あの光を思い出す。「私はこのシーンをできるだけ多く経験できる人生を歩みたい」と思った。
あなたの理想の状態は?
なぜこの瞬間が私の琴線に触れたのか分解してみた。分解してみると、私の欲求に気がついた。
気心の知れた人だけに囲まれて、心乱されることなく生活したい
心地よい天候の日には外で過ごしたい
家族(夫・子ども)の側にいたい
そりゃ四六時中子どもと一緒にいたいかと言われたらそうでもないし(息抜きの時間は欲しい)、たまに非日常を味わうような刺激も欲しい。世間から羨まれる収入も肩書きだって憧れる。
でもそれはあくまでスパイスであって、私にとっての幸せのベースはこういう地味なことなのかな。この一見地味な幸せの瞬間をたくさん積み重ねることが私にとっての幸せな人生なのかなと思うようになったのだ。
理想の生活はどうしたら手に入る?
理想の生活を手に入るために会社と交渉してみた。
・・と言ったら大袈裟だけど、組織再編のタイミングで上司との面談の場が設けられたのだ。そのときに私が伝えたのは、次の3つ。
勤務時間を朝型にシフトしたい。
多くの人と関わる仕事よりも、一人でもくもくと手を動かす仕事の割合を増やしたい
仕事の中で英語を使いたい
まず、夕飯・風呂・就寝、と必要最低限の子どもの世話だけして全力疾走のように駆け抜ける夜時間を変えたかった。公園で息子と遊ぶ時間を、休日だけの特別行事にしたくなかったのだ。だから勤務時間を早め、早く仕事を終えるようにしたいと思った。
朝型勤務にするならば、自分が不在の時間に周りに迷惑をかけることのないよう、ひとりで黙々と作業をするような仕事がいいと伝えた。
本音を言うと、協調性を求められる場面が少し苦手だったのだ。今までチームプレーが求められる仕事が多くて、「時間をかけてでも120%の仕上がりを追求したい人」に巻き込まれることがあった。”少ない時間でいかに生産性高く働くか”が最重要事項の子持ち社員にとってこのチームの雰囲気は地味にストレスで、個人プレーの仕事の割合を増やせば働きやすくなるかなと思ったのだ。
そしてこの私の3つの願いは、びっくり全て通った。たまたまポジションが空いていたところにうまくハマったのだろう。言ってみるもんだなと思った。
会社への執着が強かった頃は、自分の要求をこんなに素直に伝えることができなかった。上司によく思われたいという気持ちがあったから。「会社で評価されなければ」という執着を手放すと、会社で素の自分を出すことが怖くなくなる。
「素の自分を出す」というのは無駄に自分のプライベートを晒すという意味ではなく、周囲から求められる姿を演じるのをやめるという意味。今までは上司や会社が喜ぶ社員像を演じてしまっていたけれど、最近はなんならちょっと変わり者扱いされるくらいが居心地いいかなとすら思っている。
執着を手放せたのは、産育休という物理的に会社と距離ができたこと、その期間に開始した複業や社外サークルのおかげなのかな。
最近の生活、あれ、私理想の生活できてるかも?
私は今、子どもを15時半には保育園に迎えにいく生活をしている。ほぼリモートで、勤務時間は8時〜15時の時短だ。たまに寝かしつけの後に夜残業することはあっても15時業務終了は死守している。保育園の帰り道はまだ当然明るくて、時には公園へ寄り道したりして、ゆっくり散歩しながら帰宅する。
そう、冒頭のあのシーンを毎日再現できている。
「ママ、今日もお迎え一番のりだね!」そう喜んでくれる3歳の息子に会える瞬間は、毎日新鮮で毎日とびきり嬉しい。
これから何する?どう生きる?
最近新しくアサインされた個人プレーの仕事は、幸いにも働き方だけでなく業務内容も割と気に入っている。でも、この3つを満たせる状態ならば、仕事内容はそんなに重視しなくてもいいのかもしれない。
気心の知れた人だけに囲まれて、心乱されることなく生活したい。
心地よい天候の日には外で過ごしたい
家族(夫・子ども)の側にいたい
心地よい生活のベースを固めながら、複業や進学、海外短期移住など、興味があることをスパイスとして程よく取り入れられる生活を目指していこうかな。
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