#58 知っているけれど引き出しからでてこない 氵(さんずい)

「"サンズイ"のつく漢字を、これから3分で思いつく限り書いてみて」

以前実家に帰省した時に、お母さんに紙とペンを渡された。

サンズイ??さんずいのつく漢字って、溢れるほどあるだろう。そんなのいっぱいかけちゃうよ。

突然の挑戦状に、余裕で勝てると感じながら挑んだ私だったが

の1文字を書いてから、アタマが真っ白になった。

この世からすべてのサンズイが消えた。というかもともとサンズイのつく漢字なんて地球上に存在しなかったんじゃないか、と本気で思うくらいには何も浮かばなくなった。

湖、瀬、、

絞り出してこの2文字。

嘘みたいだろう。きっとそんなわけない、と思うだろう。私もついさっきまでそちら側の人間だったからよくわかる。ほんとうだ。

わかっている事を言語化できない。聞かれた時に本当に思ってることを上手く伝えられない。咄嗟の反応で出てこず、あとからああすればよかった、あの選択肢もあったと冷静になる。ひとりで反省会をする。

もどかしさが、似ている。

虚しくもたった3文字で3分が終了した。なにか出てくるかもしれない、と氵をひたすら書いた紙。新しいサンズイのつく漢字を生み出したりもしてしまった。

答え合わせをされた時、隠れていたサンズイたちが一斉ににょきにょき顔を出してきた。

「さんずいは水に関係するから、海〜湖になって、、そこで漁師さんが漁をして、、、淀んで、、、、沼もあって、、、」


ひとつづきに考えるといいんだって

海の絵を描きながら、母は言った。

人は、知っていてもいざというとき引き出しからソレを出せないらしい。

専門的なソレをいつでも出すことができる人が、プロフェッショナルと呼ばれて、プロフェッショナルに出演するのだろう。

専門的ではなくても、思ったことをパッと引き出しから取り出して言葉にできる人は、人としてプロフェッショナルなのだろうな。人生2回目だろう!というような印象を受ける人は、きっとこういう人だ。

訓練が必要だ。まずはサンズイへの再挑戦からか。

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