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#83 お別れの前のフレンチトースト
彼とお別れした日、お別れの話になるちょっと前の時間のこと。
その時間は彼に予定があって別行動をしていた。
13時前。再集合は15時。
お昼ご飯を食べていなかったので絶対にどこかで美味しいものを食べたいな〜と、街のアーケードをフラフラしていた。
なのに、特に食べたいものが見つからない。お腹は空いているのに。
どうしてだろうか、ジャンクなものは違うし、定食もなんか違う。ドラッグストアに入って涼みながら、立ち止まってグーグルマップを見つめる。
たくさんお店があるけれど、うーん、どれもピンと来ないな。ピンと来ないのにとりあえず入るというのはたべもの側にも失礼だし、自分の心もあんまり満たされない。
再びフラフラ。
ん、パン屋!!
なんだか、軽井沢で見たことがあるような雰囲気の、赤い外国チックな壁に、外に出ている丸いテーブルと脚の細い椅子。
お店の前には看板が出ていて、
「フレンチトースト」
これだ。
食べたいものがなくてお腹が空いているとき。妥協せず探し求めれば一目惚れのようにグッとくる瞬間がある。それがこれだ。
店内には本を読んでいるおじさんや新聞を読む老夫婦。これまた良い。混みすぎず、落ち着いた感じが更に良い。ポイントが高い。
注文を済ませ、運ばれてきたのがこちら。
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付け込まれすぎず、メープルを染み込ませたら丁度よくなる柔らかさ。少しだけ硬さが残っているところもなんだか老舗感があってすきだ。
クリームを丁寧に添えて口に運ぶともう、幸福。本体は甘すぎず、クリームとメープルの手助けによりちょうど良い甘さになる。
1枚でお腹がいっぱいだ。もう、心も満たされた。
お別れ前のフレンチトーストになるとは思っていなかったけれど、これもいつか思い出すもののひとつになるのだろう。
お別れ前にフレンチトーストを食べている確率って結構レアなのではないか。お別れ前のフレンチトーストという曲、秋元康さんに頼んだら作詞してくれそうだな。
孤独のグルメのオープニングでは、こんな言葉が流れる。
時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。
この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高の癒し、と言えるのである。
私はこのオープニングがすきで毎回飛ばさずに聞いてしまう。初めて聞いたとき、現代人に平等に与えられた最高の癒し、というのは本当にその通りだと深く頷いた。
私が出会いにいけばそこに居てくれるのだから。そして探せば探すほどすきが増え、更新されていく。
これからも私にとっての癒しに、積極的に出会いにいこう。そしてその度つかの間自分勝手になり、自由になるのだ。
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