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人が頑張らない時に頑張るのが好きな話。

小学生の頃から、人が頑張らない時に頑張るのが好きだった。
それは、例えば、雨の日だったり学校の掃除の時間の終わりかけの時間だったりだ。
なんでかというと、多分、競争率が低いからだ。

学生時代の部活では、小雨が降ってる日や天気が悪い日の外周の走り込みはみんなやる気がない。だけど私は、小雨が降ってる時こそ外周が楽しかった。みんながやる気で満ちている時は競争が自然発生して、どうしたって勝てない。だけど、みんながやる気がない時は、競争なんて気にせず、ノルマの分を小雨の中、目を薄く瞑って顔面に雨粒を受けながら、傘をさしたりささなかったりする下校生の間を走っていくのだ。
掃除の時間も、大体みんな好きじゃない。ましてや終了5分前くらいの終わりかけの時間だと、みんなは適当に切り上げて早く掃除用具を片付けたくて堪らない。そんな時、私は隅っこの方の取りきれてない塵を拾ったり、教室の白いモルタルの壁の黒ずみを消しゴムで擦ってみたり、蛇口の根本の水気をきっちり雑巾で吸い取ったりするのだ。そして、みんながバタバタ掃除用具をロッカーに戻して休み時間を楽しみに校庭に走っていく中で、静かに掃除ロッカーを開け、乱雑にかけられた道具を整理する。そして、静かになった手洗い場で手を洗い、静かになった教室に戻り、陽の光がさすベランダに目をやり、校庭から聞こえてくるみんなの遊んでいる声やボールの弾む音を聴くのだ。

小雨が降る外周も、教室の隅の塵も、昼休みロッカーの中も、みんなみんな競争率が低い。というか競争が発生しない。だから、誰かと比較されることもない。運が良ければ、「ちょっと良いことしている人」「ちょっと頑張っている人」になれる。みんながしていることはみんなが見ている。でもみんながしていない競争率
の低い場所は、みんなは見ていない。

思えば、みんなが見ていない場所で、自分だけが満足しながら何かをやれる事は、けっこう気持ちの良いことだったのだ。

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