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【翻訳メモ】INSIGHTS FOR THE JOURNEY

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■全体目次 https://note.com/enflow/n/n51b86f9d3e39 ■「ティール組織」の著者であるFrederic Laloux によるINSIGHTS… もっと読む
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【4.2.9】ピラミッド組織の中のセルフマネジメント(Self-managing teams within a hierarchical organization)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/429.html ■翻訳メモ 現場レベルに限って「セルフマネジメント」を採用している組織があります。たとえば、工場における「セルフマネジメント」チームなどがそれにあたります。しかし、それ以外の部門は、引き続きピラミッドの形態で運営されている組織です。このような形式は一種のハイブリッドモデルです。これは「セルフマネジメント」の形態の中でも、本来の美しいシフトからは程遠いものですが、ある意味合理的で、かつ工夫が施せる余地も持っています。彼らは「セルフマネジメント」で働いているといっても、その上にはマネージャーがいます。その状態で全体はきちんと機能しているのです。今回はそういったパターンについて、話していきたいと思います。 こういった形態の組織が「セルフマネジメント」の機能を発揮するためには、チームの自律性が鍵です。つまり、そこでいかに心理的オーナーシップが醸成されているかがポイントになってきます。マネージャーによって自律性や心理的オーナーシップを奪われないようにするにはどうしたらよいでしょうか。 チームがマネージャーなしでも機能していくことを考えるには、まず、マネージャーの役割に意識を向ける必要があります。それらの一つ一つを切り出していく必要があるわけです。マネージャーたちは、自分の仕事を書き出すことに恐れを持つかもしれません。なぜなら、「予約ドメイン」、もっと分かりやすく言えば、「既得権」ですが、それを奪われると思うからです。そういった「特権」は分担できませんが、それ以外の機能は、すべてチームで行うという考え方が必要になってきます。マネージャーと彼らが持つ「特権」との考察は、「セルフマネジメント」を導入する際には避けては通れないものです。マネージャーにとっても、それがなくなった後のことを考える時間が必要になってきます。それを行う際は、1人ででもコーチと一緒にでもかまいません。今までとこれからのことについて、整理し、理解を深めるプロセスが必要です。それと同時に、チームは、自分たちにできることは何か、そして、マネージャーに頼った方が良いと思うことは何かを話し合います。そして、次の場面で両者が相対します。それぞれ話し合った内容を持ち寄ることで実りのある会話が生まれてきます。そしてその会話が両者の境界を明確にしていきます。このプロセスを経て、チームは自律性を手に入れることになります。「セルフマネジメント」に向かって進んで行くことが可能になるわけです。マネージャーの承認が必要という世界から、マネージャー自身も飛び出す決断をしたということです。これが、1つ目のチェックポイントです。 2つ目は、マネージャーの影響度合いを下げるという考え方です。私なりに表現すると、マネージャーにとっての、「意味のある美しい貢献」という形になります。もっと現実的な言い方をすると、「チームに干渉しないようにマネージャーを常に忙しい状態にしておくには」という言い方になります。そうするには2つのやり方があります。1つは、マネージャーの管理領域を大きくすることです。これは、いままでのチームがずっとやってきたことです。マネージャーの担当するチームが2つ、5つ、10と拡大することで彼は自然と仕事に忙殺され始めます。シフト制を採用する工場の場合は少し違っていて、マネージャーなしで稼働するシフトがでてきます。この場合、マネージャーをすべてのシフト割り当て、忙殺に追い込むのは不可能です。マネージャーはコントロールを手放し、チームを信頼するしかなくなってきます。マネージャーの業務範囲を拡大させるといっても無限というわけではありませんから。2番目のやり方は、マネージャーに組織の目的(パーパス)に沿った意味のあるプロジェクトに多くの時間を費やしてもらうことです。イノベーションやビジネス開発、あるいは、その他のあらゆる種類の事柄に取り組んでもらいます。そうすると、彼らは人事や財務といったサポート部門とのやり取りができなくなってきます。そういったやり取りは、結局チームに戻って来るのですが、厄介ごとを持ち込まれると、今度はチームが本来の機能を失なってしまいます。マネージャーに活躍領域を増やしてもらうのはいいですが、チームの機能は維持できるよう、気をつけなければなりません。 3番目は、心理的オーナーシップを、どうやってマネージャーからチームに移し替えるかという問題です。従来、チームに対して責任を持ち、結果が悪いとなれば積極介入するのはマネージャーの仕事でした。チームメンバーがそれぞれに心理的オーナーシップを持つことがいかに重要かは、以前の「自己修正」についてのビデオ(4.1.11-14、4.2.4など)をご覧ください。必要になってくるのは、自らの行動がもたらした結果に、チームメンバーが直接さらされることでした。それが喜ばれる仕事なのか喜ばれない仕事なのか、誇りや苦痛といったフィードバックを得られるようにすることでした。つまり、それは、仕事の結果に対して、マネージャーをはじめ、他の誰からも守られなくなったことを意味しました。今まではマネージャーがやってくれていたかもしれませんが、これからは、チームのメンバーがクライアントや社内各部門と直接連絡を取る必要が出てきました。チームの外部接続の担当者になるわけですが、私だったら、とても楽しんでやれると思います。 4番目は、マネージャーとチームメンバーの両方が、新しい役割を通して成長し、以前にはなかった新たな能力と行動を身につけるにはどうすれがよいかという問題です。元マネージャーが受けるトレーニングもこれに含まれます。仮に、今、5つのチームを管理している人であっても、今後求められるものは以前とはまったく異なってきます。個別にトレーニングを受けるか、他のマネージャーと一緒に受けるかは、どちらが正解ということはありません。ただ、後者の場合、学びの過程にあるすべての元マネージャーが、自らが今後メンターになって行くことへの喜びと苦痛について、話し合う場が必要になってきます。メンターとはチームをサポートする存在で、従来の独裁的なマネージャーとはまったく違います。チームについても同様にトレーニングが必要になります。チームメンバーは、突然にして結果に対し責任を負うという状況にさらされます。トレーニングを受けることで、多くの成長課題が生まれます。それを克服していく過程で、新しいコミュニケーションスタイルが確立していきます。それぞれのメンバーはメンバー同士のフィードバックを行う必要があるため、そのためのトレーニングも必要になってきます。ヒエラルキー型の組織の中に、セルフマネジメントチームが存在している例は、現実には、いくらでもあります。 自律は責任を伴うものであると、それを知る必要のあるセルフマネジメントチームと、そのチームを肯定しながら責任を負うマネージャーとの間に新たな関係性が構築されることになります。この動画がその一助となれば幸いです。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.2.8】 セルフマネジメントチームの立ち上がり時に必要なこと(Launching self-managing teams)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL ■翻訳メモ 前回、セルフマネジメントチームが立ち上がる段階で大事なことは、「セルフマネジメント」に対する学習や理解を促すために、チームにサポートを提供することだと話しました。まったくサポートを付けないなど、極端なやり方はいけないことも話しました。極端というのは、自分たちだけで理解するようにと放任したり、マニュアル通りの導入プログラムがあると間違った情報を与えたりといったことを指しました。特に後者の場合、導入要綱みたいなものをなぞってなんとなく分かったつもりになっても、それでは当事者意識は芽生えてこないと言いました。また、ビデオの最後の部分で、チームをサポートするための4つの方法を紹介しました。今回は、その方法についてより具体的に話していきたいと思います。 チームが必要とする最初のサポートは、適切な会話をしていくための文脈作りです。具体的には、会議を招集して、「セルフマネジメント」の支えになるトピックについて話し合います。この議論を経ることで、チームは、「セルフマネジメント」を理解できるようになってきます。そういうチームはまさに「成熟したチーム」です。彼らは自らが「セルフマネジメント」の実施者であるという認識を強く持つようになります。そうすれば、会議も自律的に運営できるようになります。話すトピックが明確だと、別の会議体へ発展していくこともあります。ただ、すべてのチームがそのようにすぐに「成熟」するわけではありません。チームによっては、会議のフォーマットを用意してあげることも必要になってきます。 「セルフマネジメント」を始めるにあたって重要になってくるトピックとは何かを紹介していきます。まず1つ目は、「チームの成果」です。これを早い段階で話し合うことはとても重要です。具体的には、自分たちの仕事に常に誇りを持った状態を維持するにはどうすればよいかということを話し合います。労働量の管理も問題になってくるかもしれません。その上で、パフォーマンスの健全なレベルについて話し合いをおこないます。それをいかに定義するかはすべてチームの中の問題です。それは一日の仕事で終わらせるファイルの数でもいいしですし、仕事のクオリティといったものでも問題ありません。自分たちにとっての、「いい仕事」の定義は、自分たちにしか分かりません。自分たちの「いい仕事」を、どうやったら組織の外に証明できるかという議論であってもいいと思います。以前の「自己修正システム」についてのビデオをご覧になっていたら、それを思い出してください。もしまだなら必ず見るようにしてください。それは、「セルフマネジメント」において、絶対に必要な考え方です。達成したい基準やチームの規範を自分たちで定義して持っておかないと、セルフマネジメントは機能しようがないからです。 また、チームのリソースについても、チーム内で話し合うことがとても重要です。「セルフマネジメント」を始める段階で、必要なリソースを尋ねた時、中には、「私たちのチームには、必要なリソースはすべて揃っています」と答える人がいます。それはそれでいいのですが、実際には、もっと多くのデータと情報が必要という場合がほとんどです。かつてのマネージャーより多くの情報に触れようと思ったら、日次や週次のデータが必要になります。ということは、瞬時にそのデータにアクセスできるよう、どうしてもIT部門のサポートが必要になってきます。ほかにも人事機能がチーム内にあったなら、などという考えも出てくるでしょう。様々な機能をチーム内に置いておきたいという考えになると、購買担当が必要とか、人事担当者が欲しいといった具体的な議論が始まります。本当に必要なリソースは何かという話し合いを経て、チームの持つリソースが決まってきます。 次は、チームのルールです。つまり、チームが機能していくためには、チームのルールが必要だということです。以前のビデオをご覧いただいていたら、「セルフマネジメントに向かう、5つの最重要なプロセス(4.1.16)」の回を思い出してください。そのビデオを見れば、チームが定義すべきポイントが分かると思います。意思決定の方法、役割の所在、紛争の解決方法、情報へのアクセス、そして、パフォーマンス管理の5つです。個人やチームが、このような基準を定義していなかったらどんなことが起きるか、容易に想像ができると思います。つまり、チームにとって、共通のルールを持つということはとても重要なことなのです。特に初期段階で話し合わなければならないのは、チームの行きたい方向と、チーム内での運用ルールです。会話を進めながら深まっていった知識をもとに定義していくのです。例えば、こういう会話が想定されます。「基準を合わせることはとても重要です。そして、これは、やりながら学んでいくのです。そのことを踏まえて、話し合いからルールを作っていくのです」と。こういう会話をしておけば、チームには、今すぐでなく、2~3カ月先までに考えておけばいいことが伝わります。そして、2~3ヵ月後に再度集まって話し合います。このような考える時間があると、今すぐに完璧な状態を作り上げないといけないというマインドから解放されます。2~3カ月以内に運用できるようになっていればよいのですから。これを繰り返すと、必要に応じて、定義を変更したり、改善したりすることもできるようになってきます。 ここからが、2つ目のサポートです。2つ目のサポートは「円滑化」です。すべてのチームにあてはまるわけではありませんが、チームによっては、外部のファシリテーターの存在は、大きな価値をもたらします。ファシリテーターは、本来、組織内部の人であっても、組織外部の人であっても構わないものです。しかし、会話を継続させ、相互間の関係性を豊かにし、小さな声を拾い上げることができるのは、組織の外の人間だけです。私の場合、最初はわざと大げさなくらいファシリテーションします。私がいなくなったあと、チームだけでもできるようになるためです。 3つ目のサポートは「専門的な知識」です。意思決定の方法は、特にサポートが必要な領域です。合意形成や意思決定の方法は、すでに「セルフマネジメント」に取り組んでいる先輩組織のやり方が大いに参考になるはずです。アドバイスプロセスなどの合意形成のメカニズムは、その方法を知っているだけで、とても役に立つはずです。それと、そういったシステムを一から作っていくのはとても大変ということもあります。ここではアドバイスプロセスのやり方を事細かく説明はしませんが、その存在を知っているだけでも価値があります。アドバイスプロセスのやり方も、様々な方法があります。それはとても興味深いことであるとともに、重要なことでもあります。それらのフォーマットの多くは、文章等の形で公開されています。また、それらの活用をサポートしてくれる豊富な知識を持ったコーチやファシリテーターもいます。ただし、それは、必ずしも外部の人である必要はありません。スキルさえあれば組織内の人であってもよいのです。サポーターにかんしては、フォーマットの数だけいると言ったほうがよいでしょう。 4つ目は「トレーニング」です。メンバーが「セルフマネジメント」に慣れてくるとともに、傾聴や自己肯定にかんするスキルが必要になってくるでしょう。それ他は、フィードバックスキルがあります。メンバーの関係性といった複雑な問題を解決することを考えると紛争解決スキルも必要です。経験上、これらのトレーニングを始めるベストのタイミングは、実際起きた問題への対処が必要になった時期になります。前もってメンバーを訓練している組織もありますが、早すぎするのも考え物です。実際の出来事がイメージできないまま行うと、知識だけが先行してしまう弊害に見舞われます。将来体験することを先にトレーニングしてもあまり効果がないということです。それよりも、実際に身近で起こって、何とかしたいと思ってトレーニングに臨む方が、効果は上がります。トレーニングの導入には適切なタイミングがあるということです。いま述べた4つのサポートは、ほとんどのチームにとって必要なものです。それが必要となった時点で、提供できるようにしておくことが肝心です。 チームのサポートには、もう1つとても大事なポイントがあります。それはどのチームから始めるかということです。理想は、本当に必要としている人が受けられると状態です。そういう視点で、本当に始めたがっているのはどのチームか探してみてください。ベルギーの運輸省の例は、実に多くの学びがあります。彼らのセルフマネジメント化は実に多くの素晴らしいアイデアを生み出しました。例えば、出勤するのは週に1日か2日でよいという制度です。交通渋滞に巻き込まれることがなくなったおかげで、1日の生活時間が有効に使えるようになりました。自分の時間を自分で管理できるようになったことも「セルフマネジメント」の大きなメリットです。時間で縛られることがなくなり、1日何時間働いたかなど、チェックの必要がなくなりました。また、「セルフマネジメント」で働くか、そうでないかも、自分で選択できるようになりました。仕事の成果の価値をどこに置くか、本人が決められるようになったのです。セルフマネジメントチームが活動を始める段階で、チームの価値をどこに置くか話し合うことは重要だと言いました。ベルギーの運輸省の例を考えると、それがどれほど重要なことか、よく分かってもらえたと思います。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.2.7】よくある落とし穴:「いますぐやろう!」(A common pitfall: "Just do it"!")

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/427.html ■翻訳メモ 「ようやくセルフマネジメントチームが出来上がったぞ!早速スタートを切っていこう!」という威勢のよさだけでは、たちまち多くの問題を引き起こしてしまいます。トップがこの言葉を発すると、チームは、ただ、「自由にやっていい」というメッセージだと受け取ってしまいがちです。これこそが失敗のレシピと呼ばれるものです。「Just do it!」といったスローガンや、「先に進むだけだ」というメッセージは120人や150人といった小規模な組織においてよく使われる言葉です。メッセージ自体はシンプルで分かりやすそうですが、1万人を超えるような大きな組織になってくれば特に、「自発的に自己組織化しなさい」というメッセージになって伝わり、結局、何をやったいいのか、誰一人分からないという事態に陥ります。「ただ、やれ」「何も考えずにやれ」という特効薬は、だいたい、最初の1回しか効かないものです。 はじめに極端な例を挙げましたが、次の例も、やや極端な部類に入るかもしれません。「セルフマネジメント」をいかに主体的に捉えられるかという問題です。主導する側が、「セルフマネジメントの展開についてはすべてデザインされています。トレーニングの際に詳細に教えますのでご安心ください。きちんと指導します。気付いた頃には、セルフマネジメントができるようになっているはずです」というメッセージを出すことは誤りだということです。ただこのケースはまれで、実際は、とにかく自分で考えて、自分で何とかしろ、というメッセージが発せられることの方が圧倒的に多いと思います。 そうなってしまう原因として、私は2つ理由があると思っています。1つ目は、ただ単に「セルフマネジメント」の概念を理解できていないということがあります。その場合、典型的なメッセージは次のようになります。「セルフマネジメントのやり方は教えることができない。だから、自分で考える必要がある。そういう意味では、自己責任だ。基本的に自分で考えなければならない。私はあなたにサポートを提供できる。ただ、あなたが理解できるように手を差し伸べることはできても、あなたを何とかする義務は負っていない。そういう意味でもあなたは独り立ちを求められているのだ」と。 次の2つ目は、ストレートに言うと、いわゆる「怠惰」に責任を押し付けてしまう場合です。「あなたたちは、セルフマネジメントに向かうと自分たちで決めたのではなかったのですか?なのに、どうすればいいのか分からないとはどういう意味ですか?百歩譲って、それが本当に分からないとしても、自分たちで解決するしかないですよね。むしろ私は、あなたがたの怠慢さに本当に驚いています。組織をセルフマネジメントに向かわせたいと真剣に考えているのなら、それを理解する必要があるはずです。フレデリックの動画シリーズを見たり、セルフマネジメントに関するあらゆる本を読んだりする必要がありますよね。こんな急進的な変革を行っているのに、ぼーっと取り組んでいる人があまりに多いのには驚きです。まるでよく内容も理解せずに、会社の重要なデータを中国のクライドに預けてしまうようなものです。通常はそれをやる前には、それについて十分に勉強をしておくでしょう。 セルフマネジメントも同じじゃないですか」、と。 これらがうまくいかない時の典型パターンです。こういった状態のまま、「君は自由だ」「これからは自己組織化でいくぞ」と上から言われたら、この注射の持つ効果は、もうよくお判りでしょう。そこで、うまくいかない組織は「セルフマネジメントの勉強会」と称した会議体を作ります。ただ、その会議はまったく機能しません。そこに参加しているは、例えば、機械のオペレーターなら、ただ機械を動かすのが仕事と思っている人です。会計士やマーケティングのコピーライターであっても、彼らは、ただ自分の仕事をしたいと思っているだけの人たちです。そんな彼らに向かって、いきなり、組織開発の専門家になりなさい。リーダーシップの専門家になりなさいと言っても、それは彼らの望んだことではありません。そして、何回かの、この不毛な会議を経た後、メンバーは、自らの最善の仕事とは、クライアントに仕事を提供することだけであると再認識します。そして、もうこんな非生産的な会議は止めようということになります。そうすると、誰ともなく、「セルフマネジメント」は馬鹿げた考えだという意見が出るようになり、元のヒエラルキーの世界に戻ってしまうのです。 つまり、これが本当のリスクだと言っているのです。「セルフマネジメント」への移行期には、チームに対して、「セルフマネジメント」への理解を促すサポートが必要です。問題は、2つの極性のどこに真ん中を定めるかです。サポートの量や粒度を決めるということです。組織内のさまざまなチームが、さまざまな種類のサポートを必要としています。チームごとにそれぞれの座標が必要になってくるでしょう。チームが必要としているサポートの量も一様ではありません。そして、それを知るにはそれぞれのチームを注意深く観察し、彼らの求めるものを洞察する以外に方法はありません。サポートする側が意識してサポートの量を少なくした場合、気付いてもらえない場合もあるでしょう。また、その反対に、とても感謝される場合もあるでしょう。そうなってくると、彼らの視界は「セルフマネジメント」に入ってきています。その意味をもっと理解しようとし、適切な会議を企画し、適切な専門知識を身につけていくことになります。そうなれば素晴らしいですが、全部が全部、このようにうまくいくわけではありません。何も起こらないチームには、もっと手をかけて、「セルフマネジメント」に向けた会話が始まる場所を作ってあげることが必要です。 チームを旅に送り出すために必要となってくるサポートは少なくとも4種類あります。1つ目は、物事が起こるための適切な状況、適切なミーティング、適切な会話を生み出すためのサポートです。その次は、ファシリテーターの存在です。会話の場から出た発言を見逃さない力量を持った人の存在が必要です。3番目は専門家です。チームがあらぬ方向に行かぬよう、正しい知識を持った人が重要です。4番目は、「セルフマネジメント」に向かうのに必要となってくるトレーニングの提供です。 次のビデオでは、チームが必要とするサポートの実例について詳しく説明します。今回の動画を終了するにあたり、どんなチームにどのレベルのサポートが適切かという宿題を出しておくので、次の動画を見る前に考えておいてください。サポートをまったく提供しない、または提供しすぎるという極端な状況を作ってはいけません。サポートとは、彼らの言葉に耳を傾けるということです。それが機能すれば、チームがあらぬ方向に行ってしまうケースは回避できるでしょう。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.2.6】どの階層から始めるか?(At what level of the pyramid do we start?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/426.html ■翻訳メモ 今回のビデオは、このシリーズを始めるときに作っておいた2つビデオの、いわゆる“つなぎ”の役割で、いつもよりは短めになっています。「セルフマネジメント」をどうやって始めるかというのが、このチャプターの大きなテーマですが、そこそこの規模のある組織の場合だと、どの層から始めるのが正解かという質問は本当によく聞きます。今回はそのポイントについて話します。 通常は、「どうしてもセルフマネジメントがやりたい」というエネルギーにあふれた人がいる場所から始めるというのが基本です。しかし、組織の規模が大きくなってくると、エネルギーの大きさよりも、階層のどのレベルから始めていくかのほうが重要になってくることがあります。つまり、影響力が大きい組織のトップから始めるべきか、それとも実際の仕事をよく知っている最前線、つまり組織の下層から始めるかという問題です。答えは、それらのどちらでもありません。最初に手をつけるのは、組織の真ん中、つまり中間管理職からなのです。彼らこそ、この変革によって最も立場が脅かされる存在だからです。 私が尊敬している女性で、NVC(nonviolent communication)出身のミッキー・キャッシュトンは、「コンバージェント・ファシリテーション」という、私の考えにピッタリはまるツールを開発しました。それを使えば、組織で何が起こっているのか、変化が手に取るように分かります。通常、意思決定は上流で起こり、情報は下流からくるものです。中間層は、それらの意思決定や情報をいかに整えていくかが仕事になってきます。ほとんどの組織では、直接人が携わる取引など、サービスやモノが動く仕事は最前線で行われています。つまり、この取り組みよる目に見える変化はそこで起きます。以前のビデオでお話ししたような、顧客と直接やり取りできて、責任を感じ取ることのできる「部門をまたいだチーム」をどのよう作り上げるかは、「セルフマネジメント」への移行期において最重要視される変化です。そこで編成された「セルフマネジメントチーム」は、その場で多くの仕事をこなすだけでなく、人事機能やそれ以外の役割もその場で担うことを可能にします。それらは、「セルフマネジメント」を始めてこそ分かる価値のひとつです。 しかし、その一方で、組織の上層部にも目を向ける必要があります。なぜなら、トップが発する情報の矛盾が組織を麻痺させているという現状があり、それを変革していくことが、この取り組みの最終目標でもあるからです。いくらあなたが、「セルフマネジメント」への移行に尽力しても、上層部の人間がついてくることができず、伝統的なやり方に固執して逆戻りすれば、周りは何を信じればよいのか分からなくなり、混乱に陥ってしまいます。 もう1つ、上層部が重要だというのは、変革を進めるあなたにとって、味方になってくれるのがそのポジションだということです。あなたにいくらバイタリティーがあったとしても、1日は24時間しかありません。出来るだけ仲間を集め、多くの人がかかわった方がいいに決まっています。つまり、上層部を巻き込んでしまうのが最も得策ということです。上層部にどうかかわればいいのかは、これまでのビデオで何度かお話しました。 では、中間管理職はどうなるか。もし、あなたの組織が大きな組織ならば、階層は「コントロールの範囲」が基になって構成されているはずです。つまり、10~15人の部下に対し、1人のマネージャーがいるという構造になっています。そして、10~15人のマネージャーの上にはさらにそれらのマネージャーを束ねる人がいる。しかし、そこまでいけば実務はほとんどないはずです。「セルフマネジメント」では、まず、そこのポジションが真っ先になくなります。実際に「セルフマネジメント」が始まると、チームが自主的に動けるようになったことに満足して、トップマネジメントは、この新しい働き方を受け入れるようになります。そうなれば、中間管理職は本当に何もすることがなくなります。彼らは、かつてのしがらみからは解放され、新しい視点で、組織の目的に貢献できる、より意義のある仕事を探さなければならなくなります。 ただし、これは、あくまで、一つの考え方です。ただ、ほとんどの組織ではこのとおりになると思います。構造的な変革は上下で始まり、最後にたいへんな思いをするのが中間管理職というわけです。とはいえ、実際には、そこまで単純には進まないものです。現場では、多種多様なことが起こります。おそらく、国や地域にかかわらず、どこにおいても、変革の中心は、「セルフマネジメント」を本当に理解している人たちです。事実上、彼らは、上・中・下、いずれの階層にも働きかけるはずです。ただし、その中でも最も危機に瀕するのが中間管理職であるということです。覚えておいてもらいたいことがあるのですが、それは、両極から始まったものに対しては、その中間に位置するものは必ず大きな影響を受け、変化にさらされるということです。これはどこでも適用される一般的な法則です。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.2.5】スタートの前に、パーパスとビジョンは明確にしておきましょう(Clarify the purpose and vision before you start?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/425.html ■翻訳メモ 「セルフマネジメント」に向かう前に、組織の「目的」と「ビジョン」を、もう一度明確にする必要があるように思います。以前の体制では、ヒエラルキーという重い構造がその代わりを果たしていました。あたかも、すべてが予定調和にあることが最高の状態であるかのように、マネージャーは、起こったことのすべてを知ろうとし、起こったことすべてをコントロールしようとしました。 「セルフマネジメント」では、調整ごとの多くは、ある種、自然発生的に、かつ、組織的に行われます。それは、誰もが組織の「目的」と数年後の「ビジョン」を理解しているゆえんです。ですので、組織の「目的」が何なのか、自分たちはどこに向かっているのか、といった問いかけが各個人の中で明確になっていなければ、「セルフマネジメント」は成立しないのです。組織やチームは、常に、自分たちはどこへ向かっているのかという問いにさらされ続けるわけです。 「目的」と「ビジョン」が明確になっているか質問したら、多くの人は「ノー」と答えるでしょう。きっと「イエス」は少数派なはずです。なぜなら、ほとんどの組織では、調整業務はマネージャーに頼っているからです。もしかしたら、マネージャーは、「目的」と「ビジョン」をある程度認識できているかもしれません。でも、多くはそうではないでしょう。そうならば、「セルフマネジメント」に本格的に取り組む前に、「目的」とは何か、「ビジョン」とは何かを共有するための話し合う時間が必要になってきます。 いま、「目的(パーパス)」という言葉を使っていますが、組織の「目的」には、2つのレベルが存在します。今回扱わない方の「目的」、つまり、「存在目的(evolutionary purpose)」については、この動画シリーズの後半部分で別パートにまとめるつもりです。そこでは、コンサルタントたちが机上で行う昔ながらのやり方ではなく、多くのメンバーを巻き込み、「セルフマネジメント」の方法を使って「ビジョン」を掲げる理由、つまり組織の「存在目的」を定義していく予定です。それをするには組織全体で行う必要があります。また、組織内のすべてのチームで行います。私たちの本当の「存在目的」は何であり、それがどのようにより「広い目的」に貢献するのか、チームごとに話し合います。まず、今後数年間の「ビジョン」を定め、それに忠実であるためにはどの方向に進んで行くのか、チーム単位で会話を深めていきます。 今回、「目的(パーパス)」の定義については、これ以上詳しくはやりません。「目的」や「ビジョン」を定義するなら、私よりはるかに強力なスキルを持った人がたくさんいます。「ミッション」、「ビジョン」と「目的」の違いをきちんと定義したい人もいるかもしれませんが、個人的にはあまり興味がありません。アドバイスを送るとしたら、高尚かつ“でたらめ”な言葉からは距離を置きましょう、ということです。というのも、言葉に縛られてしまうと、実用性を欠いてしまうからです。例えば、「目的」の定義が、「私たちは世界の繁栄を構築します」だったとしたら、当然、世界が繁栄した状態とは何?となってきますよね。私たちが探求するのは、実用的で実務的なものでなければなりません。つまり、それがその当人にとって、いかに重要な基準となっているかが大切なのです。ミッション-ビジョン-バリューなどは、それを使う人がそれぞれの階層のつながりに矛盾を感じていれば、何の意味もなさないのです。 私が、ホラクラシーワンで、最初に見つけたメカニズムの1つは、極性について話すことでした。つまり、両極端な例を挙げ、その対立構造について話すと、多くの人が興味を持つことに気付いたのです。例えば、このような言い方をします。「おそらく、近い将来、私たちはそれらをそれぞれに克服していくことになるでしょう。まず、私たちは、イノベーションよりも標準化を優先してきました。ただし、今はまさに、さまざまな方法でイノベーションが起きてきています。その意味では、私たちはイノベーションを標準化しているのです。あるいはその逆で、私たちがやってきたのはイノベーションではなく、標準化だけだったのかもしれません。だったら、やはり、これからはまた、既成概念にとらわれず、イノベーションを起こす必要があるのだと思います」、と。このケースは、標準化よりもイノベーションを優先するという趣旨の発言ですが、将来に渡っても、それが一方向というわけでもありません。この、「イノベーション」と「標準化」が二律背反の関係にあることはご理解いただけたと思います。ですので、「新しい顧客」よりも「既存の顧客」を優先するといった場合もこの「極性」は発生します。まあ、既存の顧客が優良顧客ばかりであるというのはあまりないと思いますが。他には、デスクトップアプリよりもモバイルアプリに投資するといったものもそれに該当するでしょう。 ただ、「目的」の決定権は、「現実」が持っているということを忘れてはいけません。なので、「目的」は考えて決めるというようなものでもないのです。しかし、そうは言っても、優先順位は必要です。私たちは常に標準化よりもイノベーションを優先すべきです。その逆はありません、といった順位のことです。ところで、私は妻と一緒にあるグループに関わっていたのですが、ある時、個々の例外を認めることよりも全体のルールを守ることのほうが優先だとはっきりと感じた瞬間がありました。そのグループでは、もっともな理由がある場合は例外を認めていました。しかし、それが認められるまでには、ものすごく時間がかかったのです。その間、待っている人は何が正しいのか基準がなくなりました。そんなことがあって、やはり、守るべきルールは必要だと感じたのです。当然、ルールで運営するというのは、ティールの文脈にも当てはまります。 繰り返しになりますが、極性を使って向こう数年間の「ビジョン」を明確にする方法は、1つの素晴らしい方法だと思います。では再度、確認しますが、あなたの組織の「目的」と「ビジョン」、そして各チームの「目的」と「ビジョン」は、「セルフマネジメント」に向けて動きだしてもよいくらいに明確になっているでしょうか。もちろん、それらを定めるための時間を設けるのは良いことです。それができれば、あなたの組織は、マネージャーの手を借りずとも、自ら進んで行動できるようになっているはずです。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1