【4.2.5】スタートの前に、パーパスとビジョンは明確にしておきましょう(Clarify the purpose and vision before you start?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/425.html

■翻訳メモ
「セルフマネジメント」に向かう前に、組織の「目的」と「ビジョン」を、もう一度明確にする必要があるように思います。以前の体制では、ヒエラルキーという重い構造がその代わりを果たしていました。あたかも、すべてが予定調和にあることが最高の状態であるかのように、マネージャーは、起こったことのすべてを知ろうとし、起こったことすべてをコントロールしようとしました。

「セルフマネジメント」では、調整ごとの多くは、ある種、自然発生的に、かつ、組織的に行われます。それは、誰もが組織の「目的」と数年後の「ビジョン」を理解しているゆえんです。ですので、組織の「目的」が何なのか、自分たちはどこに向かっているのか、といった問いかけが各個人の中で明確になっていなければ、「セルフマネジメント」は成立しないのです。組織やチームは、常に、自分たちはどこへ向かっているのかという問いにさらされ続けるわけです。

「目的」と「ビジョン」が明確になっているか質問したら、多くの人は「ノー」と答えるでしょう。きっと「イエス」は少数派なはずです。なぜなら、ほとんどの組織では、調整業務はマネージャーに頼っているからです。もしかしたら、マネージャーは、「目的」と「ビジョン」をある程度認識できているかもしれません。でも、多くはそうではないでしょう。そうならば、「セルフマネジメント」に本格的に取り組む前に、「目的」とは何か、「ビジョン」とは何かを共有するための話し合う時間が必要になってきます。

いま、「目的(パーパス)」という言葉を使っていますが、組織の「目的」には、2つのレベルが存在します。今回扱わない方の「目的」、つまり、「存在目的(evolutionary purpose)」については、この動画シリーズの後半部分で別パートにまとめるつもりです。そこでは、コンサルタントたちが机上で行う昔ながらのやり方ではなく、多くのメンバーを巻き込み、「セルフマネジメント」の方法を使って「ビジョン」を掲げる理由、つまり組織の「存在目的」を定義していく予定です。それをするには組織全体で行う必要があります。また、組織内のすべてのチームで行います。私たちの本当の「存在目的」は何であり、それがどのようにより「広い目的」に貢献するのか、チームごとに話し合います。まず、今後数年間の「ビジョン」を定め、それに忠実であるためにはどの方向に進んで行くのか、チーム単位で会話を深めていきます。

今回、「目的(パーパス)」の定義については、これ以上詳しくはやりません。「目的」や「ビジョン」を定義するなら、私よりはるかに強力なスキルを持った人がたくさんいます。「ミッション」、「ビジョン」と「目的」の違いをきちんと定義したい人もいるかもしれませんが、個人的にはあまり興味がありません。アドバイスを送るとしたら、高尚かつ“でたらめ”な言葉からは距離を置きましょう、ということです。というのも、言葉に縛られてしまうと、実用性を欠いてしまうからです。例えば、「目的」の定義が、「私たちは世界の繁栄を構築します」だったとしたら、当然、世界が繁栄した状態とは何?となってきますよね。私たちが探求するのは、実用的で実務的なものでなければなりません。つまり、それがその当人にとって、いかに重要な基準となっているかが大切なのです。ミッション-ビジョン-バリューなどは、それを使う人がそれぞれの階層のつながりに矛盾を感じていれば、何の意味もなさないのです。

私が、ホラクラシーワンで、最初に見つけたメカニズムの1つは、極性について話すことでした。つまり、両極端な例を挙げ、その対立構造について話すと、多くの人が興味を持つことに気付いたのです。例えば、このような言い方をします。「おそらく、近い将来、私たちはそれらをそれぞれに克服していくことになるでしょう。まず、私たちは、イノベーションよりも標準化を優先してきました。ただし、今はまさに、さまざまな方法でイノベーションが起きてきています。その意味では、私たちはイノベーションを標準化しているのです。あるいはその逆で、私たちがやってきたのはイノベーションではなく、標準化だけだったのかもしれません。だったら、やはり、これからはまた、既成概念にとらわれず、イノベーションを起こす必要があるのだと思います」、と。このケースは、標準化よりもイノベーションを優先するという趣旨の発言ですが、将来に渡っても、それが一方向というわけでもありません。この、「イノベーション」と「標準化」が二律背反の関係にあることはご理解いただけたと思います。ですので、「新しい顧客」よりも「既存の顧客」を優先するといった場合もこの「極性」は発生します。まあ、既存の顧客が優良顧客ばかりであるというのはあまりないと思いますが。他には、デスクトップアプリよりもモバイルアプリに投資するといったものもそれに該当するでしょう。

ただ、「目的」の決定権は、「現実」が持っているということを忘れてはいけません。なので、「目的」は考えて決めるというようなものでもないのです。しかし、そうは言っても、優先順位は必要です。私たちは常に標準化よりもイノベーションを優先すべきです。その逆はありません、といった順位のことです。ところで、私は妻と一緒にあるグループに関わっていたのですが、ある時、個々の例外を認めることよりも全体のルールを守ることのほうが優先だとはっきりと感じた瞬間がありました。そのグループでは、もっともな理由がある場合は例外を認めていました。しかし、それが認められるまでには、ものすごく時間がかかったのです。その間、待っている人は何が正しいのか基準がなくなりました。そんなことがあって、やはり、守るべきルールは必要だと感じたのです。当然、ルールで運営するというのは、ティールの文脈にも当てはまります。

繰り返しになりますが、極性を使って向こう数年間の「ビジョン」を明確にする方法は、1つの素晴らしい方法だと思います。では再度、確認しますが、あなたの組織の「目的」と「ビジョン」、そして各チームの「目的」と「ビジョン」は、「セルフマネジメント」に向けて動きだしてもよいくらいに明確になっているでしょうか。もちろん、それらを定めるための時間を設けるのは良いことです。それができれば、あなたの組織は、マネージャーの手を借りずとも、自ら進んで行動できるようになっているはずです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。