【4.2.9】ピラミッド組織の中のセルフマネジメント(Self-managing teams within a hierarchical organization)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/429.html

■翻訳メモ
現場レベルに限って「セルフマネジメント」を採用している組織があります。たとえば、工場における「セルフマネジメント」チームなどがそれにあたります。しかし、それ以外の部門は、引き続きピラミッドの形態で運営されている組織です。このような形式は一種のハイブリッドモデルです。これは「セルフマネジメント」の形態の中でも、本来の美しいシフトからは程遠いものですが、ある意味合理的で、かつ工夫が施せる余地も持っています。彼らは「セルフマネジメント」で働いているといっても、その上にはマネージャーがいます。その状態で全体はきちんと機能しているのです。今回はそういったパターンについて、話していきたいと思います。

こういった形態の組織が「セルフマネジメント」の機能を発揮するためには、チームの自律性が鍵です。つまり、そこでいかに心理的オーナーシップが醸成されているかがポイントになってきます。マネージャーによって自律性や心理的オーナーシップを奪われないようにするにはどうしたらよいでしょうか。

チームがマネージャーなしでも機能していくことを考えるには、まず、マネージャーの役割に意識を向ける必要があります。それらの一つ一つを切り出していく必要があるわけです。マネージャーたちは、自分の仕事を書き出すことに恐れを持つかもしれません。なぜなら、「予約ドメイン」、もっと分かりやすく言えば、「既得権」ですが、それを奪われると思うからです。そういった「特権」は分担できませんが、それ以外の機能は、すべてチームで行うという考え方が必要になってきます。マネージャーと彼らが持つ「特権」との考察は、「セルフマネジメント」を導入する際には避けては通れないものです。マネージャーにとっても、それがなくなった後のことを考える時間が必要になってきます。それを行う際は、1人ででもコーチと一緒にでもかまいません。今までとこれからのことについて、整理し、理解を深めるプロセスが必要です。それと同時に、チームは、自分たちにできることは何か、そして、マネージャーに頼った方が良いと思うことは何かを話し合います。そして、次の場面で両者が相対します。それぞれ話し合った内容を持ち寄ることで実りのある会話が生まれてきます。そしてその会話が両者の境界を明確にしていきます。このプロセスを経て、チームは自律性を手に入れることになります。「セルフマネジメント」に向かって進んで行くことが可能になるわけです。マネージャーの承認が必要という世界から、マネージャー自身も飛び出す決断をしたということです。これが、1つ目のチェックポイントです。

2つ目は、マネージャーの影響度合いを下げるという考え方です。私なりに表現すると、マネージャーにとっての、「意味のある美しい貢献」という形になります。もっと現実的な言い方をすると、「チームに干渉しないようにマネージャーを常に忙しい状態にしておくには」という言い方になります。そうするには2つのやり方があります。1つは、マネージャーの管理領域を大きくすることです。これは、いままでのチームがずっとやってきたことです。マネージャーの担当するチームが2つ、5つ、10と拡大することで彼は自然と仕事に忙殺され始めます。シフト制を採用する工場の場合は少し違っていて、マネージャーなしで稼働するシフトがでてきます。この場合、マネージャーをすべてのシフト割り当て、忙殺に追い込むのは不可能です。マネージャーはコントロールを手放し、チームを信頼するしかなくなってきます。マネージャーの業務範囲を拡大させるといっても無限というわけではありませんから。2番目のやり方は、マネージャーに組織の目的(パーパス)に沿った意味のあるプロジェクトに多くの時間を費やしてもらうことです。イノベーションやビジネス開発、あるいは、その他のあらゆる種類の事柄に取り組んでもらいます。そうすると、彼らは人事や財務といったサポート部門とのやり取りができなくなってきます。そういったやり取りは、結局チームに戻って来るのですが、厄介ごとを持ち込まれると、今度はチームが本来の機能を失なってしまいます。マネージャーに活躍領域を増やしてもらうのはいいですが、チームの機能は維持できるよう、気をつけなければなりません。

3番目は、心理的オーナーシップを、どうやってマネージャーからチームに移し替えるかという問題です。従来、チームに対して責任を持ち、結果が悪いとなれば積極介入するのはマネージャーの仕事でした。チームメンバーがそれぞれに心理的オーナーシップを持つことがいかに重要かは、以前の「自己修正」についてのビデオ(4.1.11-14、4.2.4など)をご覧ください。必要になってくるのは、自らの行動がもたらした結果に、チームメンバーが直接さらされることでした。それが喜ばれる仕事なのか喜ばれない仕事なのか、誇りや苦痛といったフィードバックを得られるようにすることでした。つまり、それは、仕事の結果に対して、マネージャーをはじめ、他の誰からも守られなくなったことを意味しました。今まではマネージャーがやってくれていたかもしれませんが、これからは、チームのメンバーがクライアントや社内各部門と直接連絡を取る必要が出てきました。チームの外部接続の担当者になるわけですが、私だったら、とても楽しんでやれると思います。

4番目は、マネージャーとチームメンバーの両方が、新しい役割を通して成長し、以前にはなかった新たな能力と行動を身につけるにはどうすれがよいかという問題です。元マネージャーが受けるトレーニングもこれに含まれます。仮に、今、5つのチームを管理している人であっても、今後求められるものは以前とはまったく異なってきます。個別にトレーニングを受けるか、他のマネージャーと一緒に受けるかは、どちらが正解ということはありません。ただ、後者の場合、学びの過程にあるすべての元マネージャーが、自らが今後メンターになって行くことへの喜びと苦痛について、話し合う場が必要になってきます。メンターとはチームをサポートする存在で、従来の独裁的なマネージャーとはまったく違います。チームについても同様にトレーニングが必要になります。チームメンバーは、突然にして結果に対し責任を負うという状況にさらされます。トレーニングを受けることで、多くの成長課題が生まれます。それを克服していく過程で、新しいコミュニケーションスタイルが確立していきます。それぞれのメンバーはメンバー同士のフィードバックを行う必要があるため、そのためのトレーニングも必要になってきます。ヒエラルキー型の組織の中に、セルフマネジメントチームが存在している例は、現実には、いくらでもあります。

自律は責任を伴うものであると、それを知る必要のあるセルフマネジメントチームと、そのチームを肯定しながら責任を負うマネージャーとの間に新たな関係性が構築されることになります。この動画がその一助となれば幸いです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。