【4.2.6】どの階層から始めるか?(At what level of the pyramid do we start?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/426.html

■翻訳メモ
今回のビデオは、このシリーズを始めるときに作っておいた2つビデオの、いわゆる“つなぎ”の役割で、いつもよりは短めになっています。「セルフマネジメント」をどうやって始めるかというのが、このチャプターの大きなテーマですが、そこそこの規模のある組織の場合だと、どの層から始めるのが正解かという質問は本当によく聞きます。今回はそのポイントについて話します。

通常は、「どうしてもセルフマネジメントがやりたい」というエネルギーにあふれた人がいる場所から始めるというのが基本です。しかし、組織の規模が大きくなってくると、エネルギーの大きさよりも、階層のどのレベルから始めていくかのほうが重要になってくることがあります。つまり、影響力が大きい組織のトップから始めるべきか、それとも実際の仕事をよく知っている最前線、つまり組織の下層から始めるかという問題です。答えは、それらのどちらでもありません。最初に手をつけるのは、組織の真ん中、つまり中間管理職からなのです。彼らこそ、この変革によって最も立場が脅かされる存在だからです。

私が尊敬している女性で、NVC(nonviolent communication)出身のミッキー・キャッシュトンは、「コンバージェント・ファシリテーション」という、私の考えにピッタリはまるツールを開発しました。それを使えば、組織で何が起こっているのか、変化が手に取るように分かります。通常、意思決定は上流で起こり、情報は下流からくるものです。中間層は、それらの意思決定や情報をいかに整えていくかが仕事になってきます。ほとんどの組織では、直接人が携わる取引など、サービスやモノが動く仕事は最前線で行われています。つまり、この取り組みよる目に見える変化はそこで起きます。以前のビデオでお話ししたような、顧客と直接やり取りできて、責任を感じ取ることのできる「部門をまたいだチーム」をどのよう作り上げるかは、「セルフマネジメント」への移行期において最重要視される変化です。そこで編成された「セルフマネジメントチーム」は、その場で多くの仕事をこなすだけでなく、人事機能やそれ以外の役割もその場で担うことを可能にします。それらは、「セルフマネジメント」を始めてこそ分かる価値のひとつです。

しかし、その一方で、組織の上層部にも目を向ける必要があります。なぜなら、トップが発する情報の矛盾が組織を麻痺させているという現状があり、それを変革していくことが、この取り組みの最終目標でもあるからです。いくらあなたが、「セルフマネジメント」への移行に尽力しても、上層部の人間がついてくることができず、伝統的なやり方に固執して逆戻りすれば、周りは何を信じればよいのか分からなくなり、混乱に陥ってしまいます。

もう1つ、上層部が重要だというのは、変革を進めるあなたにとって、味方になってくれるのがそのポジションだということです。あなたにいくらバイタリティーがあったとしても、1日は24時間しかありません。出来るだけ仲間を集め、多くの人がかかわった方がいいに決まっています。つまり、上層部を巻き込んでしまうのが最も得策ということです。上層部にどうかかわればいいのかは、これまでのビデオで何度かお話しました。

では、中間管理職はどうなるか。もし、あなたの組織が大きな組織ならば、階層は「コントロールの範囲」が基になって構成されているはずです。つまり、10~15人の部下に対し、1人のマネージャーがいるという構造になっています。そして、10~15人のマネージャーの上にはさらにそれらのマネージャーを束ねる人がいる。しかし、そこまでいけば実務はほとんどないはずです。「セルフマネジメント」では、まず、そこのポジションが真っ先になくなります。実際に「セルフマネジメント」が始まると、チームが自主的に動けるようになったことに満足して、トップマネジメントは、この新しい働き方を受け入れるようになります。そうなれば、中間管理職は本当に何もすることがなくなります。彼らは、かつてのしがらみからは解放され、新しい視点で、組織の目的に貢献できる、より意義のある仕事を探さなければならなくなります。

ただし、これは、あくまで、一つの考え方です。ただ、ほとんどの組織ではこのとおりになると思います。構造的な変革は上下で始まり、最後にたいへんな思いをするのが中間管理職というわけです。とはいえ、実際には、そこまで単純には進まないものです。現場では、多種多様なことが起こります。おそらく、国や地域にかかわらず、どこにおいても、変革の中心は、「セルフマネジメント」を本当に理解している人たちです。事実上、彼らは、上・中・下、いずれの階層にも働きかけるはずです。ただし、その中でも最も危機に瀕するのが中間管理職であるということです。覚えておいてもらいたいことがあるのですが、それは、両極から始まったものに対しては、その中間に位置するものは必ず大きな影響を受け、変化にさらされるということです。これはどこでも適用される一般的な法則です。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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