【4.2.8】 セルフマネジメントチームの立ち上がり時に必要なこと(Launching self-managing teams)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■翻訳メモ
前回、セルフマネジメントチームが立ち上がる段階で大事なことは、「セルフマネジメント」に対する学習や理解を促すために、チームにサポートを提供することだと話しました。まったくサポートを付けないなど、極端なやり方はいけないことも話しました。極端というのは、自分たちだけで理解するようにと放任したり、マニュアル通りの導入プログラムがあると間違った情報を与えたりといったことを指しました。特に後者の場合、導入要綱みたいなものをなぞってなんとなく分かったつもりになっても、それでは当事者意識は芽生えてこないと言いました。また、ビデオの最後の部分で、チームをサポートするための4つの方法を紹介しました。今回は、その方法についてより具体的に話していきたいと思います。

チームが必要とする最初のサポートは、適切な会話をしていくための文脈作りです。具体的には、会議を招集して、「セルフマネジメント」の支えになるトピックについて話し合います。この議論を経ることで、チームは、「セルフマネジメント」を理解できるようになってきます。そういうチームはまさに「成熟したチーム」です。彼らは自らが「セルフマネジメント」の実施者であるという認識を強く持つようになります。そうすれば、会議も自律的に運営できるようになります。話すトピックが明確だと、別の会議体へ発展していくこともあります。ただ、すべてのチームがそのようにすぐに「成熟」するわけではありません。チームによっては、会議のフォーマットを用意してあげることも必要になってきます。

「セルフマネジメント」を始めるにあたって重要になってくるトピックとは何かを紹介していきます。まず1つ目は、「チームの成果」です。これを早い段階で話し合うことはとても重要です。具体的には、自分たちの仕事に常に誇りを持った状態を維持するにはどうすればよいかということを話し合います。労働量の管理も問題になってくるかもしれません。その上で、パフォーマンスの健全なレベルについて話し合いをおこないます。それをいかに定義するかはすべてチームの中の問題です。それは一日の仕事で終わらせるファイルの数でもいいしですし、仕事のクオリティといったものでも問題ありません。自分たちにとっての、「いい仕事」の定義は、自分たちにしか分かりません。自分たちの「いい仕事」を、どうやったら組織の外に証明できるかという議論であってもいいと思います。以前の「自己修正システム」についてのビデオをご覧になっていたら、それを思い出してください。もしまだなら必ず見るようにしてください。それは、「セルフマネジメント」において、絶対に必要な考え方です。達成したい基準やチームの規範を自分たちで定義して持っておかないと、セルフマネジメントは機能しようがないからです。

また、チームのリソースについても、チーム内で話し合うことがとても重要です。「セルフマネジメント」を始める段階で、必要なリソースを尋ねた時、中には、「私たちのチームには、必要なリソースはすべて揃っています」と答える人がいます。それはそれでいいのですが、実際には、もっと多くのデータと情報が必要という場合がほとんどです。かつてのマネージャーより多くの情報に触れようと思ったら、日次や週次のデータが必要になります。ということは、瞬時にそのデータにアクセスできるよう、どうしてもIT部門のサポートが必要になってきます。ほかにも人事機能がチーム内にあったなら、などという考えも出てくるでしょう。様々な機能をチーム内に置いておきたいという考えになると、購買担当が必要とか、人事担当者が欲しいといった具体的な議論が始まります。本当に必要なリソースは何かという話し合いを経て、チームの持つリソースが決まってきます。

次は、チームのルールです。つまり、チームが機能していくためには、チームのルールが必要だということです。以前のビデオをご覧いただいていたら、「セルフマネジメントに向かう、5つの最重要なプロセス(4.1.16)」の回を思い出してください。そのビデオを見れば、チームが定義すべきポイントが分かると思います。意思決定の方法、役割の所在、紛争の解決方法、情報へのアクセス、そして、パフォーマンス管理の5つです。個人やチームが、このような基準を定義していなかったらどんなことが起きるか、容易に想像ができると思います。つまり、チームにとって、共通のルールを持つということはとても重要なことなのです。特に初期段階で話し合わなければならないのは、チームの行きたい方向と、チーム内での運用ルールです。会話を進めながら深まっていった知識をもとに定義していくのです。例えば、こういう会話が想定されます。「基準を合わせることはとても重要です。そして、これは、やりながら学んでいくのです。そのことを踏まえて、話し合いからルールを作っていくのです」と。こういう会話をしておけば、チームには、今すぐでなく、2~3カ月先までに考えておけばいいことが伝わります。そして、2~3ヵ月後に再度集まって話し合います。このような考える時間があると、今すぐに完璧な状態を作り上げないといけないというマインドから解放されます。2~3カ月以内に運用できるようになっていればよいのですから。これを繰り返すと、必要に応じて、定義を変更したり、改善したりすることもできるようになってきます。

ここからが、2つ目のサポートです。2つ目のサポートは「円滑化」です。すべてのチームにあてはまるわけではありませんが、チームによっては、外部のファシリテーターの存在は、大きな価値をもたらします。ファシリテーターは、本来、組織内部の人であっても、組織外部の人であっても構わないものです。しかし、会話を継続させ、相互間の関係性を豊かにし、小さな声を拾い上げることができるのは、組織の外の人間だけです。私の場合、最初はわざと大げさなくらいファシリテーションします。私がいなくなったあと、チームだけでもできるようになるためです。

3つ目のサポートは「専門的な知識」です。意思決定の方法は、特にサポートが必要な領域です。合意形成や意思決定の方法は、すでに「セルフマネジメント」に取り組んでいる先輩組織のやり方が大いに参考になるはずです。アドバイスプロセスなどの合意形成のメカニズムは、その方法を知っているだけで、とても役に立つはずです。それと、そういったシステムを一から作っていくのはとても大変ということもあります。ここではアドバイスプロセスのやり方を事細かく説明はしませんが、その存在を知っているだけでも価値があります。アドバイスプロセスのやり方も、様々な方法があります。それはとても興味深いことであるとともに、重要なことでもあります。それらのフォーマットの多くは、文章等の形で公開されています。また、それらの活用をサポートしてくれる豊富な知識を持ったコーチやファシリテーターもいます。ただし、それは、必ずしも外部の人である必要はありません。スキルさえあれば組織内の人であってもよいのです。サポーターにかんしては、フォーマットの数だけいると言ったほうがよいでしょう。

4つ目は「トレーニング」です。メンバーが「セルフマネジメント」に慣れてくるとともに、傾聴や自己肯定にかんするスキルが必要になってくるでしょう。それ他は、フィードバックスキルがあります。メンバーの関係性といった複雑な問題を解決することを考えると紛争解決スキルも必要です。経験上、これらのトレーニングを始めるベストのタイミングは、実際起きた問題への対処が必要になった時期になります。前もってメンバーを訓練している組織もありますが、早すぎするのも考え物です。実際の出来事がイメージできないまま行うと、知識だけが先行してしまう弊害に見舞われます。将来体験することを先にトレーニングしてもあまり効果がないということです。それよりも、実際に身近で起こって、何とかしたいと思ってトレーニングに臨む方が、効果は上がります。トレーニングの導入には適切なタイミングがあるということです。いま述べた4つのサポートは、ほとんどのチームにとって必要なものです。それが必要となった時点で、提供できるようにしておくことが肝心です。

チームのサポートには、もう1つとても大事なポイントがあります。それはどのチームから始めるかということです。理想は、本当に必要としている人が受けられると状態です。そういう視点で、本当に始めたがっているのはどのチームか探してみてください。ベルギーの運輸省の例は、実に多くの学びがあります。彼らのセルフマネジメント化は実に多くの素晴らしいアイデアを生み出しました。例えば、出勤するのは週に1日か2日でよいという制度です。交通渋滞に巻き込まれることがなくなったおかげで、1日の生活時間が有効に使えるようになりました。自分の時間を自分で管理できるようになったことも「セルフマネジメント」の大きなメリットです。時間で縛られることがなくなり、1日何時間働いたかなど、チェックの必要がなくなりました。また、「セルフマネジメント」で働くか、そうでないかも、自分で選択できるようになりました。仕事の成果の価値をどこに置くか、本人が決められるようになったのです。セルフマネジメントチームが活動を始める段階で、チームの価値をどこに置くか話し合うことは重要だと言いました。ベルギーの運輸省の例を考えると、それがどれほど重要なことか、よく分かってもらえたと思います。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。