風力発電 「荒唐無稽」な請願の採択と素通りする報道の問題 続き 

 先の記事で、宮城の色麻町議会で採択に至った風力発電事業計画の白紙撤回を迫る「荒唐無稽」な請願内容と、それには触れずに結果のみを報じるメディアの問題について書いた。より分かるように、請願に異議を唱えた議員の一人の昨年末の議会での発言も、ここに記しておく:

 13-18ページより抜粋:

○5番(河野 諭君) 12月会議ですね、トップバッターとして大綱3点、質問をさせていただきます。
<中略>
1つ目の質問は、風力発電について質問をさせていただきます。
今、日本では脱炭素社会を目指して様々な取組をしていますが、その一つが風力発電事業であります。本町においても、八森山で色麻と加美町を合わせて15から20基ほどの計画があります。この風力発電事業が町民の方にとって不利益になること、例えば、睡眠障害や健康被害などがあるようだったら、私も賛同できないと思っていましたので、現在、風力発電事業をしている自治体に確認を取りました。企業にも確認を取りました。
議員にも確認を取りました。そして分かったことは、風力と民家や牛舎が1キロ以上離れていたら、問題ないことが分かりました。本町はここに該当します。さらに、風力発電はやめたほうがいいと言っている先生の話も聞きました。1キロ以上風力から離れていても睡眠障害があると言っていたので、資料に載っている自治体に確認を取りました。そうしたら、昔はそういう苦情もありましたが、事業者が対応して今は何も問題なく、苦情も全くありませんと言っておりました。風力が駄目だよと言っている先生の話もですね、昔の話を出して今の話はしていないと、そういう現状が私の中では分かりました。そして、実際に石巻市の風力発電を見てきて、住民の方とも話をしてきました。学生からお父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんとたくさんの方と話をしてきました。何も問題ないよと全員が言っていました。石巻市で風力を悪く言う人はいないんじゃないかと言っておりました。逆に、風力発電ができてよかったと言っておりました。理由は、1つ目は夜はライトがつくようで、これがいい目印になるんだと。家を教えるのにすごく、教えやすくていいんだと。学生さんなんかはですね、風力を見ると風向きが分かってすごくいいですと。また、風が強いときは風力が止まるようでして、それを見てですね、すごく画期的ですごく勉強になりましたと言っておりました。一番言っていたのが、企業が自治体に毎年寄附をしてくれるし、各地区で祭りをやるときも支援をしてくれて、すごく助かっていますと言っておりました。私が、企業と住民の方がウィン・ウィンと捉えていいですかと聞いたら、そうですねと笑顔で答えてくれました。皆さんの笑顔を見てきて、私は色麻町にとって、町民の方にとって、この事業は不利益になるものではないなと感じてきましたので、この風力発電事業の計画は賛成という立場で質問をさせていただきます。
1つ目は、風力発電事業が始まった場合、町に1基当たり固定資産税は幾ら入ってくるのかお聞きします。

○議長(中山 哲君) 町長。
○町長(早坂利悦君) 河野 諭議員の質問に答えたいと思います。
前段、石巻の風力発電のことについて大分お話がありました。実際に、私もあそこのところには行ってきております。話も聞いております。今、河野議員が申し上げたような内容を私も見ました。ですから、地元の人たちについては何も問題はないと、そういうようなことも私も聞いております。
そういう中で、発電機1基当たりの固定資産税というお尋ねでありますが、これはですね、償却資産として取得価格、取得からの経過年数、耐用年数に応じた原価率などによって計算されることになります。そのために、発電機の取得価格によって固定資産税は異なりますし、また、取得からの年数が経過するごとに税額は減少するために一概に幾らということは言えませんが、例えば1基3億円ということにした場合に、事業期間20年間で約2,500万円の税収が見込まれるだろうというふうに思います。以上でございます。

○議長(中山 哲君) 河野 諭議員。
○5番(河野 諭君) 一概には言えないとして、例としては1基3億円とした場合、事業期間20年間で約2,500万円と。要は、仮に10基建った場合は2億5,000万円町に入ってきますよということは、これは非常にですね、町にとっては非常にメリットあることだと思いますし、町がメリットがあるということは町民の方にもメリットがあると、そのように私は思います。
次に、事業が始まった場合、町には固定資産税と、毎年事業者が寄附をしてくれるそうです。この財源を、例えば子育て支援や高齢者のタクシー利用助成の範囲の拡大など、住民サービスの向上に活用する考えはあるのか、お聞きします。

○議長(中山 哲君) 町長。
○町長(早坂利悦君) あくまでも、この寄附をしてくれた場合ということになるんでしょうが、例えば寄附をしてもらえばそういうようなことも使える可能性はなくはないのかなとは思いますが、まず税金のですね、この性格上どういうふうになるかということについての詳しい内容について、まず税務課長からちょっと答えをさせたいと思います。

○議長(中山 哲君) 税務課長。
○税務課長兼総合徴収対策室長(遠藤 洋君) お答えいたします。
まず、固定資産税について申し上げます。固定資産税につきましては、地方税法において、その使途が特に定められない普通税とされております。行政サービス全般に充てることのできる一般財源ということになりますので、何らかの事業に対する特定財源として用いることはできないため、この辺は御理解をお願いしたいと思います。以上でございます。

○議長(中山 哲君) 河野 諭議員。
○5番(河野 諭君) 特定財源として要することはなかなかできないということで、寄附のもらい方次第では可能だというふうには思います。
あとですね、本町で計画を立てているグリーンパワーインベストメントさんに、この間ちょっと連絡を取りまして、石巻市では、石巻市で事業をしている会社は各地区に寄附もしてくれるそうなんですが、祭りのあるときとか、グリーンパワーさんはどうなんですかねとお聞きしましたら、もちろんですと、そういったことまでしっかりとバックアップをしていきますと言っておりまして、もしですね、風力発電が始まった場合は、固定資産税も入ってくると、そして寄附も入ってくると。そして、各地区に、各地区が祭りをやるときなんかは、そういったところにもしっかりと支援をしてくれると言っておりまして、こういったですね、メリットは、私は本当に町民の方にとってもいいんではないのかなと私は思っております。
次にですね、本町の風力発電事業の計画は、民家と牛舎まで1キロ以上離れております。今、風力発電事業をしている自治体で、本町と同じ条件で被害者の会があり、現在も活動しているところはあるのかお聞きします。

○議長(中山 哲君) 町民生活課長。
○町民生活課長(今野和則君) お答えいたします。
まず、日本風力発電協会出典の資料によりますと、2021年末時点での都道府県別の導入実績では、全国で風力発電所の数は460か所、基数で言いますと2,569基となっております。全国各地の被害者の会につきまして国の地方機関等に確認いたしましたが、被害者の会などの任意団体についての公式な調査資料はなく、実態把握は難しい状況ということでございます。以上です。

○議長(中山 哲君) 河野 諭議員。
○5番(河野 諭君) 実態把握が難しいということなので、私がですね、約15ぐらいの自治体に確認を取りました。今現在風力発電をしている自治体、本町と同じ条件でというのをいろいろ探しながら確認を取りましたら、被害者の会どころか、問題になっている自治体は、私の調べた中では全くありませんでした。以前は問題になっている自治体もありましたが、事業者がしっかり対応して今は苦情もなく、全く何もありませんとのことでした。
今ですね、風力発電で問題になっているところは、私の調べではこういうところです。
1つ目が、ガイドラインができる前に建てた風力。風力と民家や牛舎が近過ぎて音がうるさいと。ほとんどこの問題になっているところはこういうところです。2つ目が、風力があり過ぎてこれ以上建ててほしくない、こういうところもあります。また、低周波で睡眠障害等があるというのは、検証はかなり難しいとは思いますが、もしあるとすれば、こういったとこだと私は思います。風力と民家が近過ぎるのと、町中に風力がある、この2つの条件が重なれば、もしかしたらあるかもしれませんが、本町はこういう条件には該当はしません。3つ目が、簡単に言うと悪徳業者で、音がうるさいといっても対応してくれない事業者、まれにあるそうですが、本町で事業計画を立てているグリーンパワーインベストメントさんに特別委員会で話を聞いたときに、騒音等で何かあったときは必ず対応しますと、これは絶対ですと、力強く副社長が言っておりました。私はですね、ほかの自治体でもしっかりと対応している業者でもありますし、信用していい事業者ではないのかなと、私個人的には思っております。少しですね、話は変わるんですが、女川町で原発が2024年に再稼働予定なんですが、女川町や石巻市では、再稼働反対の訴訟を今しています。宮城県でですね、私はちょっとおかしなことが起きてるんではないのかなと思います。電気は使いますと、電気は使うんだけども、原発は再稼働して駄目だし、風力も建てて駄目だって今やってるんです。
私はこれ、非常にこれは何か矛盾してるんではないのかなと思っておりまして、ただ、私の思いとしてはですね、1つの自治体に、これ負担といっていいかどうか分かりませんが、負担を負わせて、ほかは、私たちはそんなのは知りませんと。でも、電気はしっかりと使わせていただきますみたいなのは、こういうのは私的にはどういうものなのかなというふうに思いまして、私としては協力できることはしっかり協力すると。そして困ったときは助け合うと。私はそういったですね、色麻町であってほしいなと、私的には思っております。
今回の風力発電の計画は大規模ではありません。どちらかというと小規模だと私は思います。そして本町は、景観を売りにして観光につなげている自治体でもありません。
この風力発電事業は、町民の方にとって不利益になるものでは私はないなと思いますが、これはぜひ前向きに私は考えて進むべきだと思いますが、町長の考えをお聞きします。

○議長(中山 哲君) 町長。
○町長(早坂利悦君) 私として基本的な考え方ということは、これまでも議会で申し上げたとおりで、今のところは賛成ありきでもないし、反対ありきでもないんだよと。そういう中で、いろいろ私なりに知らないこともたくさんありますので、いろいろ話を聞いたりですね、実際の動いているとこはどうなんだろうかということを聞きながら判断をしなくちゃならないし、また、議会のほうでも今、請願に対する対応のための特別委員会がなされておりますので、その動向も見極めなくちゃならないという思いで、私の立ち位置としてはそういうふうに今は思っております。
今、いろいろ風力発電についての河野議員の考えが述べられました。私も同じ思いのところもたくさんございます。やっぱりどちらかといえば、原発かあるいは自然エネルギーかというふうに、主力になるのは将来は二者択一になるのかなという思いはございます。ですから、どっちも駄目だというわけにはいかないような気も私もします。今、差し当たっては原発のほうにかじを切られておるわけですけれども、しかし、このままずっと未来永劫までというわけではないと思いますので、いずれ自然再生エネルギーが主力になる時期は、そういう時期は来るんではないかという思いもあります。
先ほど委員会の報告の中にもございましたとおり、いわゆるメカシステムっていいますか、風力のこのメカシステムというのは、やっぱり日進月歩だと思うんですよね。ですから、かつての風力発電の問題はあるかもしれませんが、現在新しくできているところについては、ほとんど私らが心配されているような問題はないのではないだろうかと私も思っております。石巻の話も聞きましたし、今グリーンパワーが本町に関わる事業者でありますけれども、その事業者がやっている青森のほうにも行ってきました。いずれも、その場所の中で問題として出ていることは、何もやっぱり聞きませんでしたね。
あるいは、声なき声というものもありますので、あるいはそういう人も中にはいないとは言えませんけれども、聞き及んだ話の内容については、問題視したような話はありませんでした。
そういう中でどうするかということになりますけれども、これから自然再生エネルギーを否定するわけではないということで、議会の中でもそういう話になっておりますけれども、ただ、本町では要らないんだということで、そうすると、悪い言い方ですけれどもね、健康被害があるから要らないというんであれば、ほかはいいっていうんでは、ほかは健康被害あってもいいのかと。これはちょっと言い過ぎですけれどね、そういうふうにも捉えてもいいんですが。ですから、健康被害もないということで判断してもいいのではないかと思いますので、このことについては、いずれ結論を出さなくちゃなりませんので、さっき申し上げたとおり、議会の対応を含めながら判断をさせていただきたいと思います。

○議長(中山 哲君) 河野 諭議員。
○5番(河野 諭君) 町民の方もですね、結構勘違いしてる方もいる、勘違いというか、間違いというか、あるかもしれないんですが、風力が全部悪いんだというふうに思ってる方もいるようでして、それはですね、はっきり言うと、はっきり言うとというか、ガイドラインができる前の風車、近過ぎるとか、古い風車とか、こういうのはやっぱり、問題がもしかしてあるかもしれませんが、やっぱり今建ててる風車というのは本当に最新型で、メカシステムですか、町長さっき言いましたが、ほとんどの問題が処理され、ちゃんと担保されていれば問題ないというふうに聞いてますし、私もそのように思っております。
また、町長はですね、特別委員会の結果も聞いてという、何かちょっと弱気な答弁が出てきましたが、これはですね、仮に風力を進めても批判は出るし、止めたって何だ問題ないのに止めたのかと、そういう批判も出るだろうと思いますので、私はですね、ここは 批判を恐れることなくです ね、町長の選挙 の ときのキ ャッチ フレー ズ が 「断 固 前に」だったと思います。まさに今、断固前に進むべきだと私は思いますので、ここはしっかりとですね、町長のほうも検討をしていただきたいと思います。
質問はこれで終わりまして、次の質問に入りたいと思います。

 最初の方の「風力が駄目だよと言っている先生の話もですね、昔の話を出して今の話はしていないと、そういう現状が私の中では分かりました」とか、最後の方の「町民の方もですね、結構勘違いしてる方もいる、勘違いというか、間違いというか、あるかもしれないんですが、風力が全部悪いんだというふうに思ってる方もいるよう」というのは、過去10数年程の間に国内外で起きた「風車病」騒動の影響を端的に示している。実際、昨年に隣の加美町でおこなわれた複数の集会では他所から来た同じ面子が、ただ同じ話、国内外のデマを繰り返していた中、この議員は自らその場に出向き、質疑応答の際に「風力が駄目だよと言っている先生」本人に対し、主催者によるYouTubeの動画で確認出来るが、戸惑いながらも問い質していた。そして、そこで引き下がらなかった。

 この議員や先の記事で引用した他の議員の発言が仮にTVや新聞などで大きく取り上げられていたら、再エネに対する地域住民の受け止め方も変わったかもしれない。反対運動の主張のおかしさに有権者も気づかないはずがない。その意味で、この問題を追及しないメディアが長年の足かせであり、社会は前にも先にも進めない。地方でも国でも政治に新しい風が吹かないのは、反科学やNIMBY、無関心が阻んでいるから。日本人の「知る権利」は、どこに?


参考:

令和4年色麻町議会定例会12月会議会議録(第1号)
https://www.town.shikama.miyagi.jp/material/files/group/15/12kaigi.pdf


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