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桜庭一樹『じごくゆきっ』(集英社)

熱烈に追いかけたりはしていないのだが、桜庭一樹が好きだ。久々に読んだ桜庭一樹は『じごくゆきっ』、「小説すばる」等に掲載された短篇小説をまとめたものだが、冒頭と巻末の「暴君」「脂肪遊戯」は同じ登場人物が出てくるつながった物語で、それは、わたしの一番好きな『赤朽葉家の伝説』につながる、山陰の地方都市に生きる少女の物語で、その風合いがとてもよかった。他の小説は、舞台も、主人公も、少女でも山陰でもないのだが、それでも、すべての主人公たちが同じ魂を持っている感じで、清くも美しくもないのに、清くて美しい。わたしがなれない姿をしているから、憧れるのか。憧れているのに、なりたくはない。傷つく以外の生き方は出来ないんだろうか、と思ってしまうが、他の生き方はないんだ、きっと。

Twitterの裏アカウントで何かをつぶやかずにいられない主人公たち。そうやって、Twitterの中に投げ込んでしまって、救われる魂はあるんだろうか。ないってわかっていてやっているんだろう、と思うと傍観者は切ないが、救われなくても、せずにいられないことがあるんだろう。

世界は広くて狭い。どこへでも行けるのにどこにも行けない。それは、自分が無意識のうちに選んでいることなのだ、と、桜庭一樹の小説はいつも語っているような気がする。

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