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クリスチャン・ツィメルマンの東京大学安田講堂でのコンサート(2006年6月16日)

2006年6月に、東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門発足記念行事として、クリスチャン・ツィメルマンのコンサート及び講演会が行われた。わたしが初めて生のツィメルマンの演奏を聴いたのがこの時だったので、その時の日記を掘り起こして紹介しておきたい。

東大の安田講堂で、クリスチャン・ツィメルマンのコンサート及び討論会が行われた。これは、東大で、新しく医学研究センターが発足するのを記念して、そのセンターを立ち上げた宮崎徹教授が、何かイベントを、と、自分が海外で研究していた時代によく演奏を聴きに行っていたツィメルマンを、日本ツアーの途中でお呼びし、コンサートをやってなおかつ、ツィメルマン自身も興味を持って色々研究しているらしい科学の部門と音楽との関係について、教授と語り合う、というもの。
ツィメルマン好きの知り合いが、チケットを2枚予約していたのが、連れが行けなくなったと聞いたので、急遽誘っていただく。南北線の東大前の駅で知り合いと待ち合わせ、安田講堂へ。東大なんて、十数年前に五月祭で東大オケの演奏会を聴いて以来。勿論安田講堂に入るのは初めて。あれは、学生紛争の際に、学生が立てこもって、でも最後は陥落して、というイメージばかりが強いが、中に入ってみると、オケも演奏できそうな広い舞台と、半円状に広がる座席が1階に700、2階に400ばかりある、広い講堂だった。どっしりとしたシャンデリアなども時代がかかった感じで格好いい。全席自由なので、入口でしばらく行列し、もうかぶりつきとかは無理な順番だったので、2階にあがり、手元の見える角度のあたりの席に座る。座席は結構がたがた言うぞ!
18時からコンサート。ツィメルマンが演奏会ごとに持ち歩くというグランドピアノが舞台に置かれ、ツィメルマンはすーっとやってくるとあっという間に弾き始める。最初がモーツァルトのピアノソナタハ長調K.330、続けてショパンのバラード第4番へ単調op.52。連れに、ピアノというのが作曲家毎にこんなに違う音で鳴り響くなんてすごい、と言われていたのだが、本当にその通り! 驚いた! モーツァルトとショパンで、同じ楽器とは思えない、違った音が出る。特にショパンは身の毛が総毛立つような衝撃。ずっと、コンサートの類から遠ざかった生活を送っていたこともあり、音楽ってこういうものか! と改めて考えさせられる。
アンコールは、ガーシュインの短い曲を鋭く弾き、最後にショパンのマズルカ。嗚呼、もっともっと聴きたいと思ったが、インターミッションにピアノは舞台の奥まで動かされてしまった...。
後半はツィメルマンと、彼を招聘した東大の宮崎先生との討論会、というよりはトークショー、"Music and Science"というタイトルがついていたが、特に脚本もなくお互いが思いつくままに喋り、そこに質疑応答なども絡め、結局1時間半以上話していたのではないか。ツィメルマンも東大の先生も第2言語としての英語での対話で、たぶんネイティブな人の英語よりはわかりやすかったかも、だが、まぁ全部を理解しきることは出来なかった。プログラムの後ろにメモを取ったりしたが、英語日本語まじりで訳わかめ。気になったことをちょっとメモしておくと、artとは、organize certain time with emotion であり、artistの使命は、楽譜にかかれたことを再現するということではなく、そうしたtimeを、emotionを聴き手に与えることである。communicationとは、emotionをexchangeすることである。(音楽)教育とは、その人が生まれ持ったtalentが、壊れないように、保持させ続けさせるためのものである。pianistは、成長してmusicianとなり(in a need to make music)、さらに長ずるとartistになる(in a need to communicate with people).。...その他もろもろ、上手く言えないけれど、音楽と、それと向き合う自分がいれば、向き合う過程で、どこで自分はそれを人前で披露することが出来る段階に達したかは日ごろの鍛錬の結果として自分に見えてくるとか、同じ曲を演奏しても1回ごとに違う表現と解釈になるとか、絶対的なものがあるのではなく、その都度見えるものを自分で感じ取ることが大事、といったようなことを言っていたようであった。どの切り口でも、ツィメルマンはどれだけでも喋ることがありそうだったが、討論相手との話が完全には噛みあってなくて、質疑もそれまでの流れとはちょっと離れてしまっている感じがあり、一つ一つの項目について納得はしても、討論全体としての結論はない、漠然とした話し合いになった。

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