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ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント(東京都美術館)

東京都美術館へ、「ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」を見に行ってきた。2021/9/18-2012/12/12 日時指定予約制。

公式サイト

今回はクレラー=ミュラー美術館の収蔵品を中心とした展示。ゴッホ没後18年目からゴッホ作品の蒐集を始めたヘレーネ・クレラー=ミュラーが、亡くなるまでの約20年間に90点を超える油彩画と約180点の素描・版画を蒐集、ヘレーネが亡くなる前年の1938年にオランダのデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内に国立クレラー=ミュラー美術館が設立された。

これまでにも、クレラー=ミュラー美術館からの貸し出しで日本に来たゴッホ作品は沢山あり、前に見たことある作品も沢山あったが、わたし自身はクレラー=ミュラー美術館に行ってもないし、クレラー=ミュラー美術館に特化した展覧会にも行っていないので、初めて見る作品も多く、ヘレーネ・クレラー=ミュラーのコレクションについては初めて学んだ。

ゴッホ以外の収蔵作品として来ていたスーラやシニャックも素晴らしい(キャプションによると、ヘレーネは画家たちと知己も得ていたらしい)。モンドリアンもよかったし、モンドリアンの影響を受けていると思われるバート・ファン・デル・レックの「種まく人」も面白かった。

ゴッホ作品は素描、版画と油彩に分けられ、それぞれほぼ時系列で展示されている。アムステルダムのゴッホ美術館に、習作も含め沢山展示されている「馬鈴薯を食べる人々(今回はジャガイモを食べる人々)」は、リトグラフが1点だけ来ていた。素描が多くあったことで、1880年頃に画家を志すようになったゴッホが、基礎を固めるために多くの人物素描を行った過程を丁寧に確認することが出来た。

そして油彩。オランダ時代の絵は、オランダ絵画の系譜を感じさせる、窓からの光が印象的な室内図、背景が黒っぽい静物画、それがパリに来て一気に明るい色調となり、晩年に向け、一気に日本人の大好きなゴッホ、という感じの激しい筆致の画風になっていく。

クレラー=ミュラー美術館にあるゴッホの代表作のうち「アルルの跳ね橋」や「夜のカフェテラス」は来ておらず、有名どころは「種まく人」(これはいつか別の展覧会で見たな)や、糸杉の描かれた「夜のプロヴァンスの田舎道」(糸杉は他にも名作が沢山あり、一昨年の上野の森美術館のゴッホ展のポスターにもなっていた糸杉も好きだった)といったところで、あとは比較的地味な作品が多かったかな。ひまわりやアイリスもない。自画像もない。アムステルダムの国立ファン・ゴッホ美術館から着ていた「黄色い家」は鮮やかな青空と黄色い家や道路の補色効果が印象的。

ゴッホの作品で日本人に好まれるのは1888年~1889年頃に描かれたもので、かなりの数が世界中の美術館に収蔵されている。そして、亡くなる直前にどんどん絵の色が明るくなっていき、1890年の作品は怖い位の明るさのものが多いのだが、精神的な不調もあってか、1890年の作品はとても数が少ない。そんな中、今回は1890年の作品が5点も見られたのは結構な収穫。

没後18年たっていたが、まだそこまでの知名度がなかったゴッホの作品を、オランダ屈指の大富豪の女性が、精力的にコレクションしたことで、ゴッホの名声も上がった、というところが今回の展覧会の訴求ポイントか。展覧会の冒頭にはヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像画と、彼女にコレクションの指南をした美術評論家H.P.ブレマーの肖像画が飾られている。それに続くゴッホ以外のコレクションも、前述のスーラやシニャック等以外に、ルドンとか、アンソールとか、ブラックとかホアン=グリスとか、幅広く、興味深い。入館してすぐに展覧会概要の映像作品、出口にもおさらい映像があったが、それぞれ3分、2分45秒と、長過ぎず、きちんと確認出来たのも好感度高かかった(あまりに長い映像作品は、気持ちが急いている時など、見ていられなかったりするので)。

日時指定は9:30開館からの30分刻み。9:30が満杯で予約取れず、10:00の回で入ったが、それなりに入れていて、押し合うほどでもないが、結構前後の人と肩触れ合う位の距離感で鑑賞することに。絵のキャプションが多く、読みながらだと結構人の流れが滞留する。また、音声ガイドのある絵画はどうしても人が長めにいてしまうので、かわしながら見ることになった。ミュージアムショップは、とにかく品物の点数が多く、日本人のゴッホ好きを手玉にとって商売しようとしている人が多いね、と思った。本展オリジナルポストカードに、来日していない「アルルの跳ね橋」や「夜のカフェテラス」もあったぞ。サンリオのシナモロールとのコラボ商品が沢山出ていて、超可愛かったが、ゴッホに扮しているシナモロールの長い耳を見て、お前はゴーギャンと喧嘩してその耳を切れるか、と問いたくなってしまうブラックなわたしだった。午前中だとそんなにショップは混雑しないが、遅くなればなるほど混んでくる可能性大。

結構しょっちゅうゴッホを見ている気がするが(2019年の上野の森美術館の前に2017年に今日と同じ東京都美術館で「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」、2016年も東京都美術館で「ゴッホとゴーギャン展」...ゴッホ単発でない美術展でも結構ゴッホは来るし)、一つ一つ独自で、不思議な力に圧倒され、飽きないのもゴッホの力だな、と思う。

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