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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年(国立新美術館)

国立新美術館で開催中のメトロポリタン美術館展(2月9日~5月30日)に行ってきた。先に大阪で開催してからの巡回。日時指定券を販売しているが、現状では当日でもチケット購入可能。実際、会場で、混雑しているという感じはしなかった(場所によっては人が集まってしまっている場所もあったことはあったが)。

展覧会のチラシは2つ折りで、片側にジョルジュ・ド・ラ・トゥール「女占い師」、片側にエドガー・ドガ「踊り子たち、ピンクと緑」の大きな絵が出ていて、中の見開きに、展示されてる65点の残り63点全部が掲載されている。

目玉はないのか?、と、最初にチラシを見たときは焦った。そうではなく、すべてが、自信を持ってお届けできる名作である、という意味であったことを、見終わって、あらためてチラシを見て実感。
西洋絵画の500年、という副題。ヨーロッパ絵画と言っても、国も時代も色々だが、あまり細かく分けず、「I.信仰とルネサンス」、「II.絶対主義と啓蒙主義の時代」「III.革命と人々のための芸術」とざっくり。15世紀前半のフラ・アンジェリコやフィリッポ・リッピから、一番新しいのが1916-1919年頃のモネ晩年の「睡蓮」(20世紀の作品はこれ一点だけ)。ほぼ一人一作。複数あったのはヴェラスケス(但し片方は工房との共作)、クールベ、ルノワール、セザンヌ、モネだけ。
そして本当に、西洋絵画史で押さえるべきポイントをしっかり押さえた構成。ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチはなかったが、ラファエロ、ヴェロネーゼ、ティツィアーノはあり、北方の画家でもクラーナハ(「パリスの審判」が面白かった!)、ホルバイン、スペインからはエル・グレコ。そして、なかなか日本までは来ないルーベンスの大作を見られたのも感動。昨年、コロナで展覧会が流れたカラヴァッジョも来てくれてよかった。チラシ表紙のラ・トゥールと並んで展示されていた。
プッサンとかクロード・ロランとか、ヨーロッパの美術館に行くと何点も並んでいるけど知名度低めの画家の作品もきちんと押さえられていたし、この間フェルメールと17世紀オランダ絵画展でいっぱい見てきたオランダ絵画も、きっちり揃っている(ドレスデン展にはなかったピーテル・デ・ホーホも来ていたし、レンブラントも今回の「フローラ」の方が好きだった)。そして、フェルメールは「信仰の寓意」、メトロポリタンに5点あるフェルメールのうち今回は寓意画、丁寧にキャプションが付いていたので、アメリカで見るより、日本で見る方が理解が深くなる。足元で、教会の「隅の親石」(キリストの暗喩)に押しつぶされた蛇がいる、というの、あんまり意識していなかったが、キャプション見てからじっと眺めると血まで流しているではないか。フェルメールの室内画は、もっと庶民的な部屋も多いのだが、この絵の部屋は調度など美しく、なのに足元で蛇が流血している...。
18世紀フランスで、女性画家も活躍していた、というのはわたしにとっては新しい視点で、何枚か紹介されていた絵のうち、マリー・ドニーズ・ヴィレールの大きな絵が、逆光の元女性の肖像を描いていて、光線の感じが斬新で現代的に思われ(光の感じがエドワード・ホッパー風、と思ったのは変かな?)印象的。ターナーのヴェネツィアを描いた絵も、遠くから見ただけであっターナーだ、とわかる素敵な絵だった。クールベの女性像はジャン=レオン・ジェロームの「ピュグマリオンとガラテア」と並べられていて、あっジェロームって、原田マハ『たゆたえども沈まず』で、ゴッホの弟テオが勤めていた画廊の中心的な画家だった人だ、と改めて認識したりして。
ゴヤの「ホセ・コスタ・イ・ボネルス」が印象派の絵のさなかに展示されていて、時代も場所もなんとなくずれているな、と思ったが、隣のマネ「剣を持つ少年」とのモチーフの対比だったのかな。ゴヤも比較的日本では見る機会が少ないので見られて嬉しい。後期印象派の画家たちのなかでは、セザンヌがよかった。「リンゴと洋梨のある静物」のくっきりとした線をうっとりと眺める。
国立新美術館の展示スペースで、65点は、かなり大物揃いでもかなりゆとりはあった。ただ、会場の順路がわかりにくく、次はどちらの部屋に行けばいいのかわからず困ってる風の人が結構いた。わたしも朝いちの時間帯で入り、混んでいるエントランス付近は後回しにして、「絶対主義と啓蒙主義の時代」から見たのだが、自分がどう進んでいるのか、出品リストに付された地図を見てもよくわからなかった。最初の方の部屋に戻るショートカットがなく、ルネサンスの絵を見るには、元の道を全部戻るしかなかった(混雑してくると混乱するかも)。
ミュージアムショップはそんなに面白い商品はなし。すみっコぐらしの人形に絵画の中のキャラと同じ服を着せた人形とか、うーん(じゃあミッフィならいいのか、と言われるとまぁ答えに窮するところだが)。クリアファイル類多数。絵ハガキよりクリアファイルの方が大きくて絵の細部がよくわかるので、個人的に結構好きだけれど、今回は割愛。マスキングテープもモネの睡蓮とセザンヌの果物の2柄で食指動かず。
メトロポリタン美術館展を見た後、勢いで、今秋から始まったダミアン・ハースト「桜」展も見に行ったが、メトロポリタンの半券を持っていると100円引きだった。展覧会の感想はまた明日にでも。

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