(83) 同窓会

会場の中華料理店のドアの前で、正は深呼吸しました。

大学生になって初めて経験する同窓会でした。４年ぶりに再会する　中学の級友たちが、正を見てどんな叫び声を上げるか、扉を開ける前から聞こえる気がして、早くも耳を熱くしていました。

「何やってんだ、早く入れよ」

うしろの声は、聞き覚えのある、バレー部部長です。中学に入りたての頃、正も入部したかったのに、背が足りないため、結局、囲碁部を選んだのでした。

ドアを開けて中へ一歩入ると、
「バレーの渡辺と、もう一人だれだっけ？」
「あんな人、いた？」
と、ささやき声がしました。

やっぱりです！

「井上君か？」

半信半疑の声に、正がうなずくと、ウッソー！と、騒ぎが爆発しました。

「クラス１のチビだったのに！」
「オレよりでかくなりやがって！」
「２０センチは伸びただろ！」

正は嬉しさをかみしめていました。遠い高校へ通うようになって、おそい成長期を迎えたのです。
あの頃は。毎朝起きるたびに、音を立てて伸びている感じがありました。背が高くなると、視野が広がるのを実感し、新しく生まれ変わるような、新鮮な感動がありました。

「２０年後は、どうなるかなぁ」
「これからだよ、みんな変わるのは・・」

いっしゅん、みんな顔を見あわせ、今の自分たちを、互いに目に焼きつけました。