本_猫_

死と出会い 8話 私の存在

私は秀一のOKをもらったので、絵里の学校に行き、彼が会ってもいいと言ってると伝える。秀一は、デレデレしていて私の気持ちに気付かない。

#死と出会い #私の存在 #小説 #怒り #呆れる #誤解

 数日後、私は、秀一の要望に応えるため、絵里のいる中学校に下校途中に寄った。中学校からチャイムの音が聞こえてきた。秀一からは明日なら部活がないから会えると伝えて欲しいと言われた。相変わらず、私の気持ちは複雑なまま。


 

 お人好しな私は、後輩の頼みもすんなり聞いてしまう。自分でも情けないと思う。自分の気持ちを押し殺して、彼を紹介するわけだから。私ってどうかしてる。そんな自分を言葉の刃で傷付けていた。

 玄関を見続けていると、以前見たことのある女の子と一緒に絵里は出て来た。彼女たちを見つめていると、絵里は私に気付いた。
「あ! 愛理さん。こんにちは!」
隣にいる子は頭を下げている。
「今日来たのはね、秀一が明日なら部活ないから会えるよってことを伝えに来たの」
「そうなんですね! やったー!」
絵里は満面の笑みを浮かべている。
「でも、最初から秀一さんと二人っきりで会うのは緊張するので、愛理さんも一緒に来てもらえませんか?」
「仕方ないわね、いいよ」
「ありがとうございます!」
「明日、秀一と一緒にここまで来るから待っててよ」
「わかりました」
そう言って、絵里は深々と頭を下げていた。
「じゃあ、明日ね」
と、言いながら私はその場をあとにした。

 翌日、私は一時限目が終わった休み時間に、秀一がいる席に向かった。
彼は絵里のことを気にしているのか、こちらを向き私を見て笑顔を浮かべた。
「こんにちは」
と、私が声をかけると、
「昨日、絵里ちゃんに話してくれたか?」
鼻の下を伸ばしながら言った。私はそのだらしのない表情に苛ついた。
「何、その顔! デレデレしちゃって!」
「何で怒ってるんだよ」
秀一は私の気持ちになど気付く様子もなく、表情を崩さなでヘラヘラしている。
「約束通り、昨日絵里に会って話してきたから今日、私と一緒に帰って絵里のいる学校に寄ろう?」
「わかった、楽しみだなー」
彼はすっかり上機嫌。雄二のことは忘れてるみたいに感じる。そんなふうに見える秀一に怒りを覚えた。
「秀一。聞いていい?」
「うん?」
「あなた、まさか、雄二のこと忘れてないよね?」
「それはないよ。誤解しないでくれ」
「なら、いいけど」
私は完全に不貞腐れていた。
「愛理、さっきから何でそんなに怒ってるんだよ? この前もなんだか様子がおかしかったし。なんかあったのか?」
私はそれを聞いて、怒りを通り越して、呆れた。私っていったいなんなの……。

 

 

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