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小屋の名称を知りたくてTwitterで呼びかけたら、、、

畑や田んぼ、漁港などに建っている物置小屋や作業小屋の写真を撮り歩いては記事を書いています。
何かのお役に立ちそうにはありませんが、よろしければ、しばしお立ち寄りください。

今回は少し前の話を書きます。
2020年1月に、「小屋とそうじゃないものの境界」という記事をnoteに書きました。その中で、稲を干すための竿や杭をしまっている田んぼ脇の物置きには名前があるのだろうか、もしご存知の方は教えてくださいという呼びかけをしました。
見出しや下の写真がそれで、パイプや木材や竹竿を収納しています。柱があって屋根も掛かっているので、小屋と呼んで差し支えないでしょうが、私はこれが何と呼ばれているのか、そもそも一般的な名称があるのかも見当がつきませんでした。

杭や竿をしまっている物置は田園風景に馴染んでいる

noteで呼びかけた結果、回答をくださった方は・・・、ゼロでした。
わはは、残念・・・。
当時はnoteを始めたばかりでフォローしてくださっている方がひと桁でしたし、まぁ、仕方がないですよね(笑)。
そこで私はしばらくして、Twitterで呼びかけてみました。

写真と一緒に投稿し、呼びかけた

すると、驚くほど多くの情報が全国から寄せられました。

これがバズるというやつか!という経験までさせてもらいました

中には、わざわざ家族に聞いてくれた方も!お答えくださった方だけでなく、拡散してくださった方も、みなさん、なんていい人なんだ。

全部で25の道府県から100件以上の情報が寄せられました。そうして分かったことは、地域によって様々な呼び名があるということでした。

稲を干すための木組み(写真はパイプ組み)を稲架(「はさ」または「はで」など)と言い、
稲架で稲を乾燥させることを稲架掛けと言います

一番多く寄せられた呼び名は24件で、稲架小屋稲架置き(場)でした。地域は北海道、宮城、秋田、長野、岐阜、静岡、島根、岡山(ほか不明3)です。「稲架」とは収穫した稲を干す木組みのことをいいます。読み方は場所によって様々なのですが、「はさ」「はせ」、音が濁って「はざ」「はぜ」「はず」があり、中国地方では「はで」と呼ばれていることを今回知りました。サ行ザ行での読み方分布は主に東日本エリアです。派生した呼び名として、はさぎ(稲架木)置きも寄せられました。
2番目に多く寄せられた呼び名は16件で、はで小屋はで木小屋ハデゴ部屋。これは鳥取、島根、岡山、広島(ほか不明1)と、見事に中国地方で固まりました。
3番目は9件で、稲杭置き(場)稲杭小屋はせ杭置き場杭小屋。いずれも「杭」の文字が入ります。地域は宮城、岩手、山形と東北地方です。
同数で4件寄せられたのが、
長木(ながき)小屋 岩手、秋田、新潟
なる棚、ナル小屋、なる置き 岐阜、和歌山、山口(ほか不明1)
稲木(いなき)小屋、稲木置き 滋賀、兵庫、愛媛
おだぎ小屋、おだぎ置き場 茨城
2件ずつ寄せられたのが
竿置き、さおだな 茨城、富山
はぜ足置き、はぞあし置き 長野、奈良
稲架棚(はさだな)、稲架屋(はざや) 滋賀
かこ(囲?)小屋 長野、奈良
そして1件寄せられたのが
ほげ小屋(青森)、ほぞ小屋(福島)、ながら小屋(福島)、ハゼかけ棒小屋(長野)、はばっくらのこや(長野)、細木小屋(長野)、木小屋(きごや)(山梨)、にゅういなきにゅう(京都)、さがり小屋(和歌山)、樽木小屋(愛媛)。
たつごや(近畿)、牛小屋(九州)、クキ小屋、ボッチ小屋、農小屋(地域不明)

一つずつ見ていくと、限定された地域や場合によっては家族内でしか通用しない呼び名もありそうです。例えば「おだぎ」は茨城県独自の、「にゅう」または「いなきにゅう」は京都府独自の呼び名でした。九州から寄せられた「牛小屋」は牛舎ではなく、稲架の前後4本の杭と束ねて掛けられた稲が牛のように見えるからでしょうか、「牛」と呼ぶ地域があるようです。また。一本の棒を中心に稲を干す形を「ぼっち」「わらぼっち」と呼ぶ地域がありますので、「ボッチ小屋」はそれから生まれた名称だと思われます。

道府県別で一番多く回答を寄せてくれたのは長野県からの12件(はぜ置き、はぜ小屋、はざ置き(場)、はざ小屋、はぞあし置き、ハゼかけ棒小屋、はばっくらのこや、細木小屋)で、次に島根県から11件(稲架木(ハデギ)小屋、はで小屋、はぜ小屋、ハデゴ部屋、なだら小屋)でした。
この2県だけでも、ちょっとずつ違う呼び名が多くあることが分かります。昔は山を一つ越えただけでも呼び名が違ったのかもしれません。また、今も天日干しをしている農家が他県よりも多く、稲架掛けが身近なのかもしれません。

一方で、田んぼはあるが稲架小屋を見かけたことがないという声も何人かから寄せられました。確かに上越新幹線の車窓から米どころ新潟の田んぼを眺めても、稲架小屋を見かけることはほとんどありません。寄せられた声を元にして考えられる理由は3つです。
・稲架を田んぼの脇ではなく家の敷地内で保管している。
私も新潟県の農家で、敷地内の蔵に立てかけられた稲架の棒を見かけたことがあります。
・稲架を組むための竹を毎年切り出して調達している。
この回答は2人からいただきました。贅沢な気がしますが、使い捨てているわけではなく、何らかの再利用をしているのではないでしょうか。竹は成長が早いので竹林の手入れを兼ねているのかもしれません。
・稲の乾燥が機械化されたために稲架掛け自体がなくなった。
若い世代にとってはこれが大きな理由かもしれません。私は子供の頃に稲架に潜り込んで隠れんぼなどをして遊びましたが、今では実家周辺で見かけることはすっかりなくなりました。多分、私の子供は写真や映像の中でしかみたことがないでしょう。

回答が寄せられるまでは、田んぼの隅にポツンとある物置小屋にこれだけ多くの呼び名があると、正直なところ思っていませんでした。正確に言えば、小屋の名称というよりも、稲架の名前のバリエーションが豊かだということなのですが、こんなニッチな呼びかけに多くの人が興味を持って反応してくれたこと自体が嬉しい驚きでした。農林水産業が作り出す風景は人を郷愁に誘い、思わず語り合ったり、気持ちを共有したくなる魅力があるのかもしれません。
もし他の呼び名をご存知の方がいらっしゃたら、お気軽にこのブログにコメントをお寄せください。お待ちしています。
そして、だいぶ時間が経ってしまいましたが、ご協力いただいた皆様、本当にどうもありがとうございました。心から感謝申し上げます。

2022.01.10


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