SNSにおける悲しい論争と、SNSへ衝動をポストすることの難しさについて。
はじめに - 筆者自己紹介
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※2024/9/17追記
本noteは幸運にも、多くの方に読んでいただきました。お読みくださった皆さま、ありがとうございました。
ただ、私の筆力の無さもあり、本文で伝えたいことを伝え切れていなく、情けない限りです。
ただ、文章を書き直すことは、このnoteの目的の一つである「事象を記録する」という狙いから遠ざかってしまうため、伝えたいことをこの冒頭に記させていただきました。
下記を頭の片隅に置いていただき、私の拙文をお読みくださいますと幸いです。よろしくお願いいたします。
・エディオンピースウイング広島において、名古屋グランパスのサポーターがルールを守らず起こした行動は、決して許されるものではないこと。
・エディオンピースウイング広島をホームとするサンフレッチェ広島のサポーターの皆さんの心情は察するに余りがあること。
・一部の者の蛮行を、そのものが所属するコミュニティによる総意であると同一視するべきでないのではないか、という提言。
・異なる条件下における比較は避けるべきではないか、という提言。
・不確かな情報を基にしたヘイトは広まりやすく、訂正されることは少なく、それによって起きた誹謗中傷がとても辛い、という体験談。
・ある事象に関するSNS上での話題へ、当該者以外のアカウントが参入したところで幸せな結果は訪れない、という考え。
・SNSでは衝動に任せたポストに注意すべきである、という提言。
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私は昨年まで、「サッカーを通じて笑顔を届けたい」という想いのもと、名古屋グランパスで業務スタッフとして8年間働いていました。そしてそのうち7年間務めていた広報領域においては、「勝利に繋がるポジティブなSNS空間を創り上げる」ことを目指し、業務に従事していました。
しかし、そのような私が考える “あってほしい姿” と願う姿から程遠い、当時のクラブとJリーグを取り巻く状況に疲弊してしまい、組織から離れる決断をしました。そして、大好きなJリーグから距離を置こうと考えてました。
そのような理想の姿を実現できないままに組織とJリーグから離れるにあたって、自分の8年間は無駄であったのではないかと途端に怖くなりました。ですので、業務の振り返りと在職中の想いを退職エントリにまとめてみたのでした。少なからずの承認欲求と共に。
昨年末に発信したこの退職エントリは、私の想像以上の方々に読んでいただき、そして身に余る反応を頂くことができました。そういった言葉のひとつ一つに私の8年間にわたる心身の疲労は癒され、力を頂き、組織から離れたからといって名古屋グランパスとの距離を置かなくても良いのではないか、という考えに至るまでになりました。その時の心情は下記に綴りました。
そしてこの時、サポーターとクラブスタッフの「ハーフ(※)」という、どっちつかずの状態であることを受け入れて、しかしその状態は長くてもこの一年だけであろうと考え、その有限性の「ハーフ」でいられる間に感じるところを発信することに意味があるのではないか、と感じました。
※ 中学生の頃、この表現が当該者にとって辛いものであるので「ダブル」にするべき、という論考を知ってから私は一度も使っていませんが、この文章においては私が当該者であり、その辛さを感じられている気がするので敢えて使用しています。
クラブが言いたいけれど言えないことを、サポーターである私がファン・サポーターの皆さんに伝えられるかもしれないし、サポーターの考えや想いを、クラブへ届きやすい形へ変換できるかもしれない、そのようなある種の刹那的な “思い違い”をこの一年は体現できたら、そのように決めたつもりでした。
“つもり” と書いたのは、やはり双方の立場でものごとを考えてしまうが故に感じることも多く、今年になってからの8ヶ月の間にも、心が折れそうになる(折れた)事象が幾つか起きたからでした。そのうちの2つの事象に関しては、下記のような文章にしました。
事象が起こる度に、もう仕事では無いのだから、悲しい思いをしてしまう言葉を敢えて視界に入れなくても良いのでは?と自問しながらも、ハーフであるが故の、クラブにも、ファン・サポーターにも、ひょっとしたらJリーグ全体にも、少しでも貢献できる発信ができるのではないか、という “思い違い” からも逃れることができず、上述のような文章を残したり、日々Xへのポストをしてしまっています。
そして、先週末の「サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」におきましても、試合後にSNSにおいて論争が起こってしまいました。今シーズンになってから何度目かの、名古屋へ来てからは数え切れないくらいの、心の折れる音が聞こえました。両クラブのファン・サポーター同士のお互いを尊重しない、己の衝動だけに身を任せた、いがみ合いとしか表現できないSNSでのやり取りを見て悲しくなり、心底辟易してしまいました。
試合後の数日間は、自らの発信によってより良いJリーグに貢献できるのではないかという “思い違い” の決意というよりは、昨年までの職業上の癖により、試合翌日から火曜日まで大阪に滞在していた間にも、そのあと名古屋へ帰って来てからも、絶えずその事象に目を向けてしまっておりました。
この文章は、ようやく落ち着きを見せた「サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」の試合後のこの数日間のSNSでの論争とその間の私の心境の軌跡と、今年やり切ると決意した “思い違い” を果たすための、その論争に関する私の論考を綴ったものとなります。
サンフレッチェ広島のファン・サポーターの皆さまとサンフレッチェ広島に関わる皆さまにおかれましては、名古屋グランパスのサポーターである私が書く文章が故に、なかなかお目を通していただける気分にはならないかと思います。
名古屋グランパスのファン・サポーターの皆さんにとりましては、なかなか厳しい指摘も書いてしまっているかもしれません。
しかし、論争が起きてしまった以上、このままの状態を放置してお互い歩み寄らずに遺恨を残すことは「百害あって一利なし」であると、これまでを振り返って感じています。
そのような私の、「Jリーグに、少しでも貢献できる表現ができたら」という私の “思い違い” に少しだけお付き合いいただけましたら、それに勝る喜びはございません。
自分の出自と思想を基にしながらも、「Jリーグのために」を念頭に文章を紡いでいきたいと思いますので、よろしければ最後までお読みくださいますと嬉しく思います。
2024.9.8サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス - やり切った達成感と、試合後のやるせなさ
9/8(日)のルヴァンカップ 準々決勝第2戦「サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」当日、5月のJ1リーグ戦での広島遠征で足を運べなかったクラフトビール屋さんへ18時半のKICK OFF前に訪れるべく、昼前に名駅に到着しました。
一本前の新幹線に乗車予定であったINSIDEのビデオグラファー佐藤さんとホームでたまたま鉢合わせし、この後の試合での共闘を誓い、お互い広島へ向かいました。
広島駅に到着後、広島市電に乗り、相生橋へ向かいました。
心ゆくまで相生橋で時間を過ごし、前回の遠征時に足を運べなかったクラフトビール屋さん「Session's Brewery & Beerhall」へと足を運びました。
そして、テイクアウトで頂いたビールと共に、前回の遠征時の後に完成したスタジアム前の芝生広場を堪能し、
これまた前回の遠征時に知り合った広島サポーターの方と、芝生広場にある「OBSCURA COFFEE ROASTERS Park」でお茶をして、お互い良い試合になることを誓い合い、別れました。
ゴール裏に到着してからは遠征気分の気持ちを完全に切り替え、KICK OFF後は自分の持てる力の限りチームをサポートし、120分+α声を枯らすまで選手を鼓舞し続け、結果みんなで勝利を掴むことができました。
試合後は、試合前にご一緒した広島サポーターの方が、スタジアム近くのお好み焼きさんへ連れて行ってくださることになっていました。
しかし、その方のお気遣いと私の心そこにあらずの状態が故に、その食事会は開催しませんでした。
なぜならば、試合後に広島サポーターの方々が投稿された三つの事象に関するポスト内容に非常にショックを受けたからです。
一つ目は、土足で椅子を踏みつける行為。
2つ目は、立ち入り禁止エリアへの進入行為。
三つ目は、PK戦を迎える前に、鳴らしたドラムの音。
しかし、このドラムの音に関しては後述の通り、謂れは無いと感じていました。
※それぞれの事象に関するキャプチャは一例です。
そして、以上のポストにおいて、行為当事者と思われる名古屋サポーターのアカウントによる開き直りとも受け取れるポストや、広島と名古屋以外の他クラブサポーター(と思われる)アカウントからのリアクションも目にしてしまい、応援での身体的な疲労に加え、充実していたはずの精神的にもすっかり疲弊してしまいました。
スタジアムに程近い「ひろしまゲートパーク」でどんよりしたままの心身で2時間弱過ごしてしまい、日を跨ぐ頃に到着した宿では、一切スマートフォンには触れずに就寝しました。
2024.9.9 広島2日目 - 朝ラン、広島平和記念資料館、寿楽亭、大阪途中下車
翌朝、目が覚めても心の澱は消えてくれてはおらず、起動してしまったスマートフォンで、ますます増える名古屋サポーターによる行為を咎めるポストとそれらのポストへのリアクションを確認してしまいました。
その後、試合結果がどちらになろうとも走ろうと決めていた「朝ラン」へ向かうことにしました。
私は不可分な思考に囚われるとランニングして解消するようにしているので、ちょうど良い機会にもなりました。
朝ラン後、7時頃にチェックアウトし、本川の辺りでコーヒーを飲みながら、7時半の広島平和記念資料館の開館を待ちました。
そして前日「Session’s brewery」へ向かう途中に発見し、10時オープンとレビューサイトで調べていたラーメン屋さん「寿楽亭」へ9時45分頃に向かったところ、既に暖簾がかかっていたので入店し、朝ラーメンを頂きました。
そのようにして、広島平和記念資料館のメッセージを受け取り、寿楽亭の店主さんの優しさに触れ、広島駅へ向かうためにお気に入りの広島市電に乗車し、これまた大好きな車窓の風景を眺め、気分転換を図ろうとしました。しかし、心が晴れてくれることはありませんでした。
午後イチには名古屋へ帰る予定でしたが、このまま戻ってもせっかくのこの遠征全体が悲しい思い出になってしまう気がして、リフレッシュするために大阪で途中下車することにしました。
そして、大阪への移動中と到着後に、名古屋サポーターによる行動と広島サポーターの方々によるポストに関してそれぞれ、下記2つのポストを投稿しました。
◇名古屋サポーターの行為について
◇広島サポーターによるポストについて
この2つのツリー状のポストによって、事態が何か変わるとは思っていませんでした。しかし、自分の頭の中を整理する意味合いにおいても、私には必要な行為でした。
それぞれのポストと大阪到着後の数時間の没頭により、少し自分を取り戻すことのできた私は、その晩に下記ポストをすることによって、自分の中での広島遠征を終結することにしたのでした。
2024.9.10 大阪2日目 - 人情の街での癒しと、消えてはくれなかった悲しみと
昨夜のポジティブなポストで広島遠征を〆たはずの翌朝、私は大阪の宿のベットの上で、なかなか身体を起こすことができていませんでした。
昨晩の就寝前に、広島サポーターの方による「新スタジアムが完成してから最低のクラブだった」「名古屋のサポーターはもうスタジアムへ来ないで欲しい」というポストを目にしてしまっていたからでした。
※キャプチャは一例です。
そしてベットの上で、その時感じたことを吐露してしまいました。
その悲しさには、二つの側面がありました。
一つは、今年広島へ2回遠征し、そのたくさんの方々の想いが詰め込まれた新スタジアムに感銘を受け、来シーズンも必ず再訪しようしていた私の心が、ガラガラと音が鳴って崩れたこと。
5月の遠征時に足を運んだスタジアム併設のミュージアムでは、館内で私の仲間に何人も会いましたし、その展示物からスタジアムのできた経緯と広島の皆さんの想いを汲み取り理解している人間は、名古屋サポーターの中にも少なからず居ます。
そのような中で、一部の名古屋サポーターによる行為を起点とした、名古屋サポーター全体に対して憎悪が込められたポストを幾つも目にするのは、やはり堪えるものでした。
もう一つは、昨年までクラブスタッフとして試合運営側の様々な担当者の思いを知る立場として、「もう来ないでほしい」という言葉への悲しみでした。各クラブのスタッフの皆さんが、どれだけ尽力して満員のスタジアムにしようとしているか、その思いを踏みにじる投稿に、憤りとやるせなさを感じてしまいました。
双方ともに、考えとしては尊重します。その意見は私が侵すことのできるものではございません。しかし、怒りや憎悪の念を可視化させ、怒りや憎悪の対象者へその言葉が届いてしまうSNSの怖さ、そして恐らく投稿者自身は対象者へ気遣うことなく何気なくポストしているであろうということに、改めて慄いてしまいました。
前日に広島平和記念資料館で目にした、
という言葉が、悲しく私の心に響きました。
そして9年前にJリーグに携わるきっかけとなった「サッカーを通じて笑顔を届けたい」という願いには程遠いその実情に、愕然としました。
その後、大阪城を朝ランし、作業に没頭し、疲れたら出来上がったばかりのグラングリーン大阪の自然の中に身を置き、夜はクラフトビール屋さんへ足を運び…、と自分がこれまでもしてきた対処療法を試みましたが、朝の受けたショックな気持ちには何ら変化はありませんでした。人情の街「大阪」の力を持ってしても、私の心の澱が取り除かれることはありませんでした。
その日の最後に投稿した上記ポストは、私の精一杯の強がりによるものでした。
今回の悪行と「SNSでの論争」における私の論考 - 繰り返される「Jリーグにおける誹謗中傷」問題に終止符を
前章までにおいて、今回のルヴァンカップ 「サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」で起きてしまった行為や事象、及びSNSで起きた論争に関する私のその時々の感じたことを、時系列に書かせていただきました。
この章では、今回SNSでの論争を巻き起こした三つの事象に関する私の論考を、その後明らかになった事実を加えて、それぞれ文章にまとめさせていただきたく思います。
1.土足で椅子を踏みつける行為
土足で椅子を踏みつける行為は、問答無用で許される行為ではありません。行為をしまった方は反省し、二度と同じ行為をされることはないことを誓ってくれていると願っています。
クラブスタッフ時代、コロナ禍の一時に限られますが、スタジアムの座席に除菌剤をスプレーし、雑巾で綺麗にして各試合に臨んでいました。スタジアムの座席は今もなお、多くの方々の手によって綺麗に保たれているのだと思います。そのような方々の「綺麗な椅子で来場者を迎えたい」という気持ちやその仕事へと、思いを馳せていただきたいと思います。
ただ、今回は行為そのものではなく、人格否定とも受け取れる言葉が広島サポーターの方にも名古屋サポーターにもあり、行き過ぎたレッテル貼りが横行しているようにも感じました。
誰もが失敗をしてしまう可能性があるのが、この社会だと思います。やはり「罪を憎んで人を憎まず」を忘れてはならないなと思います。
また、広島サポーターの方々のポストによって今回の蛮行が多くの目に晒され、今後どのスタジアムにおいても、そういった行為が起きないようにと戒める効果があったのならば、そういったポストに一定の効用があったと言えるのかもしれません。
しかしながら、その「SNSへポストする」という行為については、私自身多分に思うところがあり、次の項で後述させていただきたく思います。
2.立ち入り禁止エリアへの進入行為
日本は法治国家であり、全ての人や組織が法律に従うことを基本としています。国民の権利や自由は憲法によって保障され、政府や司法機関は法律に基づいて公正に判断や執行を行います。
そして、法に加えて、地域や組織ごとに設定されたローカルルールを守ることは、そのコミュニティに所属する人間に求められます。それらのルールは、社会的秩序や円滑なコミュニケーションを保つために機能しており、地域や組織とそこに所属する構成員との間の信頼や共存に寄与します。
スタジアムにおいても例外ではなく、試合運営者が設定したルールを、来場者が守ることは基本です。
故に、「立ち入り禁止エリアの設定」というルールを侵してしまったのであれば、反省することが第一に求められますし、場合によっては謝ることも必要になってくるのだと思います。
名古屋グランパスのサポーターによるポストの中で、その行為を正当化するポストや設定されたルールが悪いという趣旨のことを書かれていた方々が居たのは、とても悲しいことでした。加えて、それらの投稿者は、各々のポストの以前にも以後にも、少なくともSNS上においては、行為に関する反省の弁を述べられていません。
行為について何かを弁明したいのであれば、先ずは自らのルールを侵した行為に対する見解を表すべきではないでしょうか。そしてその後に、行ってしまったその行為に関する背景や思うところを続けるべきではないでしょうか。
やってしまった行為を棚に上げて、自らが原因となったと信じる事項だけへと責任転嫁をすることは、愚の骨頂であると思います。
そういったこと自らの考えを日常生活内において披露するのではなく、SNS上で表現したいのであれば、脊髄反射的に複数のポストを徒然なるままに投稿するのではなく、一つにポストにまとめるか、基となるポストにツリー状にポストを続けて投稿することで、自身の見解が社会へ届くように発信するのが求められるのではないでしょうか。
そうすれば見解が切り取られ、余計な広がりや炎上を招く可能性を低減できると思います。やはり、140字という限られた文字数の中で、伝えたいことを収まり切ることは、なかなか出来ることではありません。
何か思うことは、日本において「思想および良心の自由」として保障されています。そして、その思いを表現することも「表現の自由」で保障されています。
しかし、SNS上では、各プラットフォームにおいても、ローカルルールが存在します。
前述の通り、社会においてルールは守らなければならないですし、それでも自らの思いや意見を感情に任せてSNSへとポストしたいとするならば、Xルールにある通り、そのポストを誰もが目にする可能性があり、そのポストへの責任が発生することを忘れるべきではないと思います。Xのルールで推奨されていない種類のポストをしてしまったにもかかわらず、「後は何も知らない」「外野が何か言っていることには関与しない」は、Xを利用する身として正しい態度と言えないのではないでしょうか。
加えて、そのようにして脊髄反射的なリアクションが届き始めると、投稿主は「通知を切ったから、何を言われても知らない」と自らのポストの責任放棄するのを目にする機会が増えていることに憂慮しています。投稿主の心身はその責任放棄によって守られるのかもしれませんが、それを目にした人々はそのポストの内容を忘れはしないし、その無責任な発言はデジタル上に残り続けます。そしていつの日か、その投稿を目にした人が、新たなヘイトを募らせる可能性があるのです。
誰かを傷つける可能性を含有する自分の思いを正しく伝える努力をしないのであれば、更にはそのポストへの責任を放棄するのであれば、脊髄反射的な反応が容易に想像できるSNSへのポストをするべきではないのは明らかです。それが開かれたコミュニティに関与する人間の務めだと思います。
ましてや、愛するクラブに関することであれば、その愛するクラブに携わる人々、そして自分以外の応援したり関わったりする他の人々がどう感じるか、へと思いを馳せるべきで、それがJクラブという公共財に関与するファン・サポーターの最低限の努めではないでしょうか。クラブはサポーターにとっての私財では決してありません。
重ね重ね、「自分は応援しているだけ」「選手やクラブに思ったことを言っているだけ」は、クラブとファン・サポーターの間では成り立ち得ないです。そういった相手を思いやらない不遜な態度が、誹謗中傷や罵詈雑言を生み出すのだとさえ、私には感じます。
SNSにおいて、
ローカルルールを遵守し、
自らの言葉に責任を持ち、
その思いが伝わる形でポストする。
が増えていけば、昨今のSNS上での悲しい事象は減るのではないかと思います。だからこそ、脊髄反射的なポストはよくないと、これ迄のXやnoteにおいて発信し続けてまいりました。
理想論だと言われるかもしれません。それでも、誹謗中傷と罵詈雑言を日常的に浴びるという経験をしたことのある身として、言葉にしていきたいと考えています。
そして、本件に関連してもう三つ、私の考えを表明させていただきたく思います。
一つ目。名古屋グランパスのサポーターによるエディオンピーススタジアムでの立ち入り禁止エリアへの進入と、他クラブのサポーターの観戦態度との比較について。
前述の通り、立ち入り禁止エリアへの進入はあってはならないことです。
ただ、「名古屋だから…」や「他のクラブはしていないのに…」という言説が見受けられたことに対し、思うところをこの項で失礼いたします。
2024シーズンにサンフレッチェ広島がエディオンピースウイング広島において主催された試合において、ゴール裏最前列と2列目の立ち入り禁止というルールが存在しなかったと思われる試合があるようです。
先ず、5/6のJ1リーグ戦「サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」の対戦時には、下記動画で確認できるように、ルールが設けられていなかったと思われます。
そして他クラブとのエディオンピースウイング広島におけるJ1リーグの試合、直近4節に限りましても、それぞれのアウェイクラブのサポーターが最前列で応援している画像や映像が、SNS上において確認できます。
◇7/14 J1 23節 アビスパ福岡戦
◇8/11 J1第26節 セレッソ大阪戦
◇8/25 J1第28節 柏レイソル戦
◇8/31 J1第29節 FC東京戦
私が「思われる」「見つかります」といった曖昧な表現しかできないのは、サンフレッチェ広島の公式サイト「観戦ルール&マナー」に格納されている「ビジターチーム ファン・サポーターの皆様」という各試合における観戦要項のPDFが、URLから判断するに「9/3」に更新されていると思われ、ルヴァンカップ 名古屋グランパス戦以前の「観戦ルール&マナー」を各試合毎に確認できないためです。
くれぐれも重ねて、このたびのルヴァンカップ 準々決勝第2戦で設定されたルールを、名古屋グランパスのサポーターが守らなかったという事実は揺るぎませんし、そのルールを守らない行為は許されるものではありません。
しかしながら、前述の通り各試合毎の「観戦ルール&マナー」を確認できませんが、エディオンピースウイング広島でのJ1リーグでの試合においてアウェイクラブのサポーターが最前列で応援している姿が確認できる以上、今回の立ち入りエリアへの進入行為を咎める際に、「他のアウェイクラブのサポーターは守っていたのに」のような他クラブのサポーターの方々を引き合いに出されたり、比較されたりして名古屋グランパスへの言及をすることはフェアではないと感じます。
最前列と2列目が立ち入り禁止という他クラブの試合時とは異なるルール環境下で起きた事象と思われるので、ルールを守らなかった行為そのものにフォーカスして、言及したり咎めていただきたいなと願います。
「1.土足で椅子を踏みつける行為」の項でも書きました通り、悪事を否定しても、人格は否定してはいけないと思います。一部の行動を全体の評価へ拡大解釈することは、やはりあってはならないのではないでしょうか。昨今の行為そのものではなく、問題と関係のない事象を用いてのレッテル貼りの横行とその危険性には、重ねて警鐘を鳴らしたいと思います。
二つ目。当該クラブ以外の、他クラブサポーターによるリアクションについて。
今回のSNSでの論争に、サンフレッチェ広島と名古屋グランパス以外のクラブのサポーター(と思われる)のアカウントによるリアクションがかなり見受けられました。
※キャプチャは一例です。
その中には「Jリーグ全体の問題になり得るのだから、言及しても良い」ということをポストされていたアカウントもありました。
確かにJリーグ全体の問題になり得るのかもしれませんし、その大局観の視点には感心させられるばかりです。しかし、それでも私はそのようなポストはない方が良いと思っております。理由は、その第三者クラブのサポーターによるアカウントがJリーグ全体のことを慮ってポストしても、そのアカウントが応援するクラブの他のサポーターによる便乗の呼び水になってしまうからです。
今回も一つのアカウントが投稿した後に同じクラブのサポーター(と思われる)のアカウントが雨後の筍のように湧いてきて、責められるべき行為への言及ではなく、関係のない事象に関連させるポストがたくさん広島サポーターのポストに紐づく形となり、収拾がつかなくなりました。それによって、広島サポーターの方が正しくメッセージが伝わらないと、元ポストを削除されたものもありました。
そのように、論争に便乗して日頃快く思っていない対象者へ攻撃するチャンスとしか捉えないアカウントにより、最初の投稿者が意図しない誹謗中傷に繋がってしまった事例は過去にも枚挙に暇がありません。それによって起こってしまうのは、集団的リンチとも言える対象者への袋叩きです。
重ねて、事象の当事者ではないクラブのサポーターによるポストやリアクションは、例え投稿者がどんなに正義を掲げようとも全体の有益へとは繋がることが多くはないと私は考えます。
故に、当事者でないクラブサポーターはそういった負の連鎖になりうるポストやリアクションを面白がってするべきではないと思います。
三つ目。悪行をSNSへ投稿する行為について。
最初に結論を書きますと、悪行を目にしたり発見した際の、その様子の画像や動画をSNSへ投稿する必要性を、私は感じません。
クラブスタッフ時代、試合後の座席に残ったゴミなどを撮影し、「ルールを守って欲しい」というような投稿を目にするたびに、直にクラブへ報告していただきたい、と何度も感じていました。そうすれば対処法はいくらでもあるのです。
しかし、そういった愚行や蛮行の画像や動画がSNSという場に一度でも放たれてしまうと、そもそもその行為者にメッセージが届くとは限りませんし、届かない場合はクラブにとってのマイナスプロモーションにしかなり得ません。
そして、そういった画像や動画はプラットフォームが運営される限りデジタルタトゥーとして残り続け、場合によっては転載され、新たな火種としてデジタル上で燻り続けるのです。更には、凡そサッカーメディアとも呼べない、舌舐めずりをしてネタを待っているだけの、とあるメディアにとっての格好の養分にもなりかねないのです。
なお、「啓蒙の意味合いもあるのだ」という考えのもとポストしているんだ、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、スタジアム観戦に関することは、試合運営者に任せるのが最善であると私は考えます。
ルールも守らない行為を目にしてしまった場合は、然るべき機関が事態へと迅速に関与することが、その解決への最短の最善策であります。
また、試合運営者であるホームクラブへ通報し、その対応を委ねてしまうことは、「餅は餅屋」の発想で、発見した瞬間に湧き上がった衝動も落ち着かせることができ、精神衛生にも落ち着きをもたらしてくれるのではないでしょか。
重ねて、悪事を目にして衝動を感じてしまった場合には、その衝動はSNS上へと放つべきではないと、クラブスタッフとサポーターのハーフである私として推奨したいです。
確かに、そのような晒すポストをすると、自らの溜飲を下げられますし、一時の仲間内コミュニティからの承認を得られ、そうやって衝動を抑えようとする人もいるのかもしれません。しかし、「悪事は悪事」であるが故に、その行為の是非を世の中へと解き放ち、SNS上で議論する必要性が無いのは明らかです。
そのような自明の悪事を、衝動のままに自ら応援するクラブサポーターを名乗りながらSNSという衆目の面前に解き放つことは、周り回って愛しているはずのサッカークラブやサッカーコミュニティにとって有害にもなり得る発信になってしまう可能性があることは、頭の片隅に置いておいた方が良いと思います。
晒すポストをし、その行為単体ではなく、その行為者の所属するコミュニティや応援するクラブへと主語を拡大してしまった場合、将来的に似た行為が身内から発生してしまった際に、その行為者を「一部の〜」と切り離すことに説得力が無くなってしまいます。そのようなクラブのブランドにとって取り返しのつかない事態になってしまう可能性もあります。
以上より、“悪行をSNSへ投稿する行為” には投稿者自身の自己満足以外に必要性は感じられず、全体的には非有用性しかないと思うのです。
3.アナウンス後のドラムの音について
延長戦が終わった21時過ぎの、スタジアムにいた誰もがPK戦の準備をしている頃。スタジアムDJの貢藤十六さんによる鳴り物に関する注意喚起のアナウンスがスタジアム中に流れたように記憶しています。
その時、かくいう私も120分の闘い直後の興奮状態かつPK戦が始まる高揚感の中にありましたので、貢藤さんのアナウンスの内容を全て聞き取れませんでした。「この後は鳴り物を鳴らしてはいけないんだな」程度の認識でした。
ですので、そのアナウンスがなされた後にもサンフレッチェ広島のゴール裏からドラムの音が聞こえてきたことが不思議でしたし、更にその後にも貢藤さんのアナウンスがあったので、その広島のドラムへの注意喚起の意味合いがあるのだと思っていました。
そして、更に更にその後に名古屋の「名古屋グランパス」のコールがドラムの音と始まったことに「ドラムを鳴らしてはダメなのでは?」と思いながらもコールを続けてしまいましたし、それに対しサンフレッチェ広島のゴール裏からブーイングが発生した際には、隣に座っている方に「そもそも広島がアナウンス後にドラムを鳴らしてましたよね?」と話しかけてしまいました。
そういった時系列で認識していたので、試合後にサンフレッチェ広島の方が投稿された名古屋グランパスのドラムの音を咎めるポスト、そして名古屋グランパスのドラムの行為そのものへの言及は避けていました。
そして、本件に関しては、サンフレッチェ広島へ電話で問い合わせされ、その内容をご自身のポストにまとめられた方がいらっしゃいます。
結論、サンフレッチェ広島のドラムの音に問題が無かったように、名古屋グランパスのゴール裏から発せられたドラムの音は、何人からも咎められる必要性は無かったということになります。
本件に関しては、事象を正しく把握していないアカウントやスタジアムにいなかったと思われるアカウントによる名古屋グランパスを揶揄するポストに、それに便乗する他クラブサポーターと思われるアカウントによるリアクションによって燃料が投下され、誹謗中傷に繋がってしまいました。
やはり事実を伴わない憶測や思い込み、そして思い違いは怖いですし、そういった謂れなきことによる誹謗中傷は本当に悲しいと感じました。
そして、この事実と異なる印象を持ってして名古屋グランパスを攻撃した誹謗中傷のポストは今もなおXにおいて消されないままに存在しており、今後もデジタルタトゥーとして残り続けてしまうのだと思うと憤りを感じてしまいます。こういった言説が、大規模言語モデルに格納されていくのです。
更には、投稿アカウント自身、事実を知らないまま名古屋グランパスへ憤りを感じ続けていくのです。そういった可能性に、頭が痛くなりますし、やるせなさしかありません。
春先にも同様の怖さと悲しみを感じましたが、サンフレッチェ広島の皆さまや他クラブの皆さまには、そのような怖さと悲しみに遭遇したり体験して欲しくないと心より願っています。
終わりに - 来シーズンも広島遠征へ。
今回、名古屋グランパスのサポーターが起こしてしまった2つの行為、「土足で椅子を踏みつける行為」と「立ち入り禁止エリアへの進入行為」というルールを守らない行為は、反省しなければならないもので、今後繰り返してはならない行為です。
何より、その行為に心を痛められたサンフレッチェ広島に関わる方々の心情を察するには余りがあります。
ただ、今回の事象が、仲間がルールを侵す行為をするのを目にした際に注意し指摘し正し合える、そのようなコミュニティにJリーグ全体が進化する改めての一歩になるのならば、今回多くの人が感じてしまった悲しみや怒りや苦しみにも、意味があるのだと思えるのかもしれません。
6月のとある試合において、私は近くにいた野次を言い続ける方の声に負けじと張り合うようにチャントとコールを叫び続け、私の周囲の方々も呼応してくださり、以降はその野次を打ち消すことができた、という経験があります。
だからといって、ゴール裏以外で野次を聞いてしまった場合に対処できるかの自信はありません。ただ、スタジアムに集うひとり一人の思いや言動が最高のスタジアムを作り上げる礎になるんだ、ということをご理解いただけるのではないでしょうか。
それはスタジアムだけとは限らず、SNS上でも同じであると思います。
私がクラブスタッフとサポーターとの「ハーフ」でいられるのも残り僅かだと思います。それどころか、既にその鮮度は失われているのかもしれません。
そのような私が発する言葉に、眉を顰める方、良い気持ちをされていない方、私のXのアカウントをブロックやミュートされている方、無視するだけでなく私に謂れないことを流言飛語される方、それでも直接言葉を向けてくれる方、様々な方がいらっしゃることを、発信するたびに感じています。
そういった状況下においてもなお、私の発信に何かを感じてくださる方がいて、ほんの少しでもJリーグが取り巻く状況が前進することに繋がるのなら、今回のような人を傷つけ悲しませる事象に対する発信だけでなく、Jリーグの楽しさや喜びや素晴らしさに関しても、言葉にしていけたらと考えています。
そして、広島は未だ未だ行けていない場所がたくさんあるので、来シーズンもまたエディオンピースウイング広島へ遠征できると良いなと思います。
以上となります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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