見出し画像

循環を古き日本に学ぶ

日本が世界からどう見られているのか考えたことがありますか?日本と言えば、… という言葉に続く言葉は何でしょう?京都、東京、富士山、安全な国、寿司…などでしょうか?20年程前、私がイギリス人の夫に日本で出会った時、夫は『テクノロジーの国』『最先端を生活に取り入れる国』というのを日本のイメージとして来日したようでした。実際に、夫は夜でも賑やかな”眠らない街”に驚き、居酒屋から出て歩けばタクシーが寄ってくるといい、トイレはセンサー機能やボタンがありすぎて逆に混乱する程だったようです。生活に不便がなく、コンビニ食の質の高さに驚いて、身近に物がありふれ(過ぎ)ているということは実際に生活してみて感じたようです。私は生まれてからどっぷりと日本に浸かって生活していたので、言われて初めて気づく日本ならではの不必要に“便利な”生活を当たり前のことだと思っていました。2011年東日本大震災の影響で3人の子供たちを連れて夫の実家があるイギリスのケンブリッジ州に避難してからこの10年、今度は私が日本の外に出た環境で生活しているのですが、外から見る日本は『素晴らしい文化を持ち、独自の生き方を持つ国』です。外に出たからこそ、見えたこともあります。今は20年前とは違い、日本製の家電に拘る外国人も減り、日本車も選ばれ方が変わりました。夫が20年前に外から見た日本のイメージはある意味世界と同化し、ハイテクな部分を取り除いた時に残ったものは独自の文化や古き良き日本なのだと私は思っています。世界規模で環境問題やサステナブル(持続可能な社会)を意識せざるを得ない状況に置かれているわけですが、そんな中私が見つけた日本は、現代の日本の便利さではなく、昔からある変わらない生活の知恵や地方に伝わり守られてきた伝統技術と工芸です。こんな風に考えるようになったきっかけとなったのは、こちらで生活し始めてから経験した誕生日やクリスマスです。必要以上のプレゼントの多さに驚き、それと共に使われる大量の包装紙やセロテープの異常さ、そこから出る次の日の家庭ゴミの量に胸が痛みました。何とかできないかと考えていたら日本の風呂敷で代用して繰り返し使うことで、少しでもゴミが減らせると気付きました。そこからいろいろ調べていくうちに日本の古くからある文化や慣習が実はとても環境に優しいものだとわかりました。刺子は500年以上前に寒い東北地方で厳しい寒さを凌ぐ為に、生地の補強に使われました。ほつれたら、新しいものを買うのではなく、直して使います。刺子で綺麗なパターンも作れます。日本語の襤褸は『BORO』としてファッションにもなっていて刺子のワークショップは人気があります。個人的には、どうしても同じように使えないものは別なものに使用法を変えます。昔母から教えてもらった雑巾の縫い方は今かなり重宝しています。古着はチャリティーショップに回すか雑巾に、ベットシーツは正方形に切って風呂敷使用に、壊れた陶器は金継ぎで継ぎ直して美しく生まれ変わらせてまた新しい命を吹き込みます。私が考えるサステナビリティーとは生活にゼロを作ることではなく『循環させること』。例えば、現代の生活から環境に悪影響を与えるであろうものを全て排除するのは難しく、便利さ故に作ってしまったものをなくしていくのは容易ではありません。だから、私がもっとも大事にしている事は今あるものを長く使うことと、他の人の役に立つなら回すこと。また新しく買うものはなるべく自然素材を使っているものを選び、これ以上使えないところまできたら土に還す。日本には畳や木造建築、竹素材でできた数々の日用品があります。着古して色褪せた衣類を藍染で綺麗な藍色に仕上げてくれる職人さんもいます。日本各地で伝統を守り焼かれる陶器は、自然素材を使い丈夫な食器として私たちの生活の一部となります。自然素材を使っているものは土に還りまた他の物に生まれ変わります。テクノロジーにおける品質や価格は世界が日本に肩を並べても、受け継がれてきた日本伝統の中に秘めた『環境に優しい循環』は日本にしかない世界に誇るべき『技』なのだと思います。

追記: 写真はイギリスのノーサンバーランド北部にあるアニックの英国一大きな歴史ある古本屋。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?