見出し画像

【Endaevor Article】エンデバーが今、ウクライナオフィスをローンチした理由

2022年にウクライナに爆弾が投下され始めると、多くの起業家は苦渋の選択に直面しました。自国に留まって戦いを支援するか、事業の一部またはすべてをウクライナ国外に移すか、決断しなければならなかったのです。

ウクライナは常に素晴らしい才能を世界に誇っていたものの、戦争が続くにつれ、その才能はますます他国に利益をもたらし、ウクライナのイノベーションの長期的な将来を脅かしています。Ukrainian Startup FundとPolish-Ukrainian Startup Bridgeの調査によると、ウクライナのスタートアップ創業者のほぼ3人に1人が、少なくとも部分的に会社を国外に移転しており、この傾向は過去2年間で増加しています。2022年に戦争が始まって以来、資金調達活動が増加しているにもかかわらず、多くのグローバルベンチャーキャピタルファンドは、リスクを軽減するために創業者にウクライナ国外に移転するよう圧力をかけています。ウクライナのエコシステムが戦争後に再建するには、国際的な支援が必要であることが明白です。

エンデバーで多くの国への進出を率いてきた中で、私は起業家のエコシステムが自然の境界に縛られないことを目の当たりにしてきました。戦争が長引けば長引くほど、ウクライナの創業者が自国で事業を営むことが難しくなります。私たちは、これらの才能ある起業家たちが他のテクノロジーエコシステムに吸収され、ウクライナのコミュニティに戻って成功と知識を再投資する機会を失うという現実的なリスクがあると考えています。

ウクライナのスタートアップ創業者のほぼ3人に1人が、少なくとも部分的に会社を国外に移転しています。

このような事態が発生しないようにするために、私たちエンデバーは今月ウクライナに新しいオフィスを設立することを決めました。
 
「かつては小さなマーケットしかありませんでした。しかし、消費者の能力が低下したため、今ではマーケット自体、事実上存在しません」と、エンデバー・ウクライナの新マネージング・ディレクター、Sviatoslav Sviatnenko氏は語っています。
 
彼はかつてウクライナでスタートアップ アクセラレーターの Mission Possible を立ち上げています。「ウクライナにはシード向けのVCファンドはいくつかありますが、ウクライナのスタートアップに特化したシリーズ A+ファンドは 1 つもありません。そのため、スタートアップが 1,000 万ドルまたは 1,500 万ドルの資金を調達する必要がある場合、どこか別の場所を探す必要があるのです。」

エンデバー・ウクライナの新オフィスローンチ直前でさえ、ウクライナの起業家たちはポーランドで最初のFounders Campに集まり、エンデバーを自国に導入する勢いを加速させました。

次世代に焦点を当てる

世界中の各オフィスと同様に、キエフに設立される新しいウクライナ本社は、国内に拠点を置いているか現在海外にいるかを問わず、ウクライナの影響力の大きい起業家を探し出し、セレクションを行い、そして支援します。私たちの目標は、今日の起業家の成長を加速させながら、ウクライナのエコシステムとの繋がりを維持することです。エンデバー・ウクライナは、彼らが次世代のウクライナの起業家を指導、投資、アドバイスできるように支援していきます。
 
ウクライナの起業家たちは、米国、カナダ、ポーランド、ポルトガル、スペインなどの国々に移住しています。これらの国々はスタートアップの中心地でもあり、彼らの成長をサポートするためにエンデバーも拠点を置いています。
 
私たちの最終的な目的は、テクノロジー・エコシステムが今だけでなく、戦争が終わった後にも繁栄できるようにするフライホイール効果を生み出すことです。

2023 年 10 月、エンデバー・ポーランドはワルシャワで初のUkrainian Tech Meetupを主催し、ウクライナのテクノロジー・エコシステムの起業家、投資家、キープレーヤー達を集めました。

なぜ今ウクライナに進出するのか

戦争中の国に時間とリソースを注ぎ込むのは、当然の判断ではありません。2020年にウクライナを新しいオフィス設立エリアの対象として調査をし始めましたが、エンデバーの計画を戦時中のウクライナにいつ持ち込むかという決断は難しいものでした。しかし、それはウクライナのエコシステムに明らかな可能性がなかったからではありません。
 
Creatio、Grammarly、GitLab、People.aiなど、ウクライナにルーツを持つ8つの企業がすでにユニコーン企業に成長しています。戦争前、ウクライナはさらに多くの企業を生み出す軌道に乗っているように見えました。そしてウクライナには素晴らしい起業家の成功物語がいくつもあります。WhatsAppの共同創設者であるboth Jan KoumとPaypalの共同創設者であるMax Levchinはともにキエフ生まれです。この国は一貫して優秀なエンジニアで知られています。最近のPentalogレポートでは、最も優秀な開発者を擁する国の世界ランキングでウクライナは4位にランクされています。

2023年、中央および東ヨーロッパのスタートアップの価値は2,130億ユーロで、2019年以来2.4倍に成長しました。ウクライナは280億ユーロでポーランドに次ぐ第2位の貢献国です。ウクライナは2023年以降、4つの新しいベンチャーキャピタルファンドも追加しており、成長投資家のHorizon Capitalは今年初めに3億5,000万ユーロのファンドIVをクローズしました。

ウクライナは2023年と比較し、世界起業家指数で3位上昇しています

ウクライナの起業家達は、ICONIQ、Andreessen Horowitz、Lightspeed、Lux Capital、Insight などのトップ企業から支援を受けています。
 
これらの創業者たちは野心家で、同国のスタートアップ企業の3分の2は世界市場に焦点を置いています。そして、ウクライナの起業家たちは戦争が始まって以来、大企業を築き続け、多額の投資を集めてきました。
 
ウクライナで設立された人間による家庭教師を提供する教育テクノロジー企業Preplyは、2023年7月にシリーズCラウンドで1億2000万ドルを調達。ソフトウェア開発会社Creatioの別のウクライナ生まれのCEO、Katherine Kosterevaは、今年6月に12億ドルの評価額で2億ドルの資金調達ラウンドを完了しています。
 
私たちは、ルールベースの共同投資ファンド「エンデバー・カタリスト」を通じて、成長を妨げている資金ギャップの一部を埋め、国際投資家の間で有望なウクライナの起業家の知名度を高めていきます。

しかし、ウクライナのスタートアップ企業が海外に進出するのは資金不足だけではなく、メンター不足も深刻です。「シリーズ A/B まで規模を拡大した企業は、非常にカスタマイズされた特別なアドバイスを必要とし始めます」とKatherine Kostereva氏は付け加えます。
 
「同じような困難なマーケットや環境で成長してきたメンターからのアドバイスが必要です。」これが私たちの活動の核心であり、エンデバー・マルチプライヤー効果につながります。これは、起業家とともに行う仕事が、次世代の創業者を鼓舞し、指導し、投資することで恩恵をもたらすというものです。
 
そして、ウクライナのスタートアップ企業に投資し、指導することで恩返しをする(そしてすでに恩返しをしている)成功したウクライナ人は、決して少なくないことが分かってきました。エンデバー・ウクライナの取締役会には、MacPaw を創業し、今もウクライナを拠点とするOleksandr Kosovanのような野心的なウクライナ人起業家、CEO、投資家や、WhatsApp のファンディング・デザイナーで、現在はベンチャーキャピタル企業 STRATMINDS のパートナーであるAnton Borzovのような国際的な人物など、多くの人物が名を連ねています。

エンデバー・ウクライナの創設取締役会には、ウクライナ国内外で最も著名な創業者、投資家、エコシステム構築者が名を連ねています。
 
ウクライナへの侵攻が続いており、人々が依然として避難を余儀なくされている状況で、ウクライナの強靭な起業家たちが戦後も力強く立ち直れるよう支援するにはどうすればよいかと心配し始めるのは時期尚早に思えるかもしれません。しかし、そうではありません。
 
ウクライナは、私がエンデバーで手がけた中で最も困難な新オフィス立ち上げの 1 つですが、最もやりがいのある立ち上げの 1 つでもあります。ウクライナの創業者を故郷に定着させると同時に、彼らが現在どこにいてもグローバルな仲間のコミュニティとつながることができるように支援することで、エンデバーは、ローカルそしてグローバルのスタートアップ・コミュニティとともに、戦後の盛り上がりの土台を築くことができると信じています。
 
ウクライナのDragon Capital CEO、Tomáš Fiala氏は、The New Voice of Ukraineに次のように語った。「ウクライナにとって、戦後の7500億ドルよりも今援助を得ることの方が重要なのです。」

原文記事はこちら


いいなと思ったら応援しよう!