#46「季刊びーぐる」第50号 入選作「ただいま」
「季刊びーぐる」の第50号に「ただいま」という詩が入選した。
相性の問題なのかわからないが、詩誌「季刊びーぐる」には毎回投稿をしていて、2020年はよく掲載していただいている。第48号(2020/07)は「夜灯」という作品を投稿して「選外佳作」、第49号(2020/10)は「新宿人類史」という作品で「入選」だった。それより前は2019年の1月に「選外佳作」があり、さらに前はもう何年も前のことになる。
それでも、数ある詩誌のなかでは僕の詩の掲載率で言えば抜群に高い。最近「ココア共和国」という詩誌が投稿のしやすさにネット詩人らがよく利用しているものがあるが、そこには僕はまったくと言っていいほど通らない。一篇だけ12月号に載ったくらいだ。そもそも、「ココア共和国」は30行以内という縛りがあって、僕の詩はそこそこ長いのでかなり相性が悪い。
短いものも書けないといけないとも思い、数か月まえに書き溜めたものがたくさんあって、それを小出しにしてみても、なんだか空振りに終わる。自分としては、他の掲載者よりはいい作品だと思っている分、ショックも大きいのでもう投稿はやめようかと思い始めている。
ただ、動向として気になるのは「ココア共和国」の「やり方」だ。なかなか「詩」が商売になりづらいところを、「ココア共和国」は「数」で圧倒している。通常、投稿詩が50篇近く載るなんてことはまずない。いいとこ10篇といったところだ。それが、「デジタル版」ではかなりの数が掲載されることになる。掲載されれば、「買っておくか」と手元に置いておきたくなるのが投稿者の心理だから、この「数」は同時に購入者を確保するシステムにもなっている。
毎月毎月、相当数の投稿詩のなかから佳作を選び、コメントをし、テンプレートができているとはいえ、それらを貼り付け、校正をし、新たな企画と自分たちの原稿を書いて……、という作業量は相当なものであろうから、それなりのキャッシュバックがないと難しい。そうした賭けに出た発行者たちには脱帽だ。実際のところ、どれほどの購読者がいるのかはわからないが、「詩誌」として運営していくにあたっての一つのモデルを示していると言えると思う。(ここで、「詩」は商売の道具ではない!などと野暮な話はやめよう)
さて、話は「季刊びーぐる」にもどして、今回掲載された詩は「ただいま」という詩だ。この作品は、たしか10月くらいに書いたものだった。そして、これが書けるまでには、それなりのステップがあった。それは、ある詩人との出会いである。
僕が「季刊びーぐる」に投稿をして初めて掲載されたときの選者は「細見和之」さんだ。彼は、僕の作品を二度連続で掲載してくださり、さらに「どんどん書き続けてほしい書き手である」とまで選評で書いてくださった方だ。どんな方なのだろうとずっと気になっていたが、細見さんの詩を読む機会はその当時にはなかった。
それが、2020年の『ほとぼりが冷めるまで』という詩集が出たのをきっかけに、はじめて細見さんの詩集を手にとったのだった。一、二篇読んだときに、その読みやすさに驚いた。さながら日記のように、自分と、その家族のことが書いてある。しかし、それが、紛れもなく「詩」になっていた。
こんなに力を抜いて詩が書けるのか。呼吸をするように、自然に書けるのかと思うと何かをひらいてくれたような感じがした。それからというもの、細見さんの詩集を手あたり次第に買っては読み続けた。すると、何か「詩」が一気に読めるような気になって、細見さん以外の詩集もよく手にとって、毎日のように読むようになった。
気づけば詩が書きたくなっており、何でもいいから書きたくなった。手のひらサイズのモレスキンリポーターをいつでも携えて、歩いている途中も、詩を書いたりしていた。そんなことはかつてなかったことで、毎日詩を書くことになった。といっても、一週間ばかりのことではあったが。
このときのことを「奇跡の一週間」と呼んでいる。毎日書けるなんて今迄になかったことだからだ。そして、このときの一篇が今回の「ただいま」という詩だ。「何でもいいから書きたい」というのはまさに「何でも」よく、道端に落ちているチラシだとか、新しい靴を履いてかかとが痛いだとか、そんなものを詩にしていった。「ただいま」はもちろん、帰り道でのことで、職場を出たときの妙な感覚を、そのまま詩に書いてみたというものだった。
いまはもうその感覚はどっかにいってしまっている。またあの詩集を読んだらスイッチが入るだろうか。次の「びーぐる」の投稿は2月の末。あと一か月で何が書けるだろうか。
なんとかがんばっていこう。
「季刊びーぐる」第50号、ぜひお読みください。
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