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2023年7月に観た映画の感想

あらすじ程度のネタバレがあります。特にオススメの映画にはタイトルのうしろに🌟つけてます。みた順で書いています。
以下のマガジンに過去の感想noteをまとめてあります。

スパイク・リー『ブラック・クランズマン』🌟

KKKに潜入するユダヤ人とアフリカ系アメリカ人のバディ
(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

アマプラで字幕版を鑑賞。“BlacKkKlansman”という原題がしゃれてますね。
白人(WASP)至上主義者の集まり「KKK(クー・クラックス・クラン)」に潜入調査をし彼らの暴力を阻止する、ユダヤ人の警官とアフリカ系アメリカ人の警官バディを描いた映画。実話をもとにしているらしいです。
舞台は70年代のアメリカ、主人公でアフリカ系アメリカ人のロンは市で初めての黒人警察官になります。一見白人にみえるアダム・ドライバー演じるユダヤ人の警官とバディを組み(本当はたしか三人組でしたが、この二人におもに焦点があたります)、ユダヤ人警官がKKKへの潜入を担当し、ジョン・デヴィッド・ワシントン演じるロンは、得意の「白人訛り」の英語を駆使し電話口での対応を行います。ユダヤ人も黒人もKKKの敵なので、かなりハラハラします。アイデンティティに揺さぶりをかけにきます。
途中ロンは黒人の権利をもとめる団体の幹部とも接触をし、なんとその女性と恋人同士になりますが、彼の立場はほかの黒人からすれば「裏切り」そのものです。対立構造に見えるものは完全な二分法では考えることができず、グラデーションになっていたりあまたの例外が間に存在するはずなんですが、対立(?)のただ中に立たされると「こっちかあっちか、どちらか選べ」みたいな突きつけられかたをされているように思ってしまうものです。そんな中、ロンは自身のルーツやアイデンティティをうまく組み込んだ回答を切り拓きます。
この映画はほとんどが半世紀ほど前の出来事を描いていますが、ラストの映像でどん底に突き落とされるような思いになります。半世紀たってもこれなのか、現実の映像はこんなにも暴力的なのか、とかなりの衝撃をうけました。観て損はしません。おすすめです。

ケヴィン・ルイス『ウィリーズ・ワンダーランド』

ニコケイに立ち向かう殺人アニマトロニクス
© 2020 LSG2020, Inc. All rights reserved.

アマプラで字幕版を鑑賞。大人気ホラーゲーム『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(FNAF)』を彷彿とさせる、というか設定ほぼ丸パクリのパニック?ホラー映画。まちがいなく主演のニコラス・ケイジを楽しむ作品でしょう。
ニコラス・ケイジ演じる寡黙なカマロ乗りが事故り、事情から現金が必要になります。そこで主人公はバイトとしてその町の廃墟同然の娯楽施設の清掃を行うことになりました。娯楽施設のキャラクターらしいアニマトロニクスたちが不気味にたたずむ中、主人公は淡々と掃除をこなしていきますが……というお話です。
B級映画好きやFNAF好きなら一度観て損はないと思います。FNAFは迫り来るアニマトロニクスからどうにか生き延びる設定ですが、こちらはニコケイの殺戮スキルとお掃除スキルが高すぎるあまり、アニマトロニクスのほうがタジタジです。複数体登場するので、どのアニマトロニクスが善戦するか、是非確認してください。ちなみにニコケイが強すぎるため、途中で殺される用の若者たちが投入されます。

サンディアゴ・ミトレ『アルゼンチン1985』

©Amazon Studios

アマプラで字幕版を鑑賞。
舞台は軍事独裁政権の崩壊直後のアルゼンチン。1985年に崩壊した政権が過去に行った国民への弾圧の数々を、軍法会議ではなく民事裁判で訴えるさまを描いた作品。実話をもとにしており、実際の裁判の映像なども使われています。
コミカルに描かれている部分もあるためある程度は楽しくみることができますが、軍事政権の行った弾圧の数々の内容がかなりえげつなく、証言を聞いているだけでも結構しんどかったです。ストラセラ検事(画像中央の腕組みをした男性)率いるチームは、自分や家族が脅迫をうけても、その誰もが「全員刑務所送りにしてやる」と肝の据わっているとても頼もしいチームでした。
相棒の若き副検事(ストラセラの左)は、その血筋上軍事政権の恩恵を受けていた側でもあります。自身のアイデンティティにも困難を抱える中で、自分たちの可能性に疑問を抱えつつなんとか正義を貫こうとする姿勢にアツくなります。最後10分の論告のシーンは、正当な正論パンチをたっぷり味わうことができます。
すこし硬派ですが、かなり力の入った良作でおすすめです。

トマス・ヴィンターベア『アナザーラウンド』🌟

「高校で歴史を教える冴えない教師」
©2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

アマプラで字幕版を鑑賞。みんな大好きマッツ・ミケルセン主演のちょっと湿度のあるコメディ映画。デンマークの作品です。
「血中のアルコール濃度を0.05%に保つとうまくいく」というある哲学者の与太話を実践する、冴えない高校教師たちを描いたコメディ映画です。ご想像のとおり、彼らは教員なので業務中にも飲むのですが、やはりというかどんどん酒に人生を破壊されていきます。いわんこっちゃない。酒で一発逆転を狙ったところ良いことも悪いことも起こって懲戒免職待ったナシだけど、人生って素晴らしいかも!という感じの話です。
正直私はお酒をそんなに嗜まないし、肯定的な効果を得たことがないためそのへんは全く共感できなかったのですが、それでもとても素敵な作品でした。マッツの美しさはもちろん、全人類に共通するであろう「大丈夫になりたい」という切実な想いをいろんな形で感じました。コメディとは言っていますが、なんかずっと不穏さが根底に流れているところも好みでした。テーマソング?の”What A Life”が超素晴らしかったです。そのときのマッツのダンスも。たまにBGMに流したい映画でした。

ルーカス・ドン『CLOSE/クロース』

レミとレオ
© Menuet / Diaphana / Topkapi Films / Versus Production 2022

劇場にて字幕版を鑑賞。
小さい頃から超仲良しなレミとレオは(レオいわく、「兄弟みたいなもん」)、中学校にあがるとその親密さに怪奇の目を向ける周りの子ども達から、その関係性を(おもにセクシュアルなものとして)茶化されるようになります。ただ今まで通り仲良くしていたいレミと、「茶化されるような関係なんだ」と居心地の悪さを感じ始めるレオ。レオは徐々にレミと距離をとるようになり、最終的には決定的に二人の関係を破壊してしまいます。
親密な関係の崩壊を語る物語において、非がある人間に一人称的に焦点が当たっているという点でこの作品はひと味違うのではないでしょうか。もちろん本当に悪いのは、そこに存在する他人たちのパーソナルな関係性に「恋人」「友人」「幼なじみ」「それじゃなきゃなんなの?」と、勝手に名前をつけ追い込む人たちです。「百合」とか「BL」もそう。いくら名前を付けてみたところで、人間関係はカテゴリに先立つものではないでしょうか。その上でレオも悪いとは思いつつ、ホモソーシャルの暴力性から二人で逃れるなんてことは、まだまだ子供だった彼にはできないことだったろうなとも思わされます。嫌な気持ちをしてでも仲間にならなきゃと思って間違った努力をしてしまう気持ちもよく分かる。だからこそ周りの人間の質の悪さが際立ちます。女子が複数人で「付き合ってるの?笑」とレオに詰め寄るシーンや、終盤の集団カウンセリング?のシーンではブチ切れそうになりました。
美術や画づくりは美麗で、衣装なども凝っていて素敵でした。ちょっとしんどい映画ですが、一度みてみて損はないと思います。ぜひ。

ジョーダン・ピール『NOPE/ノープ』🌟

最高&最強のきょうだい
© Universal Studios. All Rights Reserved.

アマプラで字幕版を鑑賞。
面白すぎて要所要所で椅子から立ち上がりながらみました。こんなやべー映画を劇場で観なかったのマジでやらかした……
ハリウッドで馬の調教師をするきょうだい(兄・OJと妹・エメラルド)が、突然現れたUFOもとい「アレ」を撮影することで一攫千金を狙います。ジャンルとしてはSFホラーですかね。
言いたいことは山ほどあるし、好きなシーンも数え切れないほどあるけど、御託はいいから今すぐアマプラなりなんなりを開いて再生してください。好きなシーンをひとつ紹介するなら、馬に乗るOJを仲間のジジイが手回しのIMAXカメラでシューティングするシーンでしょう。ここで騒げたのでおうちでみたのはある意味正解だったのかも?
これは上で紹介した『CLOSE/クロース』と同日にみたのですが、どちらも自分の鑑賞者としての姿勢を揺さぶってくるような作品で、いろんなドキドキを味わいました。ジョーダン・ピールの作品なので彼の過去作と同様社会的なメッセージももちろんありますが、それにしたって凄みが増している。ありえない。面白すぎる。リバイバル上映してくれ!!!!!!!!!

ホアキン・ドス・サントス、,ジャスティン・K・トンプソン, ケンプ・パワーズ『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』🌟

パヴィ~^^
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劇場にて吹き替え版を鑑賞。字幕と併せて2回目。前の月の感想記事や2023年上半期のベスト映画の記事で詳しく触れているので、あらすじ等が気になる方はそちらをご参照ください。
基本海外の映画は(ディズニー映画以外は)字幕派なのですが、スパイダーバースだけは吹き替えもみてほんとうによかったと思います。グウェン役の悠木碧さん、あなたは本当に天才です……感謝しかない……
キャスティングで納得がいっていないのはミゲルの関智一とホービーの木村昴です。ミゲルは原語版とキャラがかなり違って愛嬌があるように思え、それが面白くもありましたが、個人的にはもとの狂いかけブチギレ限界男のほうが好きでした。ホービーに関しては、原語版声優のダニエル・カルーヤ(NOPEのOJ!)が最高に最高にクール過ぎて、もちろんキムスバの演技が悪いとかでは全然なかったのですが、ダニエル・カルーヤには勝てませんでした。たぶんめざすクールの方向性が違いましたね。カルーヤのほうがアナーキーな雰囲気だったので好きです。
新キャラもたくさんでやはり一作目より面白さもパワーアップしててすごいなーと改めて思いました。グウェンのことがどんどん好きになりますね。今回は初っ端の彼女の語りから泣きながらみていました。今生きててよかった。最高。この2でがっつり作品のテーマが提示されたこともあり、さらに3も楽しみになりました。はやくみせてくれ!!!!

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