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学校現場から見た教育と社会の連携〜KBC学園 未来高等学校 顧問 上江洲 隆氏✖️エンカレッジ理事長 坂 晴紀〜

こんにちは、エンカレッジ広報担当のシロです。
6月23日、元中学校長会会長・現KBC未来高等学校顧問を務める上江洲隆氏をお招きして「学校現場からみた教育と社会の連携」をテーマに、エンカレッジ代表坂との対談を行いました。
「プラットフォームとしての学校」をキーワードに、具体事例も交えてとても充実した内容となってます。
今回はその様子の前編をお届けいたします。
併せて、前回記事「学校とエンカレッジ」もご覧ください。




地域の大人たちで運営する中学校内の無料塾

坂 晴紀(以下、坂):こんにちは、エンカレッジの坂です。よろしくお願いいたします。
今回は、私が大尊敬する上江洲隆先生に来ていただきました。
上江洲先生はKBC未来高校の顧問をやっていらっしゃって、その前は校長先生を歴任なさって。中学校校長会の会長もですね。
その中でいろいろと研修、改革なさったんじゃないのかなと思っています。その辺の実際に現場でいろんなことをやってらしたことを。
あとでちょっと出てくると思うんですけど、キーワードとしてですね、学校運営じゃなくて学校経営をなさってたのかなと思うところがありますので、その辺もちょっと興味深いところではありますので、お話を聞いていきたいなと思っています。

で、今日一番聞きたいところがですね、NPO法人エンカレッジとして今困窮世帯の児童の学習支援や居場所を運営しているんですが、その中で今ちょっと課題感としてはですね、一つは量的な問題ですね。
毎年1000名ぐらいの子たちをお預かりしているんですけど、対象世帯ってたくさんいるじゃないですか。大体僕が換算したら8万から9万名くらいいるんじゃないかな、就学援助児童だけでも3万名くらいいますので。ですので、毎年1000名というのは全然量的に足りてないですし。
で、うちに来た子たちは本当に生き生きとしてですね。学力もだいぶ上がってきていますし、精神的にも成長しています。もっと言えば、キャリア教育とか社会勉強というところすごくやってますので、すごく恵まれていると思うんです。
けど、やっぱり1000名ぐらい。だから、もっともっとこの支援の量を、輪を広げていくためには、やっぱり学校の中に入っていって、支援のお手伝いができないかなと勝手に感じているんですけど、そういうことがまず可能かどうかとか。
もう1点、2点ですね。先生の不登校支援をすごくいろんなところから耳にするんですね。あとは発達支援、その辺も精通しているということでですね、含めて、学校現場での課題だったりとか、対策を中心にお話を聞いていきたいなと思っています。
その前に、ちょっと上江洲先生と僕との出会いというか馴れ初めをある程度、お話していきたいなと思っているんですが、あれはえっと具志川東中学校で校長をされていた時ですね。


上江洲 隆 氏(以下、上江洲):そうですね、平成25年ですね。


坂:平成25年。8年ぐらい前ですか、に、初めてお会いしたんですね。ご紹介があって。


上江洲:話した瞬間にもうすごい波長が合うことがすぐわかって。子ども目線で動ける人ということ、すごい感じていたので、何かしら協力していきたいと思ってましたし。不登校の子どもたち含めていろんな学習支援をね、やってらっしゃることを聞いて、すごい私感動したのを覚えています。
本当に、そういう意味では今一番子どもたちの側に立って、ニーズに対応できるような取り組みをなさってたので、是非私も退職したあと関わりたいなあと思っていたんです。


坂:ありがとうございます、もう、褒めていただいて緊張するなあ。
その時に具志川東中の東塾という、無料塾を学校内で運営されてまして、そのお手伝いをさせていただいたということで。


上江洲:本当にあの時はですね、まず具志川東中近郊に塾がなかったということと、それから元PTA会長だった方が、子どもたちの学力をなんとか次のステップに上げたいという思いが大変強くて、それでボランティアの方を5名ぐらい連れてきて。その5人と共に最初東塾をスタートしました。
基本的には10月に入ってから入試の前日の週の土日まで。土日中心にですね、9時から12時まで3時間程度の学習なんですけど。
大事なことは自主学習、つまり自分で何かわからないことを見つけてきて、それを塾に来て解決していくということ、グループで解決してもいいし個人でやってきてもいいしその辺は自由に、ただわからない時いつでも相談に乗って答えられる先生がそばにいるということで。1年目が22名、2年目36名そして3年目44名、全員とも志望校に行けました。


坂:これは経済的に困窮してる世帯の子たちが対象に?


上江洲:いや、特にそうは規定していなかったんですよ。でも基本的にはやっぱり塾にいけない子どもたちが集まってきました。
で、塾を始めたらすぐもう、実は学力がですね、10ポイント以上上がりました、一気にその年。前年に比べたら。


坂:底上げができたと。


上江洲:できましたできました。だからやっぱり波及効果と言いますかね、この子たちが頑張っている姿を見て、同級生たちもいろんな意味で刺激になったのかなと思います。


坂:そうですね、私どものエンカレッジの支援教室の中でもですね、そういうのすごくあります。
学力の低い子たちが頑張ってる姿を見ると、学力の高い子たちがこう、お手伝いしてくれるんですね。そういうことはすごくあるように感じますね。


上江洲:それに気を良くして。近くの科学者の方にお願いをしまして、海山川地球、そういうテーマで理科的な分野を各学年に何回か授業をしてもらったりとかですね。それからあとは英検に向けての流れも。大学の元教授だったんですけど、「この期間来れますよ」ということで彼にお願いをして英検の授業をまた無料でやってもらう。すべて善意で回していた塾です。


坂:学校内の教員さんはあまりそこにはタッチしなかった?


上江洲:あまりというか全くノータッチですね。本当に地域の人と、それから外部の人と回していました。
地域の子どもたちは地域で育てるっていう意識が先生方にもありましたので、そこでエンカレッジの先生方もいろいろスケジュール面で工面していただいてですね、非常にスムーズに回すことができました。おかげさまで。



民間が学校に入ることについて

坂:私どもがお手伝いしたのは2年目ですかね。初めてそう言った、学校でお手伝いというのをさせて頂いて。今は小学校3校ほど、放課後のお手伝いをさせてもらってるんですけど、今のお話聞くと、民間の学習塾なりそういったNPOなりが学校に入ることに対しては全く?


上江洲:実は全く抵抗がなくて。実は英検もですね、前の学校では全部外部に委託してたんですよ。募集は学校でするんですけど。
先生たちは英語のストーリーの指導、スピーチコンテスト、会話のいろんなトレーニング、本当に多忙を極めておりましたので、業務を削減するということで。
英検であれば、外部に委託しても別に問題はないだろうということで。


坂:なるほどですね。
やっぱり私どものこの民間というかね、学習塾とかっていうのは学校になかなか入れないなあとすごくあったんですね。学校と塾ってあんまり仲良くないじゃないですか、一般的にですよ。
なぜなのかなてちょっと考えると、学習塾の先生って子どもたちや保護者から学校の愚痴を聞いたりするんですよ。愚痴を言ってるっていうか多分、学習塾がそれを煽ってるんですよ、その愚痴が、学習塾のニーズ、まあ要は授業料になるわけですよね。だったら塾でしっかり見てあげようっていうロジックがあって。
で、塾の先生はそれを煽ってしまうから、子どもたちがまた学校で塾の先生がああいうこと言ってたよ、とかって言って。ていうことを続けているのかなっていうのもちょっとあるんですね。
だからそういった中で、入らせてもらったっていうことはとても良かったなあと思っています。


上江洲:子どもたちがどのくらい学力があるのかっていうのは、なかなか学校のデータだけでは難しい部分もあるので、実は塾の方を学校に及びして、子どもたちの学力を結構事細かに聞いたこともあるんですよ、そういう意味では、是非塾も提携して、やはりお互いにゴールは一緒なので。そういう形でできないかなということお話した覚えはあります。


坂:そういった意味では、先ほど冒頭に話したような、今後そういった量的な支援という意味では、学校の中に入っていきたいな、ちょっと困り感高い子たちのお手伝いができるんじゃないかなあというふうに、勝手にそういうことを思っているんですが。




学校のプラットフォーム化

上江洲:平成28年か9年くらいにですね、国の方から「学校のプラットフォーム」という案が出まして。これ何かというと、学校はですね、とにかく生徒のことは非常によく関わっているので。家庭の状況とか、それから地域の状況、自治会も含めてですね、トータル的にいろんな情報を持っているんですよ。ですからそういう意味では、情報をうまく行政や関係機関と連携できれば、非常にうまくいくということはもう目に見えてますので、だからもっと学校をプラットフォームにして、そこにいろんな福祉関係、関係機関を入れ込むことで、効率が良くて効果的な子どもたちの支援ができるんじゃないかというのが発想のもとなんですね。


坂:その背景っていうのは?


上江洲:おそらく貧困の問題です。貧困家庭とか、シングルマザーで特に厳しい家庭なんかもあって。今例えばお父さんがいなくてお子さんを産んだとか、そういう家庭にもちゃんと市町村の方からですね、訪問して、いろんな相談できる窓口もあります。こういう子育て支援というのがやっぱり非行を軽減する大きなことになるんですね。


坂:すごく僕これは魅力的だなあと感じているんですけど、実際それが機能するのかなというところはどうなのかなあと。ちょっとクエスチョンなところがあって。


上江洲:最初おそらく機能しないと思います。機能するにはですね、そうですね。
ある中学校で、お子さんが6人の家庭があって、6人とも不登校だったんですけど、この子たちをなんとかしたいとずーっと思ってたんですよね。やっと2年目、ちょうど娘さんが3年生になった時に、その子が私に手紙を書いて。高校に行きたいという思いを、すごい切実に書いてあったんです。それを見て私はもう、決意をしました。
教育相談の先生と相談をしまして。幼稚園の担任の先生、小学校1年生、3年生、5年生、中学校1年生、3年生それぞれの担任全員と、それから管理職と教育相談の先生、市の児童家庭課、それから児童相談所の先生、2名ずつですね、あとは福祉の担当の係、20名ぐらいの先生方を一堂に介して。
そこでいろんな情報をもとに分析したところ、一番の課題はお母さんのお金の使い方。パッと使っちゃうんですよ。それでなかなか学校のお金に回せないとか、そういった課題があって非常に学校も困ってた。それでまず会計を別にしましょうと。必要なお金と家庭で使えるお金っていうのを分けて、お金の管理をしましょうということで。その管理をじゃあどうするかというと、生活福祉課・生活保護課の皆さんにやってもらう。それから児童家庭課の人たちがそのお金をちゃんと使っているかどうかを定期的に訪問しながら、お母さんのサポートをしてあげると。あとは児童相談所ではですね、もう娘さんが3年生だったので、高校入学後の学費がちゃんと払われてるかどうかの確認とか通学の支援とか。学校は学校で、そういった関係機関と進捗をお互いに連携し合うっていう形でやりました。あの家庭に関しては非常にうまく行きまして。


坂:この子たちが学校から離れても、外部の機関と繋がっていると、引き続き(支援を)継続できると。


上江洲:そういうことです。持続可能にするっていうのがやっぱりこのプラットフォームの最大のメリットだと思いますし。
あとはね、翌年私教育研究所というところにいまして。ある教員が研修生として入ってきたんですよ。その先生が実はその家庭の5年生の子の担任だったんです。
話を聞いたらその先生はずっと自腹で5万ぐらい、いろんな教材費給食費でしょ、親は全く払ってくれないので、払ってたらしいんです。それで奥様と喧嘩になったという。
それで、その話し合いを持ってくれて、それが返ってきたと。本人とっても嬉しそうに話してくれました。


坂:なるほどですね、プラットフォームの学校ということで、そうなるとそういった家庭支援とかにも手を伸ばせるという。
いろんなことが学校を中心として支援が広げられる、ていう部分で、やっぱり学校はそうあるべきだということなんですね。


上江洲:ただやっぱり課題になるのが。
例えば私はたまたま行政の経験もあって、いろんな形で中身も知っていたので、どう回せばね、行政が動くかというところ。ところが全くそういう経験のない方が管理職になった時には非常に難しい面があると思います。
最近は国から県からいろんな予算が来て、いろんな人たちが支援員としてきて入るんですけど、その時に一番私が困ったのが、やはりあの、責任がないんですよ、最後までこう。
我々はもうとにかく学校っていったら、いろんなことしたら必ず苦情に繋がるんですけど、でもそこで私たちが矢面に立つんですよね。で、お母さんを説得しながらもう、いろんな形で子どものために何ができるかっていう話し合いを最前線でやっているので。
ところがその方達はなかなかこう本部ではないもんですから、思い切った発言ができない場合も多いので。だからできるだけ私はもうそういう大きな会議の時には、係長とか課長さんを必ず入れてもらって、その方々からしっかり発言してもらうっていうことやっていました。




不登校を減らすために、まずは子どもと担任の関わりから

坂:社会資源をいっぱい活用しながらやっていくっていうことができるのも学校の強みではあるっていうことですよね。


上江洲:はい、生活保護をもらっている方に関しては、生活福祉課がしっかりと管理して、家庭内にも入っていけるんですよ。でも我々は、コンコンってしてドアが開かなければそれ以上なんにもできないので。そういう意味では生活保護課とか生活福祉課の皆さんは、非常に我々にとってはもう水戸黄門様みたいな。頼りになる。


坂:なるほど(笑)。
制度に繋がってない家庭もあるじゃないですか。生活保護とか就学援助とか。そこに繋がってない家庭に関しては、やっぱりちょっと厳しいんですか?


上江洲:厳しいので、そうですね。
不登校がですね、新しい学校に赴任した年に半分以下になったんですよ。
前回の話を聞いてみたら、家庭訪問をですね、ほとんどSSWとかそういう方達が訪問してたっていうことを聞いて、それはよくないと。なぜかっていうと、一番大事なのは担任と生徒とのラポールっていうんですかね。心のつながりをいかにするかっていうのがやはり教育の原点なので。まずは担任の先生がしっかり生徒と繋がって、その上で(SSWとかが)サポートするには十分いいですよっていうことで、システムを変えましてですね。担任をメインに全面に押し出していって。そしたら半減になりました。
担任との繋がりっていうのは本当に、人との繋がりの代わりですよね。関わる人で本当に安心できる人がいれば、子どもたちの気持ちは変わっていくっていうことがそれでわかりました。


坂:なるほどですね。でも担任って毎年変わっていくわけじゃないですか。その都度やっぱりしっかりとした研修をしている?


上江洲:そうですね、研修の中で家庭の状況とか含めて。今は教育相談の先生がいらっしゃるので、その先生がね、しっかりとツボを抑えておけば別に問題ありませんので。教育相談の先生が、それぞれSSWの皆さんをしっかりと配置したりとかもやって頂いて。これが機能し始めると、不登校は減っていくんですね。


坂:先ほども不登校が減ったというのを聞いたんですけど、どれくらい減ったんですか?
今沖縄県て割合にしたらずっとワーストじゃないですか。で、どんどん人数も・・・


上江洲:不登校の出現率はずっと良くないです。


坂:ですよね。そういった子たちの対応を今までやってらしたんですよね。


上江洲:そうですね。50何名だった前年度がですね、22、3名くらいに減りました。でも新たに入ってきた1年生が10名ぐらい不登校がいたので、小学校からのですね。




不登校の要因、原因となるもの

坂:これ不登校の要因、原因っていうのはどういったところにあるんですか?

上江洲:そうですね、発達障害も不登校の要因にはなってると思います。やはりあの学校に来ない子どもたちっていうのは、先生を敵だと思っている子もいるんですよ。なぜかというと注意するので。
注意すると、自分を注意する人は敵だと、二次的な反抗という形で、二次障害ですね。
以前学校が荒れている時期は、その対処の仕方がなかなか分からなくて、一方的に押さえつけようとしたら、逆に物凄い反発して返ってきたという。スクールウォーズの時代は、おそらくその発達障害の対処の仕方がわからなかったと私は思ってますけども。
ですからやっぱり、子ども目線でどれだけ普通に話ができるような状態で指導していくかっていうのが一番ポイントになるんですけど。
あとはもう家庭ですね。中にはこう、結構ネグレクトで、っていう家庭も多いので。例えば夜ですね、7時くらいにちょうど生徒が歩いている中見回るんですけど、そこで女の子が公園でポツンといたんですよ。「どうしたの?」って聞いたら、「今もう子どもたち出てとかなんとかで、自分はここにずっといる。」「何時までいる?」「8時までいる」とか。出てなさいとか言われて。
そういうやっぱり寂しい思いもしてる子もいますし。その子たちは機会があればいろんな色の誘惑に引っ張られていっちゃうんですね。だから家庭の居場所がないっていう子がやっぱりどうしても、不登校に。沖縄県はキャバクラの数も日本一多いですから、そういう受け皿に行っちゃうという部分も非常に多いので。
だから将来的にこの子たちが希望を持って生きれるようにするっていうのは本当に私もずっと、校長になった時から思ってて。いつも職員に言ってたのは、とにかく生徒全員が、しっかり自分の次のステップに進めるっていうことで。ちょうど1年目は、一人だけダメだったんですけど、2年目は本当に全員、例えば進学就職にしろ、全員進路決定をして。不登校の子どもたちも含めてですね。


坂:この子たちを不登校をさせなくするっていうかですね、登校させるというなんかそう言ったアプローチっていうのはあるんですか?なんか時計の話をずっと前に聞いた覚えがあって。


上江洲:ああなるほど。えっとですね、新しい学校に赴任した4月だったんですけど、教室に入れない女の子が3人いて。この子たちに未来の話をしたら、皆希望を持ってないような感じがしたので、まず現実を受け入れさせること、自分が今どういう状況にあるかっていうことを。
1時間だけ時間をもらって、まず時計を書きました。24時間、これが我々の人生だとしようと。人生は80年ということで、この12時でちょうど40歳、校長先生は大体この辺でしょうか、終わりに近いねえとか、あと何年生きれるんだろうとかそんな話をしながら。
でも君たちはまだ10、11、12。こんなに長い時間を君たちはこれから生きないといけない。このままでいいの?って聞いたんです。
そこからですね、変わり始めたの。


坂:やっぱりそういう風に可視化していくということが、わかりやすいということですね。


上江洲:だから要するに子どもたちはですね、頭の中では考えてはいるんですけど、なかなか自分の現実を、大人が言葉にしないとわからないですね。だから可視化するとか。
あと大事にしていたのは校長講話です。


坂:校長講話っていうのは誰向けにやるんですか?


上江洲:生徒向けです。生徒向けですけど、実は私教員向けにもやってて(笑)。なぜ日本がこんなにノーベル賞が多いのかとか、発達障害の子たちはどういう気持ちで授業を受けているのかとか、子どもたちの気持ちを代弁にしたようなですね。私教育センターにもいたので、その時に支援の先生方からいろんな情報を頂いて、非常に勉強させて頂きました。そういうデータなんかも使いながらですね、先生方に教えていたということもあります。




発達について:すべての子どもが人材である、ということ

坂:不登校以外にも発達の特性の子たちにも色々と手を差し伸べていると思うんですけど、その辺のお話ありますか?


上江洲:(校長となって)2校目の学校ではですね、さっき、要するに暴れる生徒たちっていうのはやっぱり二次的障害というのを言いましたけど、ADHDの子どもたちが意外と多くてですね。こちらが強く指導したら、怒る大人は敵、という目で見られちゃうんですよ。だからとにかく注意の仕方というのをとても気を使いました。
例えば靴を履き潰して2階に上がろうとしている男の子を見たら、靴が可哀想〜とか、君の靴にはなりたくない、これが本当の苦痛だ、とか言って(笑)。笑いでちょっと注意したりとかですね。


坂:そういうのも効果的なんですね?やっぱり僕二次障害はすごく大きいのかなあと思ってて。一次的な、まあ障害というのかどうか、特性ですよね。一次的な特性に対して、まあ空気を読めないとか、そういうのを馬鹿にされたりこう、怒られたりする中で、心が荒んできて、二次的な障害にいくっていうことですよね。


上江洲:だからよく、空気読めない人最高なんだよ、って言ってたんですよ。だって空気読まないっていうことは、人と違うことができるわけだから、ていうことで。世の中を変えてきた人たちはみんな空気読めない人だよってよく話をしてましたね。
空気を読むか読まないかはもう本人によって、いろんな人によって違うんですけど、やはり読めないということで、自分の思いをどんどん通していって、それがうまく成功とか、あるいは物事の発見に繋がっていくっていうことは、まあ人間社会では多々ありますから。だからこそ多様性ていうのが、これからダイバーシティテーマがとても大事になってくるということは先生方にも良く話していました。


坂:能力が高い子たちが結構多いですからね。


上江洲:あとはそうですね、まあ校長になるといろんな相談がやってきます。初めて赴任した学校では、お父さんとお母さんがもう怒ってですね、「なんでうちの娘はテスト100点だのに、2なんだ3なんだ」とかで成績のことでくるわけですよ。
事前に(担任などに)話を聞いていたら、そのお子さんはアスペルガー的な要素が見えて、自分も納得できるものは頑張るんだけど、そうでないものは全くもう頑張らない。宿題もだから完璧にこなさないと出さない。で、例えばグラウンドを3周、とか皆さん走ったでしょ?でも3周と言ったら私の人生と何の関係があるの?とか言って走らない。マット運動なんか絶対もう、自分やりたくないとか、そういう形でやっぱりあの、実技ができないんですよ。


坂:こだわり強いですもんね。


上江洲:はい、それでもうどうしても3とか。それぞれ先生もお呼びして、授業の状況も具体的に述べてもらって、そこで最後に私の方から、これはお子さんね、もしかしたら発達的な部分が関わってるかもしれませんので、一度是非病院へ行かれたらと、怒られるの覚悟で言ったんですよ。
そしたら後日またお母さんとやってきまして、先生ありがとうございましたって言って。どうしたんですか?って言ったら、あのあとすぐ病院に行ったら、やっぱりアスペルガーと診断されたと。
そして二人ですぐその足で本屋に行って、アスペルガーに関する本を見て、なるほどなるほどって。書いてあることをずーっと二人で頷き合ってて。それまでは毎日、物凄いバトルをやってたのに、その日を境にすごく仲良くなって。本当にありがとうございました、と感謝をされたのを覚えています。


坂:この発達の特性って、ちょっと前より今はもうだいぶ周知されてきて。やっぱり保護者たちも結構理解してきている状況ですか?


上江洲:いや、ただやっぱり、保護者に関してはメンツがありますからね。自分のお子さんがそういうのだと学校から言われると嫌がる方多いんですよ。受け入れることで、逆によくなってる方もいれば、全く受け入れないで、もう居場所がなくなるっていうパターンもあります。だから保護者の理解っていうのが、子どもの人生に影響を与えるっていうのはありますね。


坂:じゃあもうわかって入るけど、そう認めたくないという感じ?


上江洲:そうそう、例えば知的障害なんか特に多いんですよ。自分は特殊学級には絶対入れたくないとか。入れれば次のステップがあるんだけど、入れないともうどうしても、こう中学で終わるっていう場面が増えてきますので。




就学前からの切れ目ない支援で

坂:プラットフォームとしての学校というので、やっぱりそういった(発達に特性がある)子たちに対する支援だったりとかですね、そういったのがより可能になってくるっていうことですよね。


上江洲:はい、だからそういう子どもたちはもう実は幼稚園から目は出てるので。幼稚園の頃から支援を入れていく、プラットフォームとして。そういう形でやっていけば、幼稚園からずっとやっていけば、お母さんお父さんも納得なさるので。


坂:これとてもいいですね。やっぱりこう、就学前にしっかりとやるというのが僕すごくいいなあと思っているんですね。
それっていうのは何かっていうと、うちの子たちに関して、そういった困窮世帯の子に関して言えば、公文とかに行けないわけですよ。あとは読み聞かせとかもあまりされてないわけですよね。そうすると、もう小学校1年生からつまづくわけですよ、足し算とか読み書きくらいからもうつまずいて、それがずっと尾を引いて自己肯定感の低さにつながっていくなあっていうのがあってですね。
やっぱり就学前に何かしら勉強していくことだったりとか、あとは、例えば公文とか行くと先生とかが、褒めてくれるわけですよ、この子今日こういう風に頑張ってたよ、ああいう風に頑張ってたよ、ってお母さんたちに言うわけですよね。お母さんたちはそれを聞いて、この子こんないいところがあるんだっていう気づきがあって、褒めるようになっていくとか、というのがあると思うんで。そういう感じでこう小さい時から、第三者の機関だったりそういったところで、何か勉強できるだったり、こう理解していくっていうことはとても大切だなあって思っています。
それができていくと、子どもの貧困というのも今後減っていくんじゃないかなあって感じがしていますね。


上江洲:だから学習というのは一番この自己肯定感を高めるのに役立つと思いますね。
私は英語教員だったので、英語っていうとやっぱり2年生3年生ぐらいになると皆「うー、難しいー」とか言っていやだーとなるんですけど、それぞれ必ず到達できるような仕組みで授業やって。梯子を登るような形で、これできたできたできた、っていうことで、気がついたらいつの間にか英語が得意になっているような形の授業というのをよくやってたんですよ。
で、するとやっぱり子どもたちは、あれ?なんか英語嫌いだったけど、なんか今好きになってるなあとか笑。結構いろんな形で子どもたちをどんどん前に出して演技させたりとか、歌ったりとか、そういうことをやっていました。


次回は、対談の後編。「学校経営」にスポットを当て、ご紹介していきます。
この対談はエンカレッジYouTubeチャンネルでもご覧いただけます。




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