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獣医療でのPET検査について

今日は、以前お話した卒論のテーマであるPET検査について少し詳しく書いていこうと思います。


現在の獣医療に求められるもの

現在は昔に比べ、ペットたちは家族の一員であるという考えが強まり、さらに、犬・猫ともに予防獣医療の発展やペットフードの改善により平均寿命も伸びてきています。この、平均寿命が伸びていることで、ペットの老齢性疾患、特に犬では「がん」が増えてきています。
このように、ペットの家族化や高齢化に伴い、獣医療にも高度医療が求められる時代となっています。


人でのPET検査

人では、がん検診にPET検査が用いられることが多くなり、PET検査はがんの早期発見の手助けにもなっています。
FDG-PET検査とは、糖(グルコース)に類似した物質に放射性物質をつけた放射性医薬品(18F-FDG)を体内に投与し、全身を一度にみてFDG集積度合いを確認し、細胞の活動状態を見ることでがんが細胞があるかどうか、転移があるかどうかを確認する検査です。FDGは糖利用が活発な場所に蓄積します。なので、脳や心臓に関しては正常でもFDGが蓄積しやすい場所となります。(脳の腫瘍が疑われる場合は、メチオニンPET が用いられています。)

獣医療でのPET検査

獣医領域においては、まだまだPET検査が普及していません。ペットの高齢化に伴い「がん」が増えていますが、早期発見ができ、正しい治療を早急に行えているイヌやネコはごくわずかであると考えます。
獣医療でも、PET検査が一般的になれば、もっとペットと過ごせる時間を長くすることができるのではないかと考えています。

獣医療でのPETの課題
動物でのPET検査には、麻酔が必要でさらに放射性医薬品を投与してから24時間は病院の管理区域の外に出られない、また現在国内には動物がPET検査を受けられる施設が1箇所しかないなど、このように、PET検査が獣医療で普及しない理由がいくつかあります。これからさらにPET検査を一般化するためには、これらの問題を解決していかなければなりません。
さらに、人では全てではないですが、指定された病気の場合はPET検査が保険適用となります。しかし、獣医療ではまだ保険適用にはなっておらず、飼い主の皆さんの費用負担が大きいです。

私の考え
上記に挙げたように、まだまだ課題もたくさんあり、PET検査を受けたからといって「がん」がよくなる訳ではないですが、健康診断のなかでPET検査を含めば腫瘍の早期発見に繋がることはもちろん、がんと診断された場合に転移は他にあるのか、予後はどうなのか、今の治療は適切なのかなどを知ることができ、ペットの「がん」と向き合う飼い主さんの不安を少しでも減らす手段の一つになるのではないかと考えます。さらに、獣医師にとっても診断の手助けになることは間違いないです。


獣医療でのPET検査ががん検診のツールとして今後普及してくれたらいいなと思っています。
これを読んだ飼い主さんの中で少しでもPET検査に興味のある方がいたら、ぜひ検査を検討してみてください。


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