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【クラシック音楽入門】音楽経験0が伝えるはじめてのクラシック音楽・決定版2022

はじめに

私は学校の授業での演奏を除いて音楽演奏をしたことが無い。音楽理論もほとんど知らない。しかし、今までクラシック音楽の記事を書いていたことからも自明だが、私はクラシック音楽が好きである。この記事は、そんな音楽経験0の音楽素人が伝える、クラシック音楽に興味を持った方向けへの「最初に何を聴けばいいか?」についてまとめた記事である。

そもそもクラシック音楽とは?

そもそも100人いれば100人異なる創作活動について、厳密に定義すること自体おこがましいのだが、あえてざっくり言うと

17世紀~20世紀前半にヨーロッパを中心に作曲された西洋音楽

である。時代が長いため、多ジャンルに比べてカバーしている音楽が多く、時代ごとに音楽の傾向が大きく異なる。したがって時代区分が重要である。
古い時代から順に、以下のようになる。

  1. バロック音楽:17世紀~18世紀半ばのクラシック音楽。ピアノの代わりにチェンバロが用いられたりなど、楽器が現在と種類が異なるレベルで古く、独特の音色が持ち味。音楽を聴く対象が貴族や王族、宗教家であったため豪華絢爛あるいは荘厳な音楽、オペラなどの劇場音楽が多い。代表作曲家はモンテヴェルディ、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハなど。

  2. 古典派音楽:18世紀半ば~19世紀初頭のクラシック音楽。現在使用されている楽器に近い楽器が用いられ始める。ピアノが流通し始めたのもこのころ。このころ起きたフランス革命の影響で音楽を聴く対象が貴族から市民に移行し始める。軽快で軽妙な音楽が多い。代表作曲家はハイドン、モーツァルトなど。この時代を締めくくる大作曲家ベートーヴェンにより次のロマン派音楽が到来する。ベートーヴェンの音楽は大衆に訴えかけるような、重々しいが勇ましい音楽が多い。

  3. ロマン派音楽:19世紀初頭~20世紀初頭のクラシック音楽。このころに楽器が現在使用されているものになる。革命の影響で音楽を聴く対象が大衆に変わったため、大規模オーケストラによる交響曲やオペラ、演奏会用のピアノ作品など、外連味の効いた規模の大きい作品が増えてくる。一方でブルジョワジーも増えたため、サロン向けの小規模ピアノ作品やアンサンブルも多い。また国家間戦争や内乱による国民意識が各地で芽生えてきており、ヨーロッパ各地でクラシック音楽と現地の民俗音楽を混ぜ合わせたような音楽作品が出現する。そういった作品を作った作曲家の流派を「国民楽派」と呼ぶ。そんな影響からかロマン派音楽・国民楽派は総じて主観表現に重きを置いた音楽が多い。代表作曲家はシューベルト、ショパン、フランツ・リスト、メンデルスゾーン、ブラームス、ヴェルディ、ワーグナー、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ヨハン・シュトラウス2世、ラフマニノフなど。ポップスをはじめとした現在の多くの音楽ジャンルで用いられる和声理論など、現在の音楽理論の基礎はこの時代に成立した。

  4. 近代音楽:20世紀前半の音楽。ロマン派に反発するかのように小規模で印象などを優先した客観的な音楽が主流となる。和声やリズムの極限を突き詰め、規則破りの和声、全音音階や旋法など長調・短調から外れた独特の印象を持つ音階、複雑なリズムなど多様な音楽が増えてくる。代表作曲家はドビュッシー、ラヴェル、サティ、ストラヴィンスキーなど。この中でも印象を優先した音楽をよく書いたドビュッシー、ラヴェルらは印象主義と呼ばれる。

なぜクラシック音楽が「とっつきにくい」のか?

クラシック音楽をはじめ、この手のいわゆる「古典芸術」は、過去に行われた数多の創作の中でも、芸術性の高い作品、つまり美やメッセージ性が追究され、精神的・感覚的な変動が大きく行われる高尚な作品のみが現在に残っている。つまり理論に基づいた解析のもとでの考察・解釈のしがいがありすぎる。「奥が深すぎる」のだ(これは絵画、文学など、他分野の「古典作品」にも言える)。
しかし考えてもみてほしい。本来音楽(や絵画・文学・詩・舞台といった他の創作活動)は、そんな理屈を抜きにして、まずは受け手が聴いて(絵画や舞台作品なら見て、文学作品なら読んで)楽しむ、あるいは共感するものではないだろうか。本来そのような目的で行われてきた活動ではなかったか。
なので、まずクラシック音楽を聴くに当たっては、理屈や背景など抜きにして、「気軽にちょびっとだけ聞く」といった軽いノリで聞き流してみることをおススメする。聴いている途中でも飽きてきたらその場で聴くのをやめたらよい話である。
真面目に理論を学んだり、考察したり、作品の背景を学ぶのはクラシック音楽にハマってからすればよいのである。
(ただ、じゃあ理論に基づいた考察が不必要かというとそうでもないと思っており、むしろそう言うことができるように、理論について学習するのは、メディア・リテラシーの観点からどの人においても非常に重要であると思っている。ただそういうことより先に「どう感じてもいいからまず触れてみて知る」ことが重要なのである。このことは評論や小説の読解、絵画の理解にも言える。日本の教育現場はどうもこの視点を欠いているように思えて仕方がない。だから私のような国語苦手マンが発生して読解力が下がるのである。)

また、1曲1曲が他ジャンルに比べて非常に長く、タイトルも「交響曲第●番 第●楽章」、「ピアノソナタ」など数字が多くて印象に残りにくいうえに専門用語が多いのもよりとっつきにくくしている原因に思える。これについてもまずは無視してとりあえず聞き流すことが重要なのだが、一応重要なことなのでクラシック音楽における曲名の法則について軽く説明する。

クラシック音楽における曲名の法則

基本的にクラシック音楽における曲名は、以下の法則で付けられる(例外もある)。

法則1:器楽曲(楽器が主体の作品)で、作品名自体が固有名詞でない場合
[作曲家名]:[作品のジャンル] 第●番 [調性],  [作品番号 or 作品目録番号] (「[副題]」)(:第●楽章)
例1:ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調, 作品67 「運命」:第1楽章
例2:モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調, K. 331 「トルコ行進曲付き」:第3楽章

法則2:器楽曲(楽器が主体の作品)で、作品名自体が固有名詞の場合
[作曲家名]:[作品名] ,  [作品番号 or 作品目録番号]:第●番 [調性] (「[副題]」)
例1:ショパン:12の練習曲 作品10:第12番 ハ短調「革命のエチュード」
例2:リスト:パガニーニによる超絶技巧練習曲, S. 140:第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネラ」

法則3:声楽曲(オペラなど人間の歌声が主体の作品)の場合
[作曲家名]:『[作品名] 』,  [作品番号 or 作品目録番号]  - 第●幕(第●場)*1:*2[曲の種類](「[曲の歌い出し]」)
(*1:オラトリオなどの場合は「第●部」のようになる。*2:曲の番号が振られることもある。)
例1:モーツァルト:『魔笛』, K. 620 - 第2幕:アリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
例2:J.S.バッハ:『マタイ受難曲』 ,BWV244 - 第2部:39. アリア「憐れみたまえ、我が神よ」

それぞれの部分について詳しく説明すると、

  • [作曲家名]:いうまでもなくその作品を作った作曲家の名前。クラシック音楽は基本的に作曲家と演奏家が異なるため重要。

  • [作品のジャンル]:これについては数多くあるため主要なもののみを後述する。

  • [調性]:その作品が基本的にどの音階かを示すもの。基本的には長調と短調で表される。音階はその作品の性格を表すものである。

  • [作品番号]:作曲家が作品の楽譜を出版したときに着けられる番号。クラシック音楽は1作曲家当たりの作品が膨大なため、この作品番号が作品の特定に非常に重要になる。なお、作品番号が無い場合は、作曲家次第では「WoO●」(●は番号、"WoO"はドイツ語で「作品番号無し(Werke ohne Opuszahl)」の略)が作品番号代わりに付けられることがある。

  • [作品目録番号]:作曲家の作品が超膨大な場合に、作品を特定するために音楽学者が作品ごとに付けた番号のこと。作曲家ごとに異なるものが用いられ、モーツァルトの場合はケッヘル番号(K. )、バッハの場合はバッハ作品目録番号(BWV; Bach-Werke-Verzeichnisの頭文字)、フランツ・リストの場合はサール番号(S. )が使われる。

  • [副題]:その作品や曲に付けられた副題。作曲家自身が付けた場合と、作曲家以外の人が付けた場合の2通りある。副題がある場合は基本的にこれを曲名だと思えばよい。

  • 楽章:クラシック音楽作品は複数の曲が1つの作品になっていることが多く、1つの作品のうちの一つの曲をそれぞれ頭から第1楽章、第2楽章、第3楽章、第4楽章・・・と呼ぶ。大体3~4楽章で1作品を構成することが多い。

  • [作品名]:作品全体の名称。その作品全体のジャンルを指していることもあれば、オペラのように演目のタイトルを表していることもある。

  • 幕、場:「幕」は1度幕が開いてから幕が閉まるまでの、時間や空間の大きな変化ごとの区切りのこと。「場」は幕の中に含まれる、場所の転換ごとの小さな区切りのこと。

  • [曲の種類]:オペラなどの声楽曲では、基本的に各幕の冒頭に置かれるオーケストラのみの曲「序曲」、各幕の間に置かれるオーケストラのみの曲「間奏曲」、独唱曲の「アリア」、セリフのように語る曲である「レチタティーヴォ」、複数人で歌う「合唱」といった曲が奏でられる。

  • [曲の歌い出し]:オペラなどの声楽曲では曲名をその曲の歌い出しで示すことが多い。「夜の女王のアリア」など副題が付けられることもある。

となる。

クラシック音楽における楽曲のジャンル

次にクラシック音楽における楽曲のジャンルについて説明するが、非常に膨大なので、主要なジャンルのみをざっくりと挙げる。

  • 交響曲:オーケストラ(弦楽器、管楽器、打楽器の集まり)が演奏する多楽章形式の大規模な器楽曲。4楽章構成が多い。クラシック音楽の花形。

  • 協奏曲:単数楽器の独奏(あるいは複数の少数楽器のアンサンブル)にオーケストラの伴奏が付いた楽曲。3楽章構成が多い。

  • 交響詩:オーケストラに奏でられる楽曲で、詩や文学作品、絵画などを音楽で表現したもの。

  • 組曲:いくつかの楽曲を連続して演奏するよう組み合わせたもの。オーケストラで演奏する作品が多い。

  • バレエ音楽:バレエの伴奏を目的として作られた楽曲。オーケストラで演奏する作品が多い。

  • 室内楽:少人数が同時に独奏楽器で演奏を行うアンサンブルのための音楽。演奏する人数によって「●重奏」と呼ばれ、具体的にはピアノ三重奏曲(ピアノ・トリオ)、弦楽四重奏曲(ストリング・カルテット)などのジャンルがある。

  • ピアノ・ソナタ:「楽器の王様」であるピアノ独奏のための、複数楽章で構成される比較的大規模な楽曲。第1楽章はソナタ形式という形式で作られている。

  • 性格的小品:自由な発想で作られたピアノ独奏のための短い楽曲。発想や形式ごとに「ワルツ」「エチュード」「ポロネーズ」「マズルカ」「スケルツォ」「バラード」「プレリュード(前奏曲)」「ノクターン」「インテルメッツォ(間奏曲)」「カプリッチョ(奇想曲)」「ラプソディー(狂想曲)」「ファンタジア(幻想曲)」「アンプロンプチュ(即興曲)」「バガテル」「バルカロール(舟歌)」「無言歌」などの曲名が付けられる。

  • 歌曲:独唱用の小曲。リートともいう。大体はピアノ伴奏が付く。

  • 合唱曲:複数人が複数の声部に分かれて歌う合唱のための楽曲。クラシックにおいては声域が高い順にソプラノ、アルト、テノール、バスの4部に分かれて歌う混成四部合唱の曲が多い。

  • カンタータ:独唱、重唱、合唱などに器楽、オーケストラの伴奏が付いた大規模な声楽曲。

  • オラトリオ:ユダヤ教、キリスト教を題材にした独唱、合唱にオーケストラの伴奏が付いた大規模な声楽曲。聖譚曲ともいう。「演技の無いオペラ」と呼ばれるほど総じて非常に大規模で演奏時間も長め。

  • オペラ:舞台芸術の一種で、歌唱を中心として、主として音楽で進行される劇のこと。歌劇。劇なので非常に規模が大きい。クラシック音楽はもともとはオペラを中心に発達した。

まず最初に聴くべきクラシック音楽

ここまでクラシック音楽についての基本的な説明をしたところで、クラシック音楽を初めて本格的に聴くにあたりまず最初に聴くべきものを挙げる。
それは、

クラシック音楽の有名曲についてまとめたベストアルバムもしくはプレイリスト

である。
これがなぜおススメかというと、

  • とても有名で、テレビなどで必ず耳にしたことがある音楽がまとめられておりとっつきやすい

  • 各時代の重要な作曲家の代表曲がまんべんなく取り入れられているので好きな作曲家を探すことができる

  • オーソドックスな演奏で演奏家の癖が少ない

  • 基本的に廉価版なので安価でコスパが良い

からである。ただ、1曲1曲が長いクラシック音楽において、CD10枚組などになったりするので、一度に全部聴きとおそうとすると必ず挫折する。携帯音楽プレーヤーやスマホにダビングしたり、音楽配信サービスを使うなどして、少しずつ聴いたり、BGMとして聴いたりするのが良い
そしてもし気に入った曲があったら、その曲と作曲者はメモしておこう

特に下のCDは音質・演奏・コスパともに非常に良く、初めて聴くにあたって非常におススメである。

「100曲クラシック」はほとんどのTSUTAYAでレンタルが可能である。
なお、一番上の「100曲クラシック」、一番下の「ニュー・ベスト・クラシック100」は音楽配信サービス非対応である。音楽配信サービスで聴く場合は下のワーナー・ミュージックによる「Best Classics 100」がおススメである。

また、料金が気になるなら下の動画でもよい。

上の聴き方で聴きとおしができなかった場合はそこで一度切り上げてもよい。その場合は一度クラシック音楽から離れて、また聴きたくなった時に続きを聴くようにしよう。絶対に無理をしないこと。自分のペースで楽しむのが音楽である

次に聴くべきクラシック音楽

一度ベストアルバムを聴きとおしたら、「好きな曲」がある程度見つかるはずである。
次はその好きな曲を含む作品をフルで聴く(好きな曲が単品の短い曲の場合は、その曲が含まれる1枚組のCDアルバムを聴き通す)
のが一番良い。例えばバッハの「G線上のアリア」が気に入ったなら、バッハの『管弦楽組曲』をフルで聴く、ベートーヴェンの「月光」が気に入ったならベートーヴェンの『ピアノソナタ14番』をフルで聴く、ウェーバーの「狩人の合唱」が気に入ったならウェーバーの『魔弾の射手』をフルで聴くなどのようにすればよい。演奏家についてはまずは気にせず聴いてみよう。
ここでも無理をせず、一度で聴き切ろうとしないこと。ハマらなかった場合は、まずは演奏家の演奏の癖が凄すぎて気に入らなかった場合がある(特にバロック音楽)。そのため別の演奏家による演奏を聴いてみよう。それでもハマらなかった場合はすぐに諦めて別のお気に入りの曲のフルを聴こう
なお、クラシック音楽については古い演奏も多く、古いとその分音質も聞くに堪えないぐらい悪くなることがある。
目安としては1958年以降にステレオで録音した音源あたりからは圧倒的に聴きやすくなるので、聴く曲を選ぶうえで一つの目安にしよう。

声楽曲の対訳について

ここでポイントとなるのは、
声楽曲についてはできる限り対訳を用意すること
である。声楽曲については声がメインなので、声の内容がわからなければとっつきにくいようになっている。さらに声楽曲は総じて規模が大きい(オペラだと2時間以上あるのが普通)ので、内容がわからないと面白味が半減する。
ただ、対訳は国内版CDでない限りついていないのがほとんどで、別途対訳本を用意しなければならないことが多い。そんなときに役立つのが下の「オペラ対訳プロジェクト」である。ここでは有志により有名オペラ、オラトリオといった声楽曲の対訳が制作されており、いずれも無料で閲覧できる。

ちなみにオペラ対訳本は主に以下の3社から出ている。総じて高価なので中古で売られていたらそちらを購入するのが良い。

その後のクラシック音楽の聴き方について

お気に入りの曲が含まれた作品をフルで聴き通すようになれば、クラシック音楽の楽しみに気づくことができるはずである。お気に入りの演奏家が見つかるかもしれない。
ここからは
お気に入りの作曲家の他の作品や、お気に入りの演奏家の他の演奏を聴いていく
のが良い。
クラシック音楽を聴くにあたり、今の時代はやはり
音楽ストリーミングサービスにサブスクして聴く
のが一番のおススメである。非常に多くのクラシック音楽に触れあうことができる。
このことについては私の以前の記事↓に詳しく書いているので是非読んでくださるとありがたい。

まとめ

いかがだっただろうか。クラシック音楽にハマるための流れを再度まとめると、

  1. 有名なクラシック音楽が収録されたベストアルバム、プレイリストを聴く

  2. その中のお気に入りの曲が含まれる作品をフルで聴く

  3. お気に入りの作曲家の作品や、演奏家の演奏をどんどん聴いていく

となる。とにかく肩を張らずに気軽に聴くこと。音楽は楽しんだり、共感したりするもの。これが一番重要である。
もちろん人によって向き不向きはあるので、このやり方でクラシック音楽にハマらない人もいるかもしれない。しかしながらその場合でも古典の芸術作品とされるクラシック音楽に一瞬でも触れ合ったという体験は残り、その体験はあなたにとってかけがえのないものになるはずである。
最後に、総じて文章力の無い駄文であるが、この記事が読者のクラシック音楽入門に少しでも役立てば幸いである。
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