夏には夏のお菓子をお勧めいたします
先代のふるさと坂下町に流れる川上川の上流で、スタッフたちと川遊びをしていた時のことです。
澄んだ川の水が石の隙間を縫うように進み、向かう先、落差を勢いよく下ると真っ白な泡が立ちあがり、思わずその美しさに目を奪われてしまいました。
それを掌ですくい上げ「こんな生地できないかなぁ」と、私のわがままな意見(笑)をスタッフに伝え、それからスタッフと試行錯誤を繰り返し「恵那川上屋オリジナル泡沫生地(うたかたきじ)」を作り上げました。
暑い夏でもひんやり口どけよく食べることができる栗観世は、私の「わがままな一言」から誕生しました。
開発当初は外郎に観世の焼き印を入れ、蛍に見立てた小豆を乗せ、栗観世として販売していましたが、泡沫生地が開発されてからは変更しました。
蛍はそのまま受け継ぎ小豆で、水面に光る蛍を表現しています。
私は上の画僧のように冷凍したものを少し溶かし、解凍しかけで食べる栗観世が最も好きで、これは恵那川上屋内でも人気の食べ方です。
また、2020年から製造が始まりました、夏の新たな栗きんとんが【栗のしずく】です。
こちらは常温でも保存ができますので、夏の手土産にも最適です。
私は夏の手土産にはこの二つを組み合わせた詰め合わせ使います。
もう一つ、銘菓で【くり壱】があります。
これは先代が「栗の一番おいしいお菓子」を目指して開発し、朴葉の葉を一枚使って巻き上げ、蒸して香りをつけています。
葉の効能を活用して日持ちも少し長くなっています。
恵那地域ではその朴葉を使ってお寿司を作る習慣があり、家庭に沢山の朴葉寿司並びます。
最盛期には1週間毎日朴葉寿司という時があり、一時期、寿司が嫌いになったことを思い出します(笑)。
恵那には自然と農業。そしてそこで育った食文化があります。
夏には夏のお菓子をお勧めいたします。