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運命だとか未来とか

ベランダが好きだ。


ベランダが好き、というと、真っ青な夏空に白い入道雲が流れておひさまの下敷布団を干す、みたいな光景を思い浮かべるんじゃないか。

人によっては、プランター菜園だとか、水草の鉢だったりするかもしれない。



だけど私の好きなベランダは、冬の夕暮れだ。

真っ暗で、空気が冷たくて、物悲しい風の歌が吹き抜ける。そんな冬のベランダが、私は好きだ。



頼まれていた洗濯物を全部取り込んだあと、何もなくなったベランダにひとり残って、

RADWIMPSの『スパークル』を、聴く。



暖かい部屋で過ごしていたときのジャージのままで、上着もマフラーもなく、冷たい空気が肌を裂こうとするのも構わず、ベランダを行ったり来たりする。



たぶん、もうすぐクリスマスなのに、とか、感傷に浸る時間もたまには必要で、

雲の切れ間からくっきりした淵の月が見え隠れするのを眺めて、

白く息を吐く。




体が冷え切ってからようやく中に戻って、また口ずさみながら夕食の準備をする。

運命だとか未来とかっていう
言葉がどれだけ手を
伸ばそうと届かない
場所で僕ら恋をする


運命も未来もすぐそこにある場所で

私はひとり恋に恋している。

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